第58回日本作業療法学会

Presentation information

一般演題

脳血管疾患等

[OA-2] 一般演題:脳血管疾患等 2

Sat. Nov 9, 2024 12:10 PM - 1:10 PM D会場 (小ホール)

座長:前田 正憲(鹿教湯三才山リハビリテーションセンター)

[OA-2-2] Constraint-induced movement therapyを受けた脳卒中片麻痺患者における麻痺側上肢活動量の変化の検討

大柿 凪央1, 橋本 幸久1, 梅地 篤史1, 内山 侑紀2, 道免 和久3 (1.兵庫医科大学病院 リハビリテーション技術部, 2.兵庫医科大学病院 リハビリテーション科, 3.兵庫医科大学 リハビリテーション医学講座)

【背景】日常生活動作の上肢活動量を加速度計で検討した報告では, 脳卒中患者の麻痺側上肢の活動率が非麻痺側に比べ低下する事が報告されている(Ryan R et al, 2016). Constraint-induced movement therapy(CIMT)では, 集中訓練による機能改善だけでなく,不使用に陥った上肢の使用を実生活へ汎化することが重要視されており, 竹林崇ら(2017)は, CIMT前後で加速度計を用いた麻痺側上肢活動量の評価を実施し, 訓練前後で麻痺側上肢の活動比率が向上したことに加え, 活動における麻痺側上肢の関わる比率や作業に従事している量などを客観的に評価できる可能性を報告している. そこで今回, 当院でCIMTを実施した複数例に対し, 加速度計を用いて日常生活における麻痺手使用の評価を実施した. その結果, 介入前後とその後の経過についてデータを得る事が出来たため, 考察を踏まえて報告する. 本研究は本学の倫理委員会の承認を得ている. (承認番号4615)
【目的】CIMTが直後および1カ月後の上肢使用頻度へ及ぼす影響について, 加速度計を用いた上肢活動量評価で検証する.
【方法】研究デザイン:後ろ向き観察研究. 期間:2020年2月22日~2023年12月31日.対象:当院にてCIMTを実施し加速度計による評価を行った症例. 使用機器:Acit Graph wGT3X-BT(アクチグラフ社)を使用. 評価方法:機器を左右の尺骨茎状突起近位部に装着し, 連続24時間を普段通りに過ごしてもらう. 評価時期:CIMT前(開始前から1週間以内)と, CIMT後(終了後から2週間以内)とCIMT終了1カ月後(1カ月後評価から2週間以内)までとした. 主要評価項目は, 両手動作時の左右の活動量比(Magnitude Ratio:MR), 全体における左右の活動時間比(Use Ratio:UR), 全体おける左右の活動量比(Laterality Index:LI)を算出した. 副次的評価はFugl-Meyer assessment(FMA), Action Research Arm Test(ARAT), Motor Active Log(MAL)とした. CIMTでは, 土日祝日を除いた平日に連続10日間(1日5時間)実施し, 課題指向型訓練とTransfer Packageを中心に訓練を実施した.
【結果】対象となった患者は11名で, 年齢は50~71歳まで, 性別は女性6名と男性5名, 利き手は全例右利, 麻痺側は右麻痺7名と左麻痺4名, 疾患は脳梗塞3名と脳出血8名であった. 上肢活動量評価の中央値と四分位範囲は(CIMT前→CIMT後→1カ月後), MR(0に近づくほど麻痺手使用量増加):-1.08(-1.30‐-0.93)→ -0.90(-1.17‐-0.78)→ -1.05(-1.38‐-0.96), UR(1に近づくほど麻痺手使用時間増加):0.75(0.67‐0.86)→ 0.83(0.71‐0.89)→ 0.76(0.62‐0.83), LI(0に近づくほど麻痺手使用量増加):-0.49(-0.55‐-0.40)→ -0.45(-0.48‐-0.30)→ -0.52(-0.58‐-0.38)であった. 副次的評価ではFMA:50(39‐53)→ 55(44‐61)→ 55(46‐59), ARAT:39(24‐47)→ 48(33‐53)→ 50(32‐53), MAL-AOU:1.75(1.11‐2.84)→ 2.60(1.83‐3.56)→ 3.40(1.96‐3.65), MAL-QOM:1.59(1.04‐2.36)→ 2.11(1.89‐3.15)→ 2.21(1.93‐3.40)であった. 上記結果からMRや, UR, LIはCIMT後で向上したが, 1カ月後の持続効果は認めなかった. また, ARATとMALではCIMT後と1カ月後でともに改善傾向にあった.
【まとめ】CIMT前後の各加速度計のパラメーターから, 麻痺手の活動量比や, 全体における麻痺手の使用時間比, 全体における麻痺手の活動量比が増加した. これは竹林崇ら(2017)のCIMT前後での加速度計の評価と同様の結果となった. しかし, 1カ月後評価では加速度計の値はCIMT前の数値に近づいており, 麻痺手の活動比率が減少している結果となった.