第58回日本作業療法学会

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一般演題

脳血管疾患等

[OA-13] 一般演題:脳血管疾患等 13

Sun. Nov 10, 2024 10:50 AM - 11:50 AM B会場 (中ホール)

座長:原田 祐輔(杏林大学 )

[OA-13-2] タオルワイピング動作時における脊柱起立筋・腰部多裂筋の筋厚変化

水端 大貴, 斎藤 幸介, 中山 和彦, 臼井 志織, 桑山 登志光 (医療法人医仁会 さくら総合病院 リハビリテーションセンター)

<序論>
 タオルワイピング(以下,ワイピング)は脳卒中患者の上肢機能訓練や肩関節の可動域訓練として用いられることが多い.中でも可動域訓練として用いる場合には,その動作の特性上,肩関節だけでなく体幹の前後屈運動を伴うため体幹筋の活動も増加すると考えられる.先行研究では,ファンクショナルリーチ動作時において多裂筋の筋活動が有意に増加したとの報告があり,体幹前屈を伴う両手リーチ動作という点で共通するワイピングにおいても同様の傾向を認めると予想される.しかし,ワイピング動作時における体幹筋の活動を調査した報告は見当たらない.
そこで本研究ではワイピング動作時における脊柱起立筋(以下,ES),腰部多裂筋(以下,LM)の筋厚変化を明らかにすることを目的とする.
<方法>
 さくら総合病院リハビリテーションセンターのスタッフ12名(27.3±4.0歳,男性6名,女性6名)を対象とした.ワイピング動作は骨盤傾斜角度0度を開始肢位として骨盤前傾を伴いながらリーチを行う条件(以下,前傾条件)と,骨盤傾斜角度-10度を開始肢位として骨盤後傾位のままリーチを行う条件(以下,後傾条件)の2条件で実施した.ワイピング動作開始肢位,50%リーチ肢位,最大リーチ肢位におけるES,LMの筋厚を超音波診断装置(Aplio300 TUS-A300,TOSHIBA)にて測定した.また,各肢位における骨盤傾斜角度を水平器(BLUE LEVEL Jr.2 100mm,シンワ測定株式会社)を取り付けた東大式ゴニオメーターにて測定した.
 統計解析にはEZRを使用し,条件間および各肢位におけるES,LMの筋厚差を比較した.なお有意水準は5%とした.
 対象者には書面および口頭にて同意を得た.また,本研究は日本作業療法士協会の倫理手続きを順守している.
<結果>
 骨盤前傾条件のES,LMの筋厚は開始肢位で35.8±5.0mm,31.6±5.9mm,50%リーチ肢位で38.8±6.0mm,34.8±5.5mm,最大リーチ肢位で33.8±3.6mm,29.1±5.9mmであり,50%リーチ肢位は開始肢位および最大リーチ肢位と比較して有意に筋厚の増大を認めた.骨盤後傾条件のES,LMの筋厚は開始肢位で31.8±6.8mm,28.8±5.9mm,50%リーチ肢位で30.7±7.1mm,27.9±6.4mm,最大リーチ肢位で29.2±5.3mm,25.6±6.6mmであり,各肢位間での有意差を認めなかった.
 条件間の比較では,いずれの肢位においても前傾条件でES,LMの有意な筋厚増加を認めた.
<考察>
 ワイピングは骨盤を前傾しながら実施することでES,LMへのアプローチとして有用となる可能性がある.しかし,最大リーチ肢位にてES,LMの筋厚が減少していたことから,肩関節の可動域訓練として用いる場合と筋力訓練として用いる場合とでは訓練方法の区別が必要になると考えられる.最大リーチ肢位でのES,LMの筋厚減少は上肢支持が増長されたことが要因であると考えられるため,ES,LMへのアプローチとしてワイピングを用いる場合は上肢支持が強くならない範囲かつ骨盤を前傾しながら実施する必要があると考えられる.