[OA-1-4] 回復期リハビリテーション病棟退院後の再就労達成脳卒中者における仕事内容についての実態調査
【背景】
本邦における就労年代脳卒中者は, 発症後1年6ヶ月までに51~55%が再就労し (Saeki S, et al. 2010; Tanaka H, et al. 2014), その促進要因の一つにホワイトカラー職種の存在 (Saeki S, et al. 1993; Saeki S and Hachisuka K. 2004; Tanaka H, et al. 2014) が報告されている. しかし, 発症前後の具体的な仕事内容については明らかになっておらず, 脳卒中者が実際に取り組んでいる仕事内容を調査することは, 就労支援実践の役割を担う作業療法士にとって役立つものとなり得る.
【目的】
当院退院後の脳卒中者を対象に, 発症前と再就労後に取り組んでいた主な仕事内容やその変化を明らかにすることである.
【方法】
2017年4月から2020年3月までに当院を退院した15−64歳のすべての脳卒中者296名を対象に, 2021年1月にアンケート調査を実施した. 質問項目は, 1) 退院後就労の有無, 2) 仕事内容 (選択肢回答) とした. 統計解析は, 発症前と再就労後との仕事内容数の変化を明らかにするために Mann-Whitney U test, 発症前の仕事内容に取り組んでいた者と取り組んでいなかった者の特性の違いを明らかにするために Mann-Whitney U test, または unpaired t-test を適用した. 統計解析ソフトは, IBM SPSS statistics 21を用いた. なお, 仕事内容の情報を収集するための質問項目は, 職業情報収集票 (労働者健康安全機構) を参考に作成した. 仕事内容は選択肢回答 (複数回答可) とし,「資格を必要とする業務」,「座位での作業」などを含む27項目とした. 同意取得は, 返信をもって同意とする旨を記載した説明文を同封した. 本研究は, 当院倫理審査会の承認後に実施された (承認番号260-2). また,「令和2年度 感染症予防事業費等国庫負担 (補助) 金」を活用して実施された.
【結果】
有効回答数は138名 (46.6%) で, 発症前就労者数は119名だった. そのうち, 再就労達成者は78名 (平均53.4歳) だった. 再就労達成者における主な仕事内容数は, 発症前が中央値6個, 再就労後は5個となり, その数は有意に減少していた (p < 0.001). また, 発症前の主な仕事内容としては,「パソコン (文字・文書)」が60.3% (47/78名),「座位での作業」が51.3%,「電話対応」が48.7% の順に百分率が高かった. 再就労後では,「パソコン (文字・文書)」が53.8% (42/78名),「座位での作業」が47.4%,「パソコン (数値入力)」が42.3% の順に高く, パソコン操作を含む座位作業が多かった. 一方, 取り組まれることが少なくなった仕事内容は,「他部署とのやり取り」が−16.7%,「人材育成・教育」が−10.3%,「接客」および「電話対応」がそれぞれ−8.97%であることが明らかとなった. 発症前には仕事内容として多く担われていた「電話対応」が, 再就労後にはその数を大きく減少させた. 再就労後,「電話対応」に取り組んでいなかった者は, 入院期間が有意に長かった (p = 0.039).
【考察】
発症前および再就労後ともに, 高い割合で取り組まれていた仕事内容として,「パソコン操作」などのデスクワークが挙げられた. この結果は, ホワイトカラーが再就労の促進要因となる (Saeki S, et al. 1993; Tanaka H, et al. 2014) という報告と類似する. 一方, 再就労後には, 高次なコミュニケーションスキルを要する仕事内容の減少が明らかになった. それらを示す者は, 脳卒中の重症度を反映する入院期間 (Kang JH, et al. 2016) が有意に長く, より繊細で応用的な認知機能の低下を示している可能性が考えられた.
本邦における就労年代脳卒中者は, 発症後1年6ヶ月までに51~55%が再就労し (Saeki S, et al. 2010; Tanaka H, et al. 2014), その促進要因の一つにホワイトカラー職種の存在 (Saeki S, et al. 1993; Saeki S and Hachisuka K. 2004; Tanaka H, et al. 2014) が報告されている. しかし, 発症前後の具体的な仕事内容については明らかになっておらず, 脳卒中者が実際に取り組んでいる仕事内容を調査することは, 就労支援実践の役割を担う作業療法士にとって役立つものとなり得る.
【目的】
当院退院後の脳卒中者を対象に, 発症前と再就労後に取り組んでいた主な仕事内容やその変化を明らかにすることである.
【方法】
2017年4月から2020年3月までに当院を退院した15−64歳のすべての脳卒中者296名を対象に, 2021年1月にアンケート調査を実施した. 質問項目は, 1) 退院後就労の有無, 2) 仕事内容 (選択肢回答) とした. 統計解析は, 発症前と再就労後との仕事内容数の変化を明らかにするために Mann-Whitney U test, 発症前の仕事内容に取り組んでいた者と取り組んでいなかった者の特性の違いを明らかにするために Mann-Whitney U test, または unpaired t-test を適用した. 統計解析ソフトは, IBM SPSS statistics 21を用いた. なお, 仕事内容の情報を収集するための質問項目は, 職業情報収集票 (労働者健康安全機構) を参考に作成した. 仕事内容は選択肢回答 (複数回答可) とし,「資格を必要とする業務」,「座位での作業」などを含む27項目とした. 同意取得は, 返信をもって同意とする旨を記載した説明文を同封した. 本研究は, 当院倫理審査会の承認後に実施された (承認番号260-2). また,「令和2年度 感染症予防事業費等国庫負担 (補助) 金」を活用して実施された.
【結果】
有効回答数は138名 (46.6%) で, 発症前就労者数は119名だった. そのうち, 再就労達成者は78名 (平均53.4歳) だった. 再就労達成者における主な仕事内容数は, 発症前が中央値6個, 再就労後は5個となり, その数は有意に減少していた (p < 0.001). また, 発症前の主な仕事内容としては,「パソコン (文字・文書)」が60.3% (47/78名),「座位での作業」が51.3%,「電話対応」が48.7% の順に百分率が高かった. 再就労後では,「パソコン (文字・文書)」が53.8% (42/78名),「座位での作業」が47.4%,「パソコン (数値入力)」が42.3% の順に高く, パソコン操作を含む座位作業が多かった. 一方, 取り組まれることが少なくなった仕事内容は,「他部署とのやり取り」が−16.7%,「人材育成・教育」が−10.3%,「接客」および「電話対応」がそれぞれ−8.97%であることが明らかとなった. 発症前には仕事内容として多く担われていた「電話対応」が, 再就労後にはその数を大きく減少させた. 再就労後,「電話対応」に取り組んでいなかった者は, 入院期間が有意に長かった (p = 0.039).
【考察】
発症前および再就労後ともに, 高い割合で取り組まれていた仕事内容として,「パソコン操作」などのデスクワークが挙げられた. この結果は, ホワイトカラーが再就労の促進要因となる (Saeki S, et al. 1993; Tanaka H, et al. 2014) という報告と類似する. 一方, 再就労後には, 高次なコミュニケーションスキルを要する仕事内容の減少が明らかになった. それらを示す者は, 脳卒中の重症度を反映する入院期間 (Kang JH, et al. 2016) が有意に長く, より繊細で応用的な認知機能の低下を示している可能性が考えられた.