第58回日本作業療法学会

講演情報

一般演題

運動器疾患

[OD-2] 一般演題:運動器疾患 2

2024年11月9日(土) 15:40 〜 16:40 F会場 (201・202)

座長:半谷 智辰(福島県立医科大学会津医療センター 整形外科・脊椎外科学講座)

[OD-2-1] 中部労災病院における能動義手使用例の治療成績

桂 理1, 中村 恵一1, 三重野 高広1, 田中 宏太佳2, 林 満3 (1.中部労災病院 中央リハビリテーション部, 2.中部労災病院 リハビリテーション科, 3.株式会社松本義肢製作所)

"【緒言】切断に至る主な要因は外傷・疾病による血行障害などが挙げられるが,近年では切断後のマイクロサージャリーの確立とともに切断肢に対する生着率は向上し,切断術は少なくなってきている.しかし依然としてなくなることのない疾患であり,義手における支給制度の改善や義手を作製する必要性の認知が広まってきたことから,義手の支給に至る事例の割合は増加している.筋電電動義手(以下:筋電義手)においては開発に伴い,研究報告も散見されているが,能動義手は戦後にコントロールケーブルシステムが開発されて以来,現在まで長くに亘り使用され続けているにも関わらず,研究報告は少なく,特に機能評価においては不十分であり,能動義手に関するエビデンスを向上させるためにも量的研究が期待されている.そこで今回,当院の能動義手使用例における治療成績を調査したので報告する.なお,本研究は対象者から同意を得て実施した.また,本研究に関連し開示すべきCOI関係にある企業等はない.
【対象と方法】2018年4月からの5年間に,当院で能動義手を作製し,リハビリテーションを実施した23例25肢を対象とした.内訳は男性20例,女性3例,平均年齢44.8(±13.6)歳,損傷肢は,右側17例,左側5例,両側3例であり,切断部位は前腕切断18肢,上腕切断5肢,肩関節離断2肢であった.調査項目は能動義手訓練期間,作製した義手情報,義手の機能評価として最終時にThe Southampton Hand Assessment Procedure(以下:SHAP)と簡易上肢機能検査(以下:STEF)を実施した.また,日常生活動作の評価としてDISABILITIES OF THE ARM,SHOULDER AND HAND The JSSH Version(以下:DASH-JSSH)を実施し,機能障害/症状スコアを算出した.
【結果】能動義手訓練期間は平均258.5日であった.能動義手は全例随意開き式構造を処方し,ハーネスは19肢で8字ハーネス,4肢で9字ハーネスを選択した.能動義手の機能評価結果においては,SHAPは平均56.3点,STEFは44.5点,DASH-JSSHは28.2点であった.また,損傷部位別における調査項目の結果では,前腕切断で能動義手訓練期間は平均293.7日,SHAPは平均60.8点,STEFは49.0点,DASH-JSSHは30.2点であった.上腕切断では,能動義手訓練期間は平均147.0日,SHAPは平均44.3点,STEFは29.3点,DASH-JSSHは20.5点であった.肩関節離断では能動義手訓練期間は平均123.5日,SHAPは平均25.0点,STEFは18.0点であった.
【考察】能動義手はコントロールケーブルの操作性や,義手の構造などの課題を残していること,能動義手の機能評価に対する報告が少ないことで,本来の十分な機能を獲得する前に筋電義手に移行する症例も少なくない.それでも能動義手は現在に至るまで無くなることなく,義手適正の評価や対象のneedを考慮する上でも,まず能動義手を提供すべきだと報告されている.本結果から能動義手の機能面としては十分な訓練期間があれば,健側上肢の50%程度の機能獲得が可能であった.能動義手の使用が中止される要因の一つにリハビリテーション不足も報告されており,機能獲得面においてのゴールレベルを設定し,操作性の向上を明確にすることが能動義手の継続的な使用に繋がる要因の1つにもなり得ると考えられた.また,義手支給例は外傷例で,重労働に従事した若い男性が多いと報告されており,本研究の症例も同様の傾向であった.訓練目標の1つとして雇用を維持し,仕事復帰することが重要で,義手を用いた社会参加の達成はQuality of lifeの向上においても意義があると報告されており,能動義手の治療成績の報告はリハビリテーションを実施していく上で重要な情報であると考えられた.
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