[OA-13-5] 慢性期脳卒中患者の中等度上肢麻痺に対するAI統合・筋電応答型リハビリテーションロボットの使用例報告
【はじめに】近年,脳卒中リハビリテーションが変革し,麻痺側機能の向上のためにロボット療法の導入が増えてきている.脳卒中ガイドライン(2021)では,上肢機能障害に対しロボットを用いた上肢機能訓練を行うことは妥当であるとされ推奨度Bとされている.また,AI統合・筋電応答型上肢リハビリテーション支援ロボットとしてMELTz手指運動リハビリテーションシステム(MELTIN社製) (以下:MELTzⓇ)が開発され,上肢機能改善の一助になると報告されている(Murakami et al,2023).今回,慢性期脳卒中後の中等度上肢麻痺患者に対しMELTzⓇを使用し,上肢機能と生活内での使用が改善し箸操作の獲得に至った一例を経験したため,報告する.
【症例】60歳代後半の女性,右利き,本人の主訴は右手で箸を使えるようになりたいであった.現病歴はX-5年に発症し左被殻出血の診断を受け入院し,急性期から回復期まで訓練を行い自宅退院となった.その後,右上肢麻痺残存しており発症より5年経過した後に当院受診し外来リハビリテーション開始となった.外来リハビリテーション経過でX年Y月Z日より3週間,MELT®を使用した.初期評価(Z-21日)ではFugl-Meyer Assessment上肢項目(FMA):19点,Action Research Arm Test(ARAT):3点,日常生活における麻痺手の使用頻度(AOU)と動作の質(QOM)はMotor Activity Log-14(MAL)を実施した.AOU:0.28点,QOM:0.07点,Modified Ashworth Scale(MAS):手指屈筋群2.中等度上肢麻痺を呈し,生活内での使用はほとんど見られなかった.
【方法】Z-21日からZ-1日(A1期),Z+21日からZ+42日(A2期)は上肢機能練習や日常生活動作練習を中心とした通常の作業療法を実施した.Z日からZ+21日(B期)は通常の作業療法に加え,MELTzⓇを用いて上肢機能練習を実施した.各期の作業療法介入時間は週2回1日40分とし,各期3週間ずつ,合計9週間の介入を行った. B期には週2回20分MELTzⓇをした後に20分の作業療法で合計40分行なった.評価は開始時,各期終了時に行った.尚,本症例報告に際し,対象者に説明した上で書面にて同意を得た.
【結果】各評価結果を初期評価時,各期終了時の順に示す.FMA:19,28,43,48点.ARAT:3,7,24,30点.MAL AOU:0.28,0.71,1.78,2.71点.QOM:0.07,0.39,1.35,1.78点.MAS:2,2,1+,1+.上肢機能と生活内使用頻度・質共に改善を認め,B期前後で最も大きな変化を示した. 更に症例の主訴であった箸操作が自助箸を使用下で獲得に至った.
【考察】慢性期脳卒中中等度上肢麻痺に対するAI統合・筋電応答型手指リハビリテーションロボットを使用した作業療法の経験を得た.介入期間で上肢機能の改善を認め,特にB期前後での改善量が大きく(15点),慢性期の脳卒中片麻痺におけるMCIDを上回っていた.また,ARATとMALのAOU,QOM共にMCIDを上回る結果となった.この結果は,慢性期中等度上肢麻痺を呈した症例に対するロボットを用いた介入は,痙縮の軽減に加え上肢機能の回復と生活内での使用を改善させ,生活動作の獲得を促す効果的な手段である可能性を示唆された.
【症例】60歳代後半の女性,右利き,本人の主訴は右手で箸を使えるようになりたいであった.現病歴はX-5年に発症し左被殻出血の診断を受け入院し,急性期から回復期まで訓練を行い自宅退院となった.その後,右上肢麻痺残存しており発症より5年経過した後に当院受診し外来リハビリテーション開始となった.外来リハビリテーション経過でX年Y月Z日より3週間,MELT®を使用した.初期評価(Z-21日)ではFugl-Meyer Assessment上肢項目(FMA):19点,Action Research Arm Test(ARAT):3点,日常生活における麻痺手の使用頻度(AOU)と動作の質(QOM)はMotor Activity Log-14(MAL)を実施した.AOU:0.28点,QOM:0.07点,Modified Ashworth Scale(MAS):手指屈筋群2.中等度上肢麻痺を呈し,生活内での使用はほとんど見られなかった.
【方法】Z-21日からZ-1日(A1期),Z+21日からZ+42日(A2期)は上肢機能練習や日常生活動作練習を中心とした通常の作業療法を実施した.Z日からZ+21日(B期)は通常の作業療法に加え,MELTzⓇを用いて上肢機能練習を実施した.各期の作業療法介入時間は週2回1日40分とし,各期3週間ずつ,合計9週間の介入を行った. B期には週2回20分MELTzⓇをした後に20分の作業療法で合計40分行なった.評価は開始時,各期終了時に行った.尚,本症例報告に際し,対象者に説明した上で書面にて同意を得た.
【結果】各評価結果を初期評価時,各期終了時の順に示す.FMA:19,28,43,48点.ARAT:3,7,24,30点.MAL AOU:0.28,0.71,1.78,2.71点.QOM:0.07,0.39,1.35,1.78点.MAS:2,2,1+,1+.上肢機能と生活内使用頻度・質共に改善を認め,B期前後で最も大きな変化を示した. 更に症例の主訴であった箸操作が自助箸を使用下で獲得に至った.
【考察】慢性期脳卒中中等度上肢麻痺に対するAI統合・筋電応答型手指リハビリテーションロボットを使用した作業療法の経験を得た.介入期間で上肢機能の改善を認め,特にB期前後での改善量が大きく(15点),慢性期の脳卒中片麻痺におけるMCIDを上回っていた.また,ARATとMALのAOU,QOM共にMCIDを上回る結果となった.この結果は,慢性期中等度上肢麻痺を呈した症例に対するロボットを用いた介入は,痙縮の軽減に加え上肢機能の回復と生活内での使用を改善させ,生活動作の獲得を促す効果的な手段である可能性を示唆された.