[PR-5-1] 学生ケアラーに関する近年の研究動向
【序論】近年,「本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っているこども」(厚生労働省)であるヤングケアラーに対する社会的関心が高まっており,行政による調査が全国的に進められてきている.その定義から調査対象は小・中・高校生であることが多い.一方,養成校において学生指導をしていると,親やきょうだいが何かしらの障害を抱えていることで,そのケアにあたるための時間的拘束,自分自身の健康面への影響,学費の工面に苦慮することなどが学業に影響を与えている場合は少なくない.特に,学生ケアラーの場合には,家庭の経済的役割を担うこと,自分自身が就職を控えることなど,ヤングケアラーとは違った構造を有していることが考えられる.さらに,学生の中にはケアが必要な家族がいることが作業療法を志す理由となっていることがあり,学生ケアラーへの適切な支援方法を構築する意義は大きいと考えられる.しかしながら,2021年に大学生を対象とした全国調査が初めて行われたばかりであり,学生ケアラーを対象とした研究は少ないのが現状である.
【目的】学生ケアラーに関する国内外の研究について過去10年間の動向を調査することを目的とした.
【方法】2023年1月27日に,医中誌webおよびPubMed,Scopusを用いて文献検索を行なった.検索式は,医中誌webでは「(ケアラー or 家族介護者)and(学生 or 若者 or 青年) and PT=原著論文」,PubMedとScopusでは「(Young adult*[ti] or student*[ti])and(carer*[ti] or caregiver*[ti])and(famil*[tiab])」として使用言語をEnglishに設定した.また,2013年から2022年の10年間に出版された文献を対象とした.取り込み基準は,高等教育機関に在籍する学生でケアラーの役割を持つ者を研究対象としている文献とした.重複した文献を削除した後,2段階のスクリーニングを実施した.1次スクリーニングでは,タイトルおよび要旨から,2次スクリーニングでは,本文を精査することで取り込み基準を満たすか判断した.
【結果】2段階のスクリーニングの結果,日本語文献は2件,英語文献は8件が該当した.合計10件の全てが2017年以降に出版されていた.日本語文献では量的研究,質的研究が1件ずつであり,英語文献では3件が量的研究,4件が質的研究,1件が尺度開発であった.量的研究では,学生ケアラーは非学生ケアラーに比べて抑うつ,不安の傾向が有意に強く,ケア時間が長時間になるほど,これら精神症状や身体症状が強くなり生活の満足度が低下することを示していた.一方,コーピングスタイル(問題焦点型か情動焦点型)の調査では一致した見解は得られていなかった.質的研究では,量的研究と同様に精神的・身体的な負担や生活の質の低下について言及していた他,経済的な理由のために学業との両立が困難であることについても述べられていた.また,学業とケアを両立させていくプロセスを分析した報告も見られた.
【考察】学生ケアラーに関する研究は国際的にも未発達な分野であり,今後さらなる調査が望まれる.学生ケアラーは,精神的・身体的・社会的に困難を抱えていることから適切な支援が必要である.しかし,対応しているケアの状況(父親か母親かきょうだいか,疾患や障害の種類や程度,経済的側面など)によって必要な支援は大きく異なる.また,ケアラーであることを開示したくない場合もあるため,学生と丁寧な面接を行い状況を把握することが重要である.
【目的】学生ケアラーに関する国内外の研究について過去10年間の動向を調査することを目的とした.
【方法】2023年1月27日に,医中誌webおよびPubMed,Scopusを用いて文献検索を行なった.検索式は,医中誌webでは「(ケアラー or 家族介護者)and(学生 or 若者 or 青年) and PT=原著論文」,PubMedとScopusでは「(Young adult*[ti] or student*[ti])and(carer*[ti] or caregiver*[ti])and(famil*[tiab])」として使用言語をEnglishに設定した.また,2013年から2022年の10年間に出版された文献を対象とした.取り込み基準は,高等教育機関に在籍する学生でケアラーの役割を持つ者を研究対象としている文献とした.重複した文献を削除した後,2段階のスクリーニングを実施した.1次スクリーニングでは,タイトルおよび要旨から,2次スクリーニングでは,本文を精査することで取り込み基準を満たすか判断した.
【結果】2段階のスクリーニングの結果,日本語文献は2件,英語文献は8件が該当した.合計10件の全てが2017年以降に出版されていた.日本語文献では量的研究,質的研究が1件ずつであり,英語文献では3件が量的研究,4件が質的研究,1件が尺度開発であった.量的研究では,学生ケアラーは非学生ケアラーに比べて抑うつ,不安の傾向が有意に強く,ケア時間が長時間になるほど,これら精神症状や身体症状が強くなり生活の満足度が低下することを示していた.一方,コーピングスタイル(問題焦点型か情動焦点型)の調査では一致した見解は得られていなかった.質的研究では,量的研究と同様に精神的・身体的な負担や生活の質の低下について言及していた他,経済的な理由のために学業との両立が困難であることについても述べられていた.また,学業とケアを両立させていくプロセスを分析した報告も見られた.
【考察】学生ケアラーに関する研究は国際的にも未発達な分野であり,今後さらなる調査が望まれる.学生ケアラーは,精神的・身体的・社会的に困難を抱えていることから適切な支援が必要である.しかし,対応しているケアの状況(父親か母親かきょうだいか,疾患や障害の種類や程度,経済的側面など)によって必要な支援は大きく異なる.また,ケアラーであることを開示したくない場合もあるため,学生と丁寧な面接を行い状況を把握することが重要である.