第57回日本作業療法学会

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ポスター

教育

[PR-5] ポスター:教育 5

Fri. Nov 10, 2023 4:00 PM - 5:00 PM ポスター会場 (展示棟)

[PR-5-7] 見学実習における社会人基礎力の変化

古田 翔太, 山本 健, 山本 圭彦, 柿本 将平 (学校法人同志舎リハビリテーションカレッジ島根)

【序論】 経済産業省は人材育成に関わる「仕事の現場で求められている能力」について検討し,「職場や地域社会の中で多様な人々と共に仕事をしていくために必要な基礎的な力」として「社会人基礎力」の概念を発表した.教育において社会人基礎力を意識的に育成することやその評価としていくことが重要としている.先行研究において,学校生活全般を通した社会人基礎力の変化などは検証されているが見学実習における変化は検証されていない.
【目的】 本研究は,見学実習が学生の社会人基礎力の自己評価に与える影響を調査することを目的とした.
【方法】 対象は1週間の見学実習に参加した学生のうち,本研究に参加同意の得られた36名(男性20名,女性16名,平均年齢20.6±2.9歳)とした.見学実習は「倫理観や基本的態度を身につける」に重点を置き,さらに「医療および福祉に携わる一員としての心構えを学ぶ」,「役割や職業イメージを構築する」,「見学等を通じて対象者の気持ちを理解する」,「対象者および職員とのコミュニケーションの取り方を学ぶ」ことを目的としていた.学生にとっては,実際の医療現場を体感する初めての機会となる.社会人基礎力は前に踏み出す力(1:主体性,2:働きかけ力,3:実行力),考え抜く力(4:課題発見力,5:計画力,6:創造力),チームで働く力(7:発信力,8:傾聴力,9:柔軟性,10:状況把握力,11:規律性,12:ストレスコントロール力)の12の能力要素により構成される.調査方法は,見学実習前後に経済産業省が作成した社会人基礎力自己点検シートにて5件法(1:優れている,2:やや優れている,3:標準的,4:やや劣る,5:劣る)による自己記入式質問紙法とした.能力要素項目別に統計解析は,ウィルコクソンの符号順位検定を危険率5%で行った. 
【倫理的配慮,説明と同意】 本研究の内容を紙面および口頭にて研究の趣旨,データの取り扱いを説明し,同意を得た.
【結果】 見学実習後に5:計画力(中央値:実習前3.0,実習後2.5)と10:状況把握力(中央値:実習前3.0,実習後2.0)が向上した.それぞれの能力の具体例として5:計画力は課題解決に向けたプロセスを明らかにし準備する力,10:状況把握力は自分と周囲の人々や物事との関係性を理解する力とされている.
【考察】 実習期間が1週間と短い見学実習であっても,5:計画力と10:状況把握力は向上することが確認できた.5:計画力については,問題解決に向けて行動を起こすときに必要であり,経済産業省は役割を達成させ承認することにより能力が育つとしている.実習中の学生としての役割を全うし,フィードバックで自己承認の体験が行われたことにより高まったと考える.10:状況把握力については,人間関係を形成していくうえで重要な能力とされ,グループ活動場面を行うことにより能力が育つと考えられている.チーム医療の一員として実習に参加し,他者と一緒に課題に向けて解決策を模索する,または考えに触れたことで高まったと考える. 実習は知識・技術の習得に限らず,作業療法士として基本的な態度を養うことも目的としている.主体性を尊重し,学生の意思による学ぶ姿勢を動機づけ,支援することが理想であり,見学実習前後で社会人基礎力を活用することで,学生への課題や能力を顕在化し,指導をより効果的に実施できると考える.