[OD-5-2] 脊椎圧迫骨折患者の禁忌動作理解の有無と認知機能の関連について
【はじめに】
高齢者に多い骨折には,大腿骨近位部骨折,脊椎圧迫骨折,橈骨遠位端骨折などがあり,骨折後の治療経過では認知機能の低下が加わることで禁忌動作や転倒対策などの管理面に難渋することが多い.特に脊椎圧迫骨折の場合は,前屈などの禁忌動作の理解の有無が骨折部の治癒に影響するため,日常生活の中で前屈動作を防ぎながら治療をしていく必要がある.今回,禁忌動作に対しての管理能力と認知機能の関連を調査した.以下に考察を含めて報告する.
【対象】
対象は,令和5年6月1日~10月31日に当院一般病棟へ入院となった75歳以上の脊椎圧迫骨折患者のうち,起居動作に介助が必要,認知症の診断がある,日本語版Addenbrooke's Cognitive Examination-Revised(以下,ACE-R)の聴取困難,及び83点以上の者を除外した12名(男性8名・女性4名)とした.尚,本研究はヘルシンキ宣言に基づき,患者に同意を得ている.
【方法】
基本情報は年齢,性別など,身体機能・活動面は入院時の腰背部痛Numerical Rating Scale(以下,NRS),入院前・入院時のFunctional Independence Measure(以下,FIM)運動項目合計,認知機能は入院時のACE-R合計・下位得点,入院前・入院時のFIM認知項目合計を調査した.群分けは,靴などの足部セルフケア実施時に禁忌動作(体幹の前屈動作)に対しての理解が不十分な者をⅠ群,禁忌動作に対しての理解ができていた者をⅡ群とした.統計処理はマン-ホイットニーU検定を用いて比較し,有意水準は5%未満とした.
【結果】
Ⅰ群(禁忌動作への理解不十分)は7名,Ⅱ群(禁忌動作への理解あり)は5名であった.平均年齢はⅠ群85.3±2.3歳,Ⅱ群84.8±6.9歳で有意差は認めなかった.入院時の腰背部痛NRSはⅠ群6.0±1.8/10,Ⅱ群7.0±2.9/10で,入院前FIMは運動項目合計Ⅰ群83.6±5.2点,Ⅱ群87.2±7.9点,認知項目合計はⅠ群27.7±4.7点,Ⅱ群32.8±2.3点で認知項目合計に有意差を認めた.入院時FIMは運動項目合計Ⅰ群49.0±7.1点,Ⅱ群52.8±9.1点,認知項目合計はⅠ群23.6±6.1点,Ⅱ群30.2±1.3点で有意差は認めなかった.ACE-Rは,合計Ⅰ群56.3±8.3点,Ⅱ群73.2±2.6点で有意差認め,下位項目は注意/見当識Ⅰ群11.3±2.1点,Ⅱ群16.0±2.0点,記憶Ⅰ群11.0±3.5点,Ⅱ群11.2±2.3点,言語流暢性Ⅰ群3.7±2.4点,Ⅱ群6.7±5.8点,言語Ⅰ群19.4±3.3点,Ⅱ群25.4±0.5点,視空間認知Ⅰ群10.9±3.4点,Ⅱ群14.8±1.3点で,記憶以外の項目に有意差を認め,特に注意/見当識,言語に有意差を認めた.
【考察】
生活場面での禁忌動作の定着については,前屈以外の足部セルフケアの肢位が取れるかなどの身体的要因,自助具の使用などの環境的要因,定着に必要な記憶などの認知的要因が重要である.今回の結果では,認知機能の低下,特に注意機能が禁忌動作の管理能力に影響をすると示唆され,認知的要因が加わることで動作の定着に難渋すると考える.禁忌動作の定着過程の中で,長期記憶として保持するためには注意機能や動作の繰り返しが重要である.また,禁忌動作が出現する前に自発的に禁忌動作について想起する必要があり,その想起には前頭葉機能が重要であると言われている.
今後,管理能力の低下を呈している症例に対し,禁忌動作の定着動作とその想起の獲得に向けて,前頭葉を中心とした認知機能訓練,日々の生活の中で気づきを促して繰り返して実施,また,認識や必要性をより高めるために紙面などでの教育も含めて検討する必要があると考える.
高齢者に多い骨折には,大腿骨近位部骨折,脊椎圧迫骨折,橈骨遠位端骨折などがあり,骨折後の治療経過では認知機能の低下が加わることで禁忌動作や転倒対策などの管理面に難渋することが多い.特に脊椎圧迫骨折の場合は,前屈などの禁忌動作の理解の有無が骨折部の治癒に影響するため,日常生活の中で前屈動作を防ぎながら治療をしていく必要がある.今回,禁忌動作に対しての管理能力と認知機能の関連を調査した.以下に考察を含めて報告する.
【対象】
対象は,令和5年6月1日~10月31日に当院一般病棟へ入院となった75歳以上の脊椎圧迫骨折患者のうち,起居動作に介助が必要,認知症の診断がある,日本語版Addenbrooke's Cognitive Examination-Revised(以下,ACE-R)の聴取困難,及び83点以上の者を除外した12名(男性8名・女性4名)とした.尚,本研究はヘルシンキ宣言に基づき,患者に同意を得ている.
【方法】
基本情報は年齢,性別など,身体機能・活動面は入院時の腰背部痛Numerical Rating Scale(以下,NRS),入院前・入院時のFunctional Independence Measure(以下,FIM)運動項目合計,認知機能は入院時のACE-R合計・下位得点,入院前・入院時のFIM認知項目合計を調査した.群分けは,靴などの足部セルフケア実施時に禁忌動作(体幹の前屈動作)に対しての理解が不十分な者をⅠ群,禁忌動作に対しての理解ができていた者をⅡ群とした.統計処理はマン-ホイットニーU検定を用いて比較し,有意水準は5%未満とした.
【結果】
Ⅰ群(禁忌動作への理解不十分)は7名,Ⅱ群(禁忌動作への理解あり)は5名であった.平均年齢はⅠ群85.3±2.3歳,Ⅱ群84.8±6.9歳で有意差は認めなかった.入院時の腰背部痛NRSはⅠ群6.0±1.8/10,Ⅱ群7.0±2.9/10で,入院前FIMは運動項目合計Ⅰ群83.6±5.2点,Ⅱ群87.2±7.9点,認知項目合計はⅠ群27.7±4.7点,Ⅱ群32.8±2.3点で認知項目合計に有意差を認めた.入院時FIMは運動項目合計Ⅰ群49.0±7.1点,Ⅱ群52.8±9.1点,認知項目合計はⅠ群23.6±6.1点,Ⅱ群30.2±1.3点で有意差は認めなかった.ACE-Rは,合計Ⅰ群56.3±8.3点,Ⅱ群73.2±2.6点で有意差認め,下位項目は注意/見当識Ⅰ群11.3±2.1点,Ⅱ群16.0±2.0点,記憶Ⅰ群11.0±3.5点,Ⅱ群11.2±2.3点,言語流暢性Ⅰ群3.7±2.4点,Ⅱ群6.7±5.8点,言語Ⅰ群19.4±3.3点,Ⅱ群25.4±0.5点,視空間認知Ⅰ群10.9±3.4点,Ⅱ群14.8±1.3点で,記憶以外の項目に有意差を認め,特に注意/見当識,言語に有意差を認めた.
【考察】
生活場面での禁忌動作の定着については,前屈以外の足部セルフケアの肢位が取れるかなどの身体的要因,自助具の使用などの環境的要因,定着に必要な記憶などの認知的要因が重要である.今回の結果では,認知機能の低下,特に注意機能が禁忌動作の管理能力に影響をすると示唆され,認知的要因が加わることで動作の定着に難渋すると考える.禁忌動作の定着過程の中で,長期記憶として保持するためには注意機能や動作の繰り返しが重要である.また,禁忌動作が出現する前に自発的に禁忌動作について想起する必要があり,その想起には前頭葉機能が重要であると言われている.
今後,管理能力の低下を呈している症例に対し,禁忌動作の定着動作とその想起の獲得に向けて,前頭葉を中心とした認知機能訓練,日々の生活の中で気づきを促して繰り返して実施,また,認識や必要性をより高めるために紙面などでの教育も含めて検討する必要があると考える.