[OA-2-5] 回復期リハビリテーション病棟における上肢運動麻痺に対する集中訓練部門「手のまひ治療センター室」の取り組み
【はじめに】上肢運動麻痺のニューロリハビリテーションは近年発展しており,ロボット療法,電気刺激療法,constrained-induced movement therapy(CI療法)など様々な治療法が確立されているが,これらの効果を最大限とするためには,対象者に合わせた治療選定が必要である.さらに,回復期リハビリテーション病棟は在院期間や算定単位数といった制度上の制限が存在するため,限られた時間の中で効率的な訓練を行うことが求められる.そこで当院では,上肢運動麻痺に対して集中訓練を実施する部門「手のまひ治療センター室」を2019年より開設した.今回,その取り組みを紹介するとともに,治療効果を検証する.
【方法】手のまひ治療センター室では,リハビリテーション専門医と担当の作業療法士が連携して,プロトコルに沿いながら患者の取り込み,治療法の選択,治療・自主訓練の提供を行っている.患者の取り込みでは,患者の担当チームが運動麻痺の程度や上肢以外の心身機能状況,入院期間,介入方針などをみて集中訓練の必要性を検討し,必要性がある場合には手のまひ治療センター室担当医師と作業療法士が実施の可否や訓練内容を検討するという二重体制としている.これは,回復期リハビリテーション病棟は退院後の生活を想定した包括的な支援が重要であるため,チーム・チーム外で客観的に必要性を評価し,治療計画を立てることを目的としている.訓練は専用の訓練室を定め,訓練だけでなく自主訓練も患者自身で訓練室に移動し実施している(新型コロナウィルス感染予防期間中は各病棟と1F訓練室で実施).自主訓練を行う時間帯には訓練室に常駐の作業療法士を配置し,自主訓練の監視・管理や物品準備の補助などを行っている.現在提供している治療法は,ロボット療法,電気刺激療法,修正CI療法であり,それぞれ3週間で提供している.治療内容については,ロボット療法は通常訓練に加えてロボットを用いた自主訓練を1時間提供している.電気刺激療法は,随意運動介助型電気刺激装置(IVES)を日中8時間装着し,通常訓練に加えて1時間の自主訓練を提供している.修正CI療法は, 3時間(2時間個別訓練と1時間自主訓練)の課題指向型訓練とtransfer packageの併用を提供している.評価項目は,Fugl-Meyer Assessment-Upper Extremity (FMA-UE),modified Ashworth Scale (MAS),Action Research Assessment Test (ARAT),Box and Block test (BBT),Motor Activity Log (MAL)を介入前後で評価している.効果検証は,2019年8月1日から2023年3月31日までの期間で当院に入院し,手のまひ治療センター室を利用した39名のデータを後方視的に調査した.解析は,介入前後の各上肢機能評価結果において対応のあるt検定もしくはWilcoxonの符号付順位検定を用いた.なお,本研究は当院の倫理審査委員会の承認を得て行った.
【結果】対象者はロボット療法群が13名(54.0±13.9歳,発症期間65.2±24.3日,介入前FMA-UE 25.4±11.3点),電気刺激療法群が8名(57.2±13.9歳,発症期間79.3±37.4日,介入前FMA-UE 41.0±12.3点),修正CI療法群が18名(56.2±12.1歳,発症期間82.9±40.0日,介入前FMA-UE 52.4±5.6点)であった.FMA-UE,ARAT ,BBTは全群において有意な変化を認め,MALについてはロボット療法群と修正CI療法群において有意な変化を認めた.
【考察】回復期リハビリテーション病棟において,対象者に応じた上肢集中訓練の提供は有効な取り組みであることが示唆された.今後は更なる機能改善や重度上肢麻痺患者の取り込みを行うために,治療法の拡充や手のまひ治療センター室の療法士教育法を定めていく必要性がある.
【方法】手のまひ治療センター室では,リハビリテーション専門医と担当の作業療法士が連携して,プロトコルに沿いながら患者の取り込み,治療法の選択,治療・自主訓練の提供を行っている.患者の取り込みでは,患者の担当チームが運動麻痺の程度や上肢以外の心身機能状況,入院期間,介入方針などをみて集中訓練の必要性を検討し,必要性がある場合には手のまひ治療センター室担当医師と作業療法士が実施の可否や訓練内容を検討するという二重体制としている.これは,回復期リハビリテーション病棟は退院後の生活を想定した包括的な支援が重要であるため,チーム・チーム外で客観的に必要性を評価し,治療計画を立てることを目的としている.訓練は専用の訓練室を定め,訓練だけでなく自主訓練も患者自身で訓練室に移動し実施している(新型コロナウィルス感染予防期間中は各病棟と1F訓練室で実施).自主訓練を行う時間帯には訓練室に常駐の作業療法士を配置し,自主訓練の監視・管理や物品準備の補助などを行っている.現在提供している治療法は,ロボット療法,電気刺激療法,修正CI療法であり,それぞれ3週間で提供している.治療内容については,ロボット療法は通常訓練に加えてロボットを用いた自主訓練を1時間提供している.電気刺激療法は,随意運動介助型電気刺激装置(IVES)を日中8時間装着し,通常訓練に加えて1時間の自主訓練を提供している.修正CI療法は, 3時間(2時間個別訓練と1時間自主訓練)の課題指向型訓練とtransfer packageの併用を提供している.評価項目は,Fugl-Meyer Assessment-Upper Extremity (FMA-UE),modified Ashworth Scale (MAS),Action Research Assessment Test (ARAT),Box and Block test (BBT),Motor Activity Log (MAL)を介入前後で評価している.効果検証は,2019年8月1日から2023年3月31日までの期間で当院に入院し,手のまひ治療センター室を利用した39名のデータを後方視的に調査した.解析は,介入前後の各上肢機能評価結果において対応のあるt検定もしくはWilcoxonの符号付順位検定を用いた.なお,本研究は当院の倫理審査委員会の承認を得て行った.
【結果】対象者はロボット療法群が13名(54.0±13.9歳,発症期間65.2±24.3日,介入前FMA-UE 25.4±11.3点),電気刺激療法群が8名(57.2±13.9歳,発症期間79.3±37.4日,介入前FMA-UE 41.0±12.3点),修正CI療法群が18名(56.2±12.1歳,発症期間82.9±40.0日,介入前FMA-UE 52.4±5.6点)であった.FMA-UE,ARAT ,BBTは全群において有意な変化を認め,MALについてはロボット療法群と修正CI療法群において有意な変化を認めた.
【考察】回復期リハビリテーション病棟において,対象者に応じた上肢集中訓練の提供は有効な取り組みであることが示唆された.今後は更なる機能改善や重度上肢麻痺患者の取り込みを行うために,治療法の拡充や手のまひ治療センター室の療法士教育法を定めていく必要性がある.