[OD-4-5] 装具療法により巧緻性が改善し, 上衣動作の再獲得に至った頚椎症性脊髄症の一症例
【はじめに】今回, 左側手指の巧緻性が低下した頚椎症性脊髄症の症例に対して, 指尖つまみの改善を目的に作業療法を行った. 自主練習が定着しなかった症例に装具療法を行い, 巧緻性が向上し, 上衣動作を再獲得することができたため報告する. 本報告は, 症例に対して倫理的配慮に関する説明を行い, 書面にて同意を得た.
【症例】症例は60歳代男性で, グループホームで暮らしていた. 既往に統合失調症があり, 定期的に通院し内服を継続していた. Y-3月頃より, 手指の痺れと巧緻動作障害が生じ, その後, 近医に受診し頚椎症性脊髄症と診断された. X年Y月Z日にC4からC6の椎弓形成術とC3, C7の部分椎弓切除術が施行された. 作業療法はZ+3日より, 日常生活動作(ADL)の改善を目的として開始となった. 初期評価時, Zancolli分類はC8BⅡ, 深指屈筋(FDP)と浅指屈筋(FDS)のManual Muscle Test(MMT)は3, 握力は両側21㎏, 指尖ピンチ力は両側2.4kgであった. 左側手指には痺れがあり, Numerical Rating Scale(NRS)は7であった. Simple Test for Evaluating Hand Function(STEF)は右側74点, 左側47点であった. 右側での指尖つまみは可能であったが, 左側はADL場面において常に内在筋プラス肢位であったため, つまみ動作も拙劣だった. Functional Independence Measure(FIM)は運動項目86点, 認知項目30点であった. 上衣動作の点数はシャツのボタンの留め外しに介助を要したため, 4点であった. ボタンの留め外しに要した時間を測定した結果, 4分46秒であった. 病棟の生活場面では, 内服管理が困難であり, ナースコールを適宜押せなかったなど, 看護師の介助が必要であった.
【方法】介入当初は, 左側に対してFDP, FDSの筋力訓練, 作業療法士による自動介助下の指尖つまみの練習を実施した. 自主練習では, 右側で左側を介助しながら行う指尖つまみの練習を指導したが, 適切に行うことが困難であったため, 自主練習を促進するために装具を作製した. 装具は, 示指から小指の掌側から基節骨部までキャストをつけ, MP関節の45度以上の屈曲を抑制する固定装具とした. 自主練習は, 装具装着下にて紐通しを用いたつまみ練習を提供した. その後の作業療法場面では, 装具を装着して母指と示指の指尖つまみ練習とADL練習としてボタン操作練習を2週間実施した. 右側は指尖つまみが可能であったため, 作業療法時には巧緻動作練習, 筋力訓練を中心に実施し, 自主練習ではぬりえなどの作業課題を提供した.
【結果】最終評価時, 握力, 指尖ピンチ力, FDP, FDSのMMTは変化を認めなかった. 左側手指のNRSは0となった. STEFは右側75点, 左側63点に向上した. 左側は装具を装着せず金属板やピンの項目の時間が短縮し, 初期評価と比べ, 指尖つまみ時はPIP, DIP関節の屈曲を認めた. FIMの上衣動作は6点となり, シャツのボタンの留め外しに要した時間は, 装具装着下で2分24秒であった.
【考察】頚椎症性脊髄症により, 左側手指の巧緻性が低下した症例に対して, 装具を用いた練習を行った結果, つまみ動作が改善し, ボタンの留め外しに要する時間が短縮した. 本症例において左側の指尖つまみが拙劣であったのは, 虫様筋, FDP, FDSの筋力の調整が困難であり, 虫様筋が優位に収縮していたことが要因の一つとして考えられた. 装具を用いたことでFDP, FDSの収縮を促すことができたため, 指尖つまみが改善したと推察された. 当初症例は, 効果的な自主練習を行うことができなかったが, 装具を用いた作業課題を提供したことにより, 自主練習の定着が図れたと考えた. 今回の症例において, 装具装着下で実施した作業課題やADL練習が手指の巧緻性の向上に寄与したと考えた.
【症例】症例は60歳代男性で, グループホームで暮らしていた. 既往に統合失調症があり, 定期的に通院し内服を継続していた. Y-3月頃より, 手指の痺れと巧緻動作障害が生じ, その後, 近医に受診し頚椎症性脊髄症と診断された. X年Y月Z日にC4からC6の椎弓形成術とC3, C7の部分椎弓切除術が施行された. 作業療法はZ+3日より, 日常生活動作(ADL)の改善を目的として開始となった. 初期評価時, Zancolli分類はC8BⅡ, 深指屈筋(FDP)と浅指屈筋(FDS)のManual Muscle Test(MMT)は3, 握力は両側21㎏, 指尖ピンチ力は両側2.4kgであった. 左側手指には痺れがあり, Numerical Rating Scale(NRS)は7であった. Simple Test for Evaluating Hand Function(STEF)は右側74点, 左側47点であった. 右側での指尖つまみは可能であったが, 左側はADL場面において常に内在筋プラス肢位であったため, つまみ動作も拙劣だった. Functional Independence Measure(FIM)は運動項目86点, 認知項目30点であった. 上衣動作の点数はシャツのボタンの留め外しに介助を要したため, 4点であった. ボタンの留め外しに要した時間を測定した結果, 4分46秒であった. 病棟の生活場面では, 内服管理が困難であり, ナースコールを適宜押せなかったなど, 看護師の介助が必要であった.
【方法】介入当初は, 左側に対してFDP, FDSの筋力訓練, 作業療法士による自動介助下の指尖つまみの練習を実施した. 自主練習では, 右側で左側を介助しながら行う指尖つまみの練習を指導したが, 適切に行うことが困難であったため, 自主練習を促進するために装具を作製した. 装具は, 示指から小指の掌側から基節骨部までキャストをつけ, MP関節の45度以上の屈曲を抑制する固定装具とした. 自主練習は, 装具装着下にて紐通しを用いたつまみ練習を提供した. その後の作業療法場面では, 装具を装着して母指と示指の指尖つまみ練習とADL練習としてボタン操作練習を2週間実施した. 右側は指尖つまみが可能であったため, 作業療法時には巧緻動作練習, 筋力訓練を中心に実施し, 自主練習ではぬりえなどの作業課題を提供した.
【結果】最終評価時, 握力, 指尖ピンチ力, FDP, FDSのMMTは変化を認めなかった. 左側手指のNRSは0となった. STEFは右側75点, 左側63点に向上した. 左側は装具を装着せず金属板やピンの項目の時間が短縮し, 初期評価と比べ, 指尖つまみ時はPIP, DIP関節の屈曲を認めた. FIMの上衣動作は6点となり, シャツのボタンの留め外しに要した時間は, 装具装着下で2分24秒であった.
【考察】頚椎症性脊髄症により, 左側手指の巧緻性が低下した症例に対して, 装具を用いた練習を行った結果, つまみ動作が改善し, ボタンの留め外しに要する時間が短縮した. 本症例において左側の指尖つまみが拙劣であったのは, 虫様筋, FDP, FDSの筋力の調整が困難であり, 虫様筋が優位に収縮していたことが要因の一つとして考えられた. 装具を用いたことでFDP, FDSの収縮を促すことができたため, 指尖つまみが改善したと推察された. 当初症例は, 効果的な自主練習を行うことができなかったが, 装具を用いた作業課題を提供したことにより, 自主練習の定着が図れたと考えた. 今回の症例において, 装具装着下で実施した作業課題やADL練習が手指の巧緻性の向上に寄与したと考えた.