[SS-3-1] 統合失調症患者の精神症状に対する作業療法の効果:メタアナリシス
【序論】統合失調症は,陽性症状や陰性症状などの精神症状を主徴とする疾患である.統合失調症の患者が社会生活を送るうえで,精神症状は生活障害の主要な要因の一つである.本邦では,統合失調症の患者に対して,症状の緩和,精神機能向上や生活技能獲得に向けて,作業療法がリハビリテーション介入としておこなわれている.しかし,統合失調症患者の精神症状に対する作業療法の効果は,先行研究によって結果が異なっており,明確ではない.
【目的】本研究は,メタアナリシスをもちいて作業療法が統合失調症患者の精神症状に及ぼす効果を評価することを目的とする.
【方法】PubMed,Medline,Embase,CENTRAL,AMED,PsycINFO,OTseekerおよび医中誌Webのデータベースから,2022年6月までに報告された研究を検索した.適格基準は,統合失調症患者に対して,作業療法(作業療法群)とその他治療法(対照群)の効果を比較したRandomized Controlled Trialとした.本研究では,作業療法の介入内容が臨床では多岐にわたることから,作業療法群を「作業療法士の介入もしくは作業療法の理論に基づいた介入をしている群」と定め,介入内容を統一しなかった.また,多職種による包括的介入など作業療法が主でない介入は,作業療法群から除外した.2名の査読者が関連する研究を独立して同定し,データ抽出をおこなった.その後,抽出したデータをReview Manager 5をもちいて,平均差(MD:Mean difference)または標準平均差(SMD:Standardised mean difference)の効果サイズで定量的に分析した.また,CochraneのRisk of Bias 2を使用して,含まれたRandomized Controlled Trialのバイアスを評価した.メタアナリシスはCochrane hand bookに準拠しておこなった.
【結果】総数4,554件の研究のうち,重複除去後の3,351件に対してスクリーニングをおこなった.適格基準に合致し,包括的精神症状評価法が使用されていたものは,作業療法群 356人と対照群 367人の対象者で構成されていた.解析の結果,作業療法群は対照群よりも統合失調症患者の全般的な精神症状を改善するという明確なエビデンスを認めなかった [SMD:0.14,95% 信頼区間:-0.33~0.62].スコアごとに実施したサブグループ解析においても同様の結果であった[PANSS MD:1.18,95% 信頼区間:-3.12~5.48].取り込まれた研究のバイアスは,「リスクの懸念」が多かった.
【考察】統合失調症患者の精神症状に対する作業療法の有効性は,現在のところ不明である.今回の研究の結果,作業療法は統合失調症の全般的な精神症状に対してほとんど臨床的な差をもたらさない可能性が明らかになった.一方で,全体としてエビデンスの質が低かった.統合失調症患者に対する作業療法の有効性を支持または否定するためにはより多くの研究が必要であり,今後おこなわれる臨床試験ではバイアスのリスクなどの問題に対処し,対照群の設定の方法,使用する指標や介入の質の統一といった方法論を改善する必要があると考える.
【目的】本研究は,メタアナリシスをもちいて作業療法が統合失調症患者の精神症状に及ぼす効果を評価することを目的とする.
【方法】PubMed,Medline,Embase,CENTRAL,AMED,PsycINFO,OTseekerおよび医中誌Webのデータベースから,2022年6月までに報告された研究を検索した.適格基準は,統合失調症患者に対して,作業療法(作業療法群)とその他治療法(対照群)の効果を比較したRandomized Controlled Trialとした.本研究では,作業療法の介入内容が臨床では多岐にわたることから,作業療法群を「作業療法士の介入もしくは作業療法の理論に基づいた介入をしている群」と定め,介入内容を統一しなかった.また,多職種による包括的介入など作業療法が主でない介入は,作業療法群から除外した.2名の査読者が関連する研究を独立して同定し,データ抽出をおこなった.その後,抽出したデータをReview Manager 5をもちいて,平均差(MD:Mean difference)または標準平均差(SMD:Standardised mean difference)の効果サイズで定量的に分析した.また,CochraneのRisk of Bias 2を使用して,含まれたRandomized Controlled Trialのバイアスを評価した.メタアナリシスはCochrane hand bookに準拠しておこなった.
【結果】総数4,554件の研究のうち,重複除去後の3,351件に対してスクリーニングをおこなった.適格基準に合致し,包括的精神症状評価法が使用されていたものは,作業療法群 356人と対照群 367人の対象者で構成されていた.解析の結果,作業療法群は対照群よりも統合失調症患者の全般的な精神症状を改善するという明確なエビデンスを認めなかった [SMD:0.14,95% 信頼区間:-0.33~0.62].スコアごとに実施したサブグループ解析においても同様の結果であった[PANSS MD:1.18,95% 信頼区間:-3.12~5.48].取り込まれた研究のバイアスは,「リスクの懸念」が多かった.
【考察】統合失調症患者の精神症状に対する作業療法の有効性は,現在のところ不明である.今回の研究の結果,作業療法は統合失調症の全般的な精神症状に対してほとんど臨床的な差をもたらさない可能性が明らかになった.一方で,全体としてエビデンスの質が低かった.統合失調症患者に対する作業療法の有効性を支持または否定するためにはより多くの研究が必要であり,今後おこなわれる臨床試験ではバイアスのリスクなどの問題に対処し,対照群の設定の方法,使用する指標や介入の質の統一といった方法論を改善する必要があると考える.