第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

教育

[PR-11] ポスター:教育 11

2023年11月11日(土) 15:10 〜 16:10 ポスター会場 (展示棟)

[PR-11-4] 放課後等デイサービスにおける卒後教育用のための試作版ルーブリックの開発

鈴木 哲理1,2 (1.放課後等デイサービスアトリエあいだっく川崎, 2.昭和大学大学院保健医療学研究科博士後期課程)

【背景】
 令和3年度の障害福祉サービスの報酬改定により,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士(セラピスト)が放課後等デイサービス(放デイ)の事業所に配置されている.新卒者の採用も積極的に行われており,各事業所でのセラピストの卒後教育が課題となっている.昨今のセラピストの卒前教育ではルーブリックが注目されており,医学,歯学,薬学,看護学領域の卒後教育においても活用事例が多く報告されている.しかしながら,放デイにおける卒後教育のルーブリックに関する報告例はない.
 そこで本報告の目的は,放デイにおけるセラピストの卒後教育用のルーブリックのためのコンピテンシーを検討することである.
【方法】
 コンピテンシーは優れた活躍をしている人の行動特性だとされている.本報告では,世界保健機関(2020)が開発したRehabilitation competency framework(RCF)と,中央大学が公表している「『知性×行動特性』学修プログラム」 (中央大コンピテンシー)の2つをベースに検討を行った.コンピテンシーの検討には筆頭演者を含む作業療法士2名,児童発達管理責任者4名,相談支援専門員1名,放デイの経営者1名の計8名が参加した.この8名で,1) RCFと中央大コンピテンシーの内容を概観,2) 放デイのセラピストに求められるキーコンピテンシーの検討とその定義づけ,3) 各キーコンピテンシーに該当するコンピテンシーの検討とその定義づけ,の3ステップでコンピテンシーの検討を行った.
 なお本報告に際して,参加者には検討内容を報告する旨を説明し同意を得ており,倫理的配慮事項はない.また本報告における開示すべき利益相反事項はない.
【結果】
 検討の結果,「コミュニケーション」(5項目),「福祉実践」(6項目),「組織的行動」(4項目),「知識・スキルの獲得と応用」(3項目),「自己調整と管理」(4項目)の計5領域22項目のキーコンピテンシーとコンピテンシーが抽出された.
 キーコンピテンシーは,「コミュニケーション」-「他人の意見あるいは記述された文章正しく理解した上で,それに対する自分の意見を明確に表現する.効果的な説明方法を用いて,関係者を納得させる.」,「福祉実践」-「児童やその家族を中心とした目標設定や効果的な支援の提供,およびそれらの文書化を行う.また,支援の際に適切な倫理的な配慮を実施する.」,「組織的行動」-「チームの目標達成のために何をすべきか,複数の視点から捉え,適切な判断をし,当事者意識をもって行動する.他者とお互いの考えを尊重し,信頼関係を築いてそれを維持し行動する.」,「知識・スキルの獲得と応用」-「継続的に深く広く情報収集に努め,取捨選択した上で,知識やスキルを習得し,関連付けて活用する.」,「自己調整と管理」-「自らを高めるため,常に新しい目標を求め,その実現のために道筋を考え,努力する.その際,自己管理と改善のための工夫を怠らない.」と定義された.
【考察】
 今回抽出されたキーコンピテンシーの5領域は,RCFで示されている5領域に,障害福祉の観点を加えた内容になっている.セラピストのコンピテンシーを定めるRCFと社会人のコンピテンシーを定める中央大コンピテンシーを組み合わせることで,質の高いコンピテンシーが抽出できたと考えられる.今後,本報告をもとに,ルーブリックの開発を進め,放デイの卒後教育における有効性を検証する必要がある.