[OJ-1-4] 当院における転倒・転落防止対策
~多職種連携の中でのOT の役割~
【はじめに】鶴岡市立湯田川温泉リハビリテーション病院(以下,当院)では,2013年より入院患者の転倒・転落防止対策への重点的な取り組みを開始した.当院の取り組みは,全国約870病院が加盟する回復期リハビリテーション病棟協会機関誌の2023年10月号特集「良質な回復期リハビリテーション医療を支えるプロセス充実への取り組み」,ケアプロセス調査項目「2.1.6 転倒・転落防止対策」にて紹介された.これは,直近5年の間に病院機能評価を受審した約400の認定病院の中で,各評価項目にて最高評価「S評価」を受けた病院の中でも,更に優れていると判定された全国の27病院が選ばれたものである.今回は当院の取り組みと,OTの関わりについて報告する. なお,発表に際し当院倫理委員会の承認を得た.
【当院の取り組み】令和4年度の当院入院患者の平均年齢は82.2歳であり,認知症高齢者日常生活自立度判定Ⅲ以上の割合も38%と,転倒リスクの高い状況である.そのため当院では,病棟ごとの「転倒・転落防止チーム」,部署代表者による「リスクマネジャー会議」,病院全体での「医療安全管理委員会」を設置し対応している.リスクマネジャー会議では,毎月転倒・転落データを含めた医療事故関連事例を集計・分析し,医療安全管理委員会へ報告することで,院内全体で共有している.更に年1回,転倒・転落予防のための研修会を開催している.また,認知症の方が多いことから「認知症サポートチーム」,「認知症ケア委員会」で対応の検討も行っており,双方が連携して不要な身体拘束はせずに,円滑にリハビリテーションが行えるよう協働している.
【事例紹介】90歳代,女性.X年Y月Z日自宅内で転倒し,右大腿骨転子部骨折の診断でA病院入院.大動脈解離等の既往があり保存療法となる.Z+22日に当院転院.MMSE:14/30点.認知症高齢者日常生活自立度判定:Ⅲa.受傷部の疼痛が強く立位保持も困難だが,歩こうとしてしまうため転倒リスクの高い状態.多職種で転倒・転落に関するアセスメントと環境チェックを行い,ベッドサイドセンサー,ベッドと車椅子間を囲む形でのベッド柵を設置した.対応策はベッドサイドに掲示し,統一を図った.こうした対応策については,病棟の転倒・転落防止チームでも継続評価し,病棟カンファレンスで適宜確認した.また,環境変化による混乱があり,認知症サポートチームも介入.一人になると不安感から帰宅願望が強くなるため,日中は食堂へ離床しReality Orientationを用いた声掛けを多職種で実施した.担当OTは,飼い猫を大変可愛がっているという情報より,愛猫の写真を室内に飾り話題に活用してもらうよう他職種へ依頼.また,作業活動として猫のぬいぐるみ作りを行った.愛着のある猫の話題でコミュニケーションを取る,ぬいぐるみのぬくもりのある素材に触れることを通して徐々に不穏行動は減少し,認知症高齢者日常生活自立度判定:Ⅱbとなった.センサーマット不要,ポータブルトイレでの排泄が自立し,自宅退院に至った.
【結語】このような転倒・転落防止対策は2014年より本格運用を開始し,適宜修正を行うことで転倒・転落率(入院延べ患者数に対する発生件数の千分率,パーミル)は2013年度の5.4‰から2022年度は2.1‰となった(全国平均3.7‰).こうした病院全体で連携して取り組むシステムや患者の安全を守ろうとする職員の意識が,平均年齢,認知症割合が高い当院の患者層でも転倒・転落率を低く保っている要因と考える.またOTの役割として,医療従事者側からみると困る行動の背景にその人なりの理由があることを見出し,チームアプローチの中で多職種と共有することや具体的な対応策を提案すること,対象者にとって価値のある作業を通じて関わることが挙げられる.
【当院の取り組み】令和4年度の当院入院患者の平均年齢は82.2歳であり,認知症高齢者日常生活自立度判定Ⅲ以上の割合も38%と,転倒リスクの高い状況である.そのため当院では,病棟ごとの「転倒・転落防止チーム」,部署代表者による「リスクマネジャー会議」,病院全体での「医療安全管理委員会」を設置し対応している.リスクマネジャー会議では,毎月転倒・転落データを含めた医療事故関連事例を集計・分析し,医療安全管理委員会へ報告することで,院内全体で共有している.更に年1回,転倒・転落予防のための研修会を開催している.また,認知症の方が多いことから「認知症サポートチーム」,「認知症ケア委員会」で対応の検討も行っており,双方が連携して不要な身体拘束はせずに,円滑にリハビリテーションが行えるよう協働している.
【事例紹介】90歳代,女性.X年Y月Z日自宅内で転倒し,右大腿骨転子部骨折の診断でA病院入院.大動脈解離等の既往があり保存療法となる.Z+22日に当院転院.MMSE:14/30点.認知症高齢者日常生活自立度判定:Ⅲa.受傷部の疼痛が強く立位保持も困難だが,歩こうとしてしまうため転倒リスクの高い状態.多職種で転倒・転落に関するアセスメントと環境チェックを行い,ベッドサイドセンサー,ベッドと車椅子間を囲む形でのベッド柵を設置した.対応策はベッドサイドに掲示し,統一を図った.こうした対応策については,病棟の転倒・転落防止チームでも継続評価し,病棟カンファレンスで適宜確認した.また,環境変化による混乱があり,認知症サポートチームも介入.一人になると不安感から帰宅願望が強くなるため,日中は食堂へ離床しReality Orientationを用いた声掛けを多職種で実施した.担当OTは,飼い猫を大変可愛がっているという情報より,愛猫の写真を室内に飾り話題に活用してもらうよう他職種へ依頼.また,作業活動として猫のぬいぐるみ作りを行った.愛着のある猫の話題でコミュニケーションを取る,ぬいぐるみのぬくもりのある素材に触れることを通して徐々に不穏行動は減少し,認知症高齢者日常生活自立度判定:Ⅱbとなった.センサーマット不要,ポータブルトイレでの排泄が自立し,自宅退院に至った.
【結語】このような転倒・転落防止対策は2014年より本格運用を開始し,適宜修正を行うことで転倒・転落率(入院延べ患者数に対する発生件数の千分率,パーミル)は2013年度の5.4‰から2022年度は2.1‰となった(全国平均3.7‰).こうした病院全体で連携して取り組むシステムや患者の安全を守ろうとする職員の意識が,平均年齢,認知症割合が高い当院の患者層でも転倒・転落率を低く保っている要因と考える.またOTの役割として,医療従事者側からみると困る行動の背景にその人なりの理由があることを見出し,チームアプローチの中で多職種と共有することや具体的な対応策を提案すること,対象者にとって価値のある作業を通じて関わることが挙げられる.