[OD-4-2] 早期関節リウマチ患者に対する作業療法の長期効果について
~システマティックレビューとメタアナリシス~
【はじめに】関節リウマチ(Rheumatoid Arthritis,以下:RA)に対する作業療法のシステマティックレビュー(ESTHERら,2004)では,作業療法(以下:OT)がRA患者の機能的能力に正の効果をもたらすと述べられている.また,関節リウマチガイドライン2020で,作業療法は推奨するが,具体的な時期と介入内容のエビデンスの構築が必要であると述べられている.RAは,発症早期から関節破壊が生じ,特に手指などの小関節から進行していくため,手や日常生活活動(Activity of Daily Living,以下:ADL)に関するOTは,長期の機能的予後に効果的であると考える.今回,早期RA患者を対象とし,作業療法士が実施可能な内容で介入後1~2年でアウトカムを評価しているランダム化比較試験のシステマティックレビューとメタアナリシスを行った.本報告は,早期RA患者に対するOTの長期効果を明らかにすることを目的とした.
【方法】PRISMA声明に従い,医中誌,PubMed,MEDLINE,CINAHL,Cochrane Libraryの検索サイトを用いて,検索式は,Patient:早期関節リウマチ(early rheumatoid arthritis),Intervention:作業療法(Occupational Therapy)で検索し(検索件数少ないことが予想されたためControlとOutcomeは設定せず),論文のスクリーニングを行った(最終検索日2024年1月31日).スクリーニングは,認定作業療法士及びリウマチ登録療法士1名,リウマチ専門医1名の2名で実施した.主要アウトカムは,Health Assessment Questionnaire(以下:HAQ)とし,副次的アウトカムは,握力とVisual Analog Scale (以下:VAS)とした.研究の質は,The Physiotherapy Evidence Database(以下:PEDro)スケールで点数を出した.統計的解析は,Review Manager 5.4を用いて,それぞれのアウトカムの変量効果モデルにおける標準化平均差の推定値(95%信頼区間),効果量のP値を算出した(有意水準は5%未満).また,それぞれのアウトカムの統計的異質性を評価した.
【結果】スクリーニングの結果6論文が選定された.PEDroスケールは,5~6点であった.内容は,運動療法3/6件・関節保護の指導3/6件・装具療法1/6件であった(重複含む).HAQは,介入群437名・Control群479名,推定値=0.03(95%信頼区間-0.96,1.03),P値=0.95であった.VASは,介入群352名・Control群391名,推定値=-0.77(95%信頼区間-1.7,0.16),P値=0.1であった.握力は,介入群377名・Control群420名,推定値=0.41(95%信頼区間0.07,0.74),P値=0.02であった.すべてのアウトカムで統計的異質性は強かった.
【考察】早期RA患者へのOTの長期効果に関して, HAQとVASに対して有意差は出なかったが,握力で有意な改善が認められた.今回,広義での作業療法として,それぞれの研究で介入内容は異なるが,早期RA患者に対して運動療法や関節保護プログラムの指導・装具療法等のOTを継続して行うことで,長期的な握力改善に有用であることが示唆された.発症早期のRA患者は,抑うつ状態であることが多い(Sharpe Lら,2001).また,早期RA患者に対する認知行動療法を行うことで身体機能の改善を認めたと報告がある(Sharpe Lら,2001).そのため,早期RA患者に対して,運動療法・装具療法・関節保護の指導に加えて,精神機能面へのアプローチを行うことも必要であると考える.また,患者個々の重要としている作業活動に関しての個別介入を行うことで,ADLの改善につながると考える.今回,対象となった論文が少なく,PEDroスケールの得点が中等度の論文が多かったため,今後は早期RA患者に対するOTの具体的治療内容を明確にした質の高い研究の集積が必要とされる.
【方法】PRISMA声明に従い,医中誌,PubMed,MEDLINE,CINAHL,Cochrane Libraryの検索サイトを用いて,検索式は,Patient:早期関節リウマチ(early rheumatoid arthritis),Intervention:作業療法(Occupational Therapy)で検索し(検索件数少ないことが予想されたためControlとOutcomeは設定せず),論文のスクリーニングを行った(最終検索日2024年1月31日).スクリーニングは,認定作業療法士及びリウマチ登録療法士1名,リウマチ専門医1名の2名で実施した.主要アウトカムは,Health Assessment Questionnaire(以下:HAQ)とし,副次的アウトカムは,握力とVisual Analog Scale (以下:VAS)とした.研究の質は,The Physiotherapy Evidence Database(以下:PEDro)スケールで点数を出した.統計的解析は,Review Manager 5.4を用いて,それぞれのアウトカムの変量効果モデルにおける標準化平均差の推定値(95%信頼区間),効果量のP値を算出した(有意水準は5%未満).また,それぞれのアウトカムの統計的異質性を評価した.
【結果】スクリーニングの結果6論文が選定された.PEDroスケールは,5~6点であった.内容は,運動療法3/6件・関節保護の指導3/6件・装具療法1/6件であった(重複含む).HAQは,介入群437名・Control群479名,推定値=0.03(95%信頼区間-0.96,1.03),P値=0.95であった.VASは,介入群352名・Control群391名,推定値=-0.77(95%信頼区間-1.7,0.16),P値=0.1であった.握力は,介入群377名・Control群420名,推定値=0.41(95%信頼区間0.07,0.74),P値=0.02であった.すべてのアウトカムで統計的異質性は強かった.
【考察】早期RA患者へのOTの長期効果に関して, HAQとVASに対して有意差は出なかったが,握力で有意な改善が認められた.今回,広義での作業療法として,それぞれの研究で介入内容は異なるが,早期RA患者に対して運動療法や関節保護プログラムの指導・装具療法等のOTを継続して行うことで,長期的な握力改善に有用であることが示唆された.発症早期のRA患者は,抑うつ状態であることが多い(Sharpe Lら,2001).また,早期RA患者に対する認知行動療法を行うことで身体機能の改善を認めたと報告がある(Sharpe Lら,2001).そのため,早期RA患者に対して,運動療法・装具療法・関節保護の指導に加えて,精神機能面へのアプローチを行うことも必要であると考える.また,患者個々の重要としている作業活動に関しての個別介入を行うことで,ADLの改善につながると考える.今回,対象となった論文が少なく,PEDroスケールの得点が中等度の論文が多かったため,今後は早期RA患者に対するOTの具体的治療内容を明確にした質の高い研究の集積が必要とされる.