[OJ-1-1] 個々のニーズから主体性向上を目指した関わり
~やりたいことが出来るデイの取り組みの効果~
【はじめに】
近年のコロナ対策により,当施設通所介護(以下デイ)でも感染対策を重視していた.そのため直接的な利用者との関わりを縮小しており,以前のような活気ある活動の制限を余儀なくされた.レクリエーション場面においても利用者は与えられた作業を行うことが多かった.そのような中,職員個々の意見として「本当に楽しんで頂けているのだろうか」「利用者に楽しんでもらいたい」との想いがあった.そこで以前のような活気あるデイを取り戻す,また利用者がその人らしい生活を送るための支援として,主体性の向上を目指した「やりたいことが出来るデイ」をコンセプトとした取り組みを開始した.取り組み後の利用者への効果を報告する.
【対象】
令和3年4月~令和4年6月に継続してデイを利用した34名を対象とした.
【方法】
利用者に対して興味関心チェックシート,意思質問紙(以下VQ),観察評価を実施した.統計解析にはEZRを使用し,Wilcoxon符号付順位和検定で有意水準を5%未満とした.主体性を引き出す方法として3つのステップを段階的に行った.
(ステップ①)利用者との雑談からニーズを探る
(ステップ②)職員間での申し送りや雑談でニーズを共有する
(ステップ③)ニーズに合わせて,やりたいことが出来るように環境を整える
なお,本研究は対象者に口頭及び紙面で説明を行い,同意を得て実施した.
【結果】
興味関心チェックシート(P=0.097)及びVQ(P=0.916)においては,有意な差はみられなかった.しかし,取り組み前に比べ,興味関心チェックシートで「興味がある」または「してみたい」の項目が70から79へ増加した.またVQでは平均35.35点から35.41点と変化はみられなかったが,躊躇なく参加する割合に増加がみられた.特に園芸活動での関心が高く,観察評価で自宅から園芸用品を持参する,カラス避けの作成を提案し設置する,野菜の収穫予測表を自作するなどの主体的な行動が見られるようになった.利用者からは「大根を植えて切り干し大根を作ろう」「葉牡丹で正月飾りを作ろう」等の発言が聞かれるようになった.また職員からは「笑顔が増えた気がする」「やりたいことを支援することで,業務に対してのモチベーションが上がった」等の意見があった.
【考察】
感染対策の影響による制限で作業剥奪の状態となり,望みや希望に沿わない与えられた作業作業を行うという作業周縁化を認めていた.黒田由衣(2021)らの研究によると,「主体性の発揮には他者や周囲との関係や対話,発揮するための場作りが重要である」と述べている.「その人らしい生活を支援」という共通認識のもと「やりたいことが出来るデイ」というコンセプトを立てたことで,職員間で利用者への共通した関わりが意識できた.そのうえで,雑談を用いたやりたいことの聴取を行ったことが,潜在的なニーズや想いを引き出しやすい環境に繋がったと考える.また,聴取した想いを職員間で共有する機会を設けたことで,実行に移すための問題点や課題を具体化できた.そのことが,実践に移すための環境設定へと繋がり,環境が整うことで主体性を発揮しやすくなり,主体的な行動の出現に繋がったと考える.利用者個々のニーズから活動をカスタマイズし,継続することで役割や日課となり,その人らしい生活に繋がると考えられるため,今後も個別性を意識した支援を続けていきたい.
近年のコロナ対策により,当施設通所介護(以下デイ)でも感染対策を重視していた.そのため直接的な利用者との関わりを縮小しており,以前のような活気ある活動の制限を余儀なくされた.レクリエーション場面においても利用者は与えられた作業を行うことが多かった.そのような中,職員個々の意見として「本当に楽しんで頂けているのだろうか」「利用者に楽しんでもらいたい」との想いがあった.そこで以前のような活気あるデイを取り戻す,また利用者がその人らしい生活を送るための支援として,主体性の向上を目指した「やりたいことが出来るデイ」をコンセプトとした取り組みを開始した.取り組み後の利用者への効果を報告する.
【対象】
令和3年4月~令和4年6月に継続してデイを利用した34名を対象とした.
【方法】
利用者に対して興味関心チェックシート,意思質問紙(以下VQ),観察評価を実施した.統計解析にはEZRを使用し,Wilcoxon符号付順位和検定で有意水準を5%未満とした.主体性を引き出す方法として3つのステップを段階的に行った.
(ステップ①)利用者との雑談からニーズを探る
(ステップ②)職員間での申し送りや雑談でニーズを共有する
(ステップ③)ニーズに合わせて,やりたいことが出来るように環境を整える
なお,本研究は対象者に口頭及び紙面で説明を行い,同意を得て実施した.
【結果】
興味関心チェックシート(P=0.097)及びVQ(P=0.916)においては,有意な差はみられなかった.しかし,取り組み前に比べ,興味関心チェックシートで「興味がある」または「してみたい」の項目が70から79へ増加した.またVQでは平均35.35点から35.41点と変化はみられなかったが,躊躇なく参加する割合に増加がみられた.特に園芸活動での関心が高く,観察評価で自宅から園芸用品を持参する,カラス避けの作成を提案し設置する,野菜の収穫予測表を自作するなどの主体的な行動が見られるようになった.利用者からは「大根を植えて切り干し大根を作ろう」「葉牡丹で正月飾りを作ろう」等の発言が聞かれるようになった.また職員からは「笑顔が増えた気がする」「やりたいことを支援することで,業務に対してのモチベーションが上がった」等の意見があった.
【考察】
感染対策の影響による制限で作業剥奪の状態となり,望みや希望に沿わない与えられた作業作業を行うという作業周縁化を認めていた.黒田由衣(2021)らの研究によると,「主体性の発揮には他者や周囲との関係や対話,発揮するための場作りが重要である」と述べている.「その人らしい生活を支援」という共通認識のもと「やりたいことが出来るデイ」というコンセプトを立てたことで,職員間で利用者への共通した関わりが意識できた.そのうえで,雑談を用いたやりたいことの聴取を行ったことが,潜在的なニーズや想いを引き出しやすい環境に繋がったと考える.また,聴取した想いを職員間で共有する機会を設けたことで,実行に移すための問題点や課題を具体化できた.そのことが,実践に移すための環境設定へと繋がり,環境が整うことで主体性を発揮しやすくなり,主体的な行動の出現に繋がったと考える.利用者個々のニーズから活動をカスタマイズし,継続することで役割や日課となり,その人らしい生活に繋がると考えられるため,今後も個別性を意識した支援を続けていきたい.