[PR-5-2] 養成校入学時の学習能力テストの結果と学業成績,実習成績との関連
【はじめに】
当校では入学時に基礎的な学習能力を確認するテスト(以下,学習能力テスト)を行っている.この学習能力テストは滋慶教育科学研究所によって開発され,学業不振となり得る学生の早期発見と,強み・弱みに応じた個別対策を行うことを目的としている.本テストは文章読解,計算,資料読解の3項目から構成された筆記試験であり,どのように解いたかも含め評価されるものである.当校では2021年度入学生から実施している.三好(2016)は,介護福祉養成教育において,入学時テスト(国語,数学,英語)による基礎学力と学業成績,実習成績に相関があったことを報告している.当校の学習能力テストにおいても学業成績や実習成績に関連する可能性があり,課題のある学生の早期発見,個別対応による学習意欲や成績の維持・向上が期待できる.
本研究の目的は,入学時の学習能力テストの項目と1年生修了時の成績,2年生の実習成績との関連性を述べることである.なお,本研究は東京福祉専門学校倫理審査員会の承認を得ている.
【方法】
2021年度に当校作業療法士科昼間部・夜間部へ入学した学生67名を対象とした.
学習能力テストは1年次入学時点(4月)で実施した.文章読解,計算,資料読解の3項目と1年生修了時の成績,2年生の実習成績の関連を検証した.1年生修了時の成績は全科目の平均成績を使用し,2年生の実習成績は測定実習の成績を使用した.測定実習とは身体障害領域で扱う検査・測定を実践する実習であり,2年生の秋期に実施している.成績の判定は出席状況,提出物,指導者の評価など総合的に判定している.
それぞれの学習項目と各成績における基本統計量を算出し,成績の関連はspearmanの順位相関係数を用いて検証した.統計処理は,日本科学技術研修所製JUSE stat-Works v4.0を使用し,有意水準は5%とした.
【結果】
最終的に調査対象となった学生は欠損データを除く62名であった.学力能力テストの各項目の平均値は,文章読解82.2±9.8点,計算71.2±22.6,資料読解83.7±14.0であった.1年次学業成績の平均値は82.0±15.2点であった.2年次実習成績の平均値は84.1±10.8点であった.
1年生修了時の成績では,文章読解(rs=0.64),と計算(rs=0.55)にやや強い正の相関を認め,次いで資料読解(rs=0.48)でも相関を認めた.2年次実習成績は,文章読解(rs =0.41),計算(rs=0.44),資料読解(rs=0.44)のすべての項目で正の相関を認めた.
【考察】
1年次学業成績と学習能力はやや強い正の相関を認めた.特に学業成績は文章読解能力が関与することが示された.三好(2016)の報告でも現代文の読解力が成績に強く相関していたとあり,先行研究を支持する結果となった.1年次は基礎科目の座学が多く,教科書を読むことや筆記試験を受けることが増えるため,文章読解能力が影響しやすいと思われる.一方,2年次では実技も増えてくるため,今後は実技試験も含めて学業成績に学習能力がどう影響するのか検討する必要がある.2年次実習成績と学習能力は正の相関を認めた.項目によって大きく変わることがなかった.実習は座学よりもその状況に応じた判断などが求められるため,学習能力は全般的に必要になると考えられる.
今回はデータ数が少なく,一般化することはできない.今後,各学年のデータ,さらには3年次の国家試験合格率などのデータも集め,学習能力との関連性をみていき,学生への支援へ活かしたい.
当校では入学時に基礎的な学習能力を確認するテスト(以下,学習能力テスト)を行っている.この学習能力テストは滋慶教育科学研究所によって開発され,学業不振となり得る学生の早期発見と,強み・弱みに応じた個別対策を行うことを目的としている.本テストは文章読解,計算,資料読解の3項目から構成された筆記試験であり,どのように解いたかも含め評価されるものである.当校では2021年度入学生から実施している.三好(2016)は,介護福祉養成教育において,入学時テスト(国語,数学,英語)による基礎学力と学業成績,実習成績に相関があったことを報告している.当校の学習能力テストにおいても学業成績や実習成績に関連する可能性があり,課題のある学生の早期発見,個別対応による学習意欲や成績の維持・向上が期待できる.
本研究の目的は,入学時の学習能力テストの項目と1年生修了時の成績,2年生の実習成績との関連性を述べることである.なお,本研究は東京福祉専門学校倫理審査員会の承認を得ている.
【方法】
2021年度に当校作業療法士科昼間部・夜間部へ入学した学生67名を対象とした.
学習能力テストは1年次入学時点(4月)で実施した.文章読解,計算,資料読解の3項目と1年生修了時の成績,2年生の実習成績の関連を検証した.1年生修了時の成績は全科目の平均成績を使用し,2年生の実習成績は測定実習の成績を使用した.測定実習とは身体障害領域で扱う検査・測定を実践する実習であり,2年生の秋期に実施している.成績の判定は出席状況,提出物,指導者の評価など総合的に判定している.
それぞれの学習項目と各成績における基本統計量を算出し,成績の関連はspearmanの順位相関係数を用いて検証した.統計処理は,日本科学技術研修所製JUSE stat-Works v4.0を使用し,有意水準は5%とした.
【結果】
最終的に調査対象となった学生は欠損データを除く62名であった.学力能力テストの各項目の平均値は,文章読解82.2±9.8点,計算71.2±22.6,資料読解83.7±14.0であった.1年次学業成績の平均値は82.0±15.2点であった.2年次実習成績の平均値は84.1±10.8点であった.
1年生修了時の成績では,文章読解(rs=0.64),と計算(rs=0.55)にやや強い正の相関を認め,次いで資料読解(rs=0.48)でも相関を認めた.2年次実習成績は,文章読解(rs =0.41),計算(rs=0.44),資料読解(rs=0.44)のすべての項目で正の相関を認めた.
【考察】
1年次学業成績と学習能力はやや強い正の相関を認めた.特に学業成績は文章読解能力が関与することが示された.三好(2016)の報告でも現代文の読解力が成績に強く相関していたとあり,先行研究を支持する結果となった.1年次は基礎科目の座学が多く,教科書を読むことや筆記試験を受けることが増えるため,文章読解能力が影響しやすいと思われる.一方,2年次では実技も増えてくるため,今後は実技試験も含めて学業成績に学習能力がどう影響するのか検討する必要がある.2年次実習成績と学習能力は正の相関を認めた.項目によって大きく変わることがなかった.実習は座学よりもその状況に応じた判断などが求められるため,学習能力は全般的に必要になると考えられる.
今回はデータ数が少なく,一般化することはできない.今後,各学年のデータ,さらには3年次の国家試験合格率などのデータも集め,学習能力との関連性をみていき,学生への支援へ活かしたい.