第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

管理運営

[PQ-4] ポスター:管理運営 4

2023年11月11日(土) 14:10 〜 15:10 ポスター会場 (展示棟)

[PQ-4-2] リハビリテーションスタッフのエンカレッジを目的としたクリニカルラダーの運用

松井 亜沙美1, 渡邉 誠2, 中井 琢哉1, 南里 佑太1, 神保 武則1 (1.北里大学病院リハビリテーション部, 2.北里大学医療衛生学部)

【背景】
近年作業療法士の有資格者数の増加に伴い,卒後教育の体制整備が求められている.当院リハビリテーション部は2018年に部内でクリニカルラダー作成ワーキンググループ(WG)を立ち上げ,卒後教育体制の再整備を開始した.当院のクリニカルラダーは,人事考課としては使用せず,スタッフの成長へ導くエンカレッジを目的とし,ジェネラリストとしての療法士を到達目標として作成を開始,2021年に完成に至った.作成したラダーは,5つの領域(臨床実践,倫理,教育,管理,研究研鑽)で構成され,領域ごとにレベル1から4の段階づけを行なった(第56回日本作業療法学会にて報告).2023年度からの本運用に向け,2022年度にクリニカルラダーの試験運用を行なったため,その経過を報告する.
【方法】
2022年度の試験運用に向け,2021年9月からWG内で議論を開始した.ラダーレベルの申請方法や判定方法,判定者,判定時期,面談時期を含めた年間のスケジュール,面談のマニュアル,面談者の選定方法など面談に関する内容,判定結果や個人情報の管理方法などWGで検討した.2022年3月に全体に向けて試験運用に関する説明会を実施し,2022年4月から試験運用を開始した.
【結果】
2022年5月よりラダーの年度初回判定を開始した.ラダーのレベルはスタッフ個人が選択し,レベルIが2名,レベルIIが29名,レベルⅢが18名,レベルⅣが1名の内訳となった.ラダーの多角的な判定のため,自己判定と同僚スタッフによる判定をもとに,面談者が面談を通じて最終判定を行なった.全スタッフが判定を開始してから面談が終了するまで3ヶ月の時間を要した.初回の面談が終了した時点で,スタッフに対して面談やクリニカルラダー運用に関する意見を聴取した.その結果,判定基準の明確化や面談方法の統一化に関する要望を複数認めた.それらの要望に対し,全スタッフへアンケート結果の共有,説明および意見交換をする場を設け,スタッフのラダーへの理解の向上を目指した.また面談者のスキルアップを目的に,面談者に対するコーチングや面談方法の勉強会やOSCEを開催し,同時に面談マニュアルの修正を行なった.2023年1月から年度最終判定を開始した.
【考察】
試験運用を通じて,運用方法の確立,全スタッフのクリニカルラダーへの認知,そして面談者のスキルアップが今後の課題として考えられた.まず運用方法に関して,判定用紙は現在紙媒体での運用のため,判定結果や申請レベルなどの個人情報やシステム管理の観点から,今後はデジタル化を進めるべく運用方法を再検討する.次に部内の全スタッフのクリニカルラダーへの認知に関して,「エンカレッジ」ではなく「評価」や「人事考課」のツールであると認識しているスタッフが多く,判定基準の統一化を求める意見が多く聞かれた.スタッフの意見の聴取や意見交換会などの対話を通し,スタッフ間のラダーに対する認識の相違に気がつくことができ,ラダーの目的や役割を繰り返し発信し,共有することが重要であると考える.面談者のスキルアップを望む意見も多く,面談者に対してコーチングを基盤とした面談方法の講義やOSCEを実施したが,今後も更なるスキルアップに向けて継続して実施していく必要があると考える.今回の試験運用を通し,スタッフ全員がクリニカルラダーに触れ,体験をすることで,運用に向けての疑問や考えを共有することができ,部門全体がクリニカルラダーを前向きに進め認識を深めることができた.今年度の試験運用を経て,本ラダーは2023年度から本運用を開始する予定である.