[OJ-3-4] 刑務所における作業療法士が行う健康運動指導への意識について
~高齢受刑者へのアンケート調査より~
【背景】熊本県作業療法士会では熊本刑務所から依頼を受け,2018年より高齢受刑者へ心身機能改善を目的とした健康運動指導を行っており,2名の作業療法士(以下,OT)が小集団での介入を週1回・約1時間実施している.我々は過去の研究にて,健康運動指導の効果として受刑者の心身機能の改善だけではなく,対人関係の改善など社会的行動の変化があったことを報告してきた.6年に渡る健康運動指導の経過の中で,感染症の流行によって介入が困難な時期があった.現在,感染症の流行が落ち着き,通常頻度での介入が可能となったが,介入再開後に受刑者の健康運動指導に対する意識の変化を感じるようになった.これまで受刑者の健康運動指導に対する意識については,刑務所職員を通じて間接的に聴取することがほとんどであり,健康運動指導への意識を個別に直接聴取する機会は少なかった.今回,今後の活動におけるOTの有用性や課題を検討することを目的とし,OTが実施する健康運動指導に対する意識について受刑者へ直接調査を行ったので,ここに報告する.
【方法】2023年10月から12月までの3か月で健康運動指導に参加している70~80代の高齢受刑者11名を対象に①参加期間,②健康に対する意識,③健康運動指導に対する意欲・達成感,④参加者が意識している健康運動指導に対する目的,⑤心身に対する気づき,⑥生活に関する気づき,⑦自発性・他者への関心などの社会性についての気づき,についてアンケート調査を実施した.アンケートは複数選択式,受刑者へ直接説明し回答を得た.また発表につき熊本刑務所を通して受刑者より同意を得ている.
【結果】回答率は54%(6名).①は1年未満が1名,1~2年が3名,5年以上が2名であった.②は6名が「気になる」であった.③は,1名未記入を除き5名が「楽しい」「満足」であった.④は,「身体・認知面低下の予防」が4名,「心の健康」「自分への挑戦」「OTとの交流」が5名であった.⑤は「足がうごくようになった」3名,「前向きに考えられるようになった」が4名であった.⑥は,「布団の上げ下げが楽になった」が3名,「本やテレビで勉強するようになった」が2名,「部屋で練習するようになった」が3名であった.⑦は「困っている人を見たら手助けをするようになった」が5名であった.
【考察】地域高齢者では,通いの場などの社会参加は健康関連情報の授受の場となり健康意識が高まるという報告や,運動習慣・心理社会面と生活機能が増進されるとある.今回の調査でも地域高齢者と同様の傾向が見られた.一方で「OTとの交流」を目的にしている受刑者が多かった.健康運動指導を行う中で,受刑者からOTは「社会の人」と呼ばれている.受刑者はOTが行う集団での健康運動指導を刑務所内での数少ない社会参加の場と捉えていることが伺え,社会とつながることを重要視していることが考えられた.さらに,「困っている人を見たら手助けをするようになった」という回答も多かった.このことは,健康運動指導を通しOTの受刑者への関わり方をモデルとして,あらためて他者への接し方を学んでいることが推察された.今回の調査からOTが行う健康運動指導は,受刑者の健康意識を高め,社会とつながり,行動の変容を導く有用性があることが伺えた.また,感染症の流行中に健康運動指導の頻度が一時低下したことが影響したのか,あらためて社会とのつながりを欲していることがわかった.今後の課題は,刑務所に収容されている時期から社会とつながる機会・作業の提供を増やすために,どのように刑務所職員と協業するかということである.
【方法】2023年10月から12月までの3か月で健康運動指導に参加している70~80代の高齢受刑者11名を対象に①参加期間,②健康に対する意識,③健康運動指導に対する意欲・達成感,④参加者が意識している健康運動指導に対する目的,⑤心身に対する気づき,⑥生活に関する気づき,⑦自発性・他者への関心などの社会性についての気づき,についてアンケート調査を実施した.アンケートは複数選択式,受刑者へ直接説明し回答を得た.また発表につき熊本刑務所を通して受刑者より同意を得ている.
【結果】回答率は54%(6名).①は1年未満が1名,1~2年が3名,5年以上が2名であった.②は6名が「気になる」であった.③は,1名未記入を除き5名が「楽しい」「満足」であった.④は,「身体・認知面低下の予防」が4名,「心の健康」「自分への挑戦」「OTとの交流」が5名であった.⑤は「足がうごくようになった」3名,「前向きに考えられるようになった」が4名であった.⑥は,「布団の上げ下げが楽になった」が3名,「本やテレビで勉強するようになった」が2名,「部屋で練習するようになった」が3名であった.⑦は「困っている人を見たら手助けをするようになった」が5名であった.
【考察】地域高齢者では,通いの場などの社会参加は健康関連情報の授受の場となり健康意識が高まるという報告や,運動習慣・心理社会面と生活機能が増進されるとある.今回の調査でも地域高齢者と同様の傾向が見られた.一方で「OTとの交流」を目的にしている受刑者が多かった.健康運動指導を行う中で,受刑者からOTは「社会の人」と呼ばれている.受刑者はOTが行う集団での健康運動指導を刑務所内での数少ない社会参加の場と捉えていることが伺え,社会とつながることを重要視していることが考えられた.さらに,「困っている人を見たら手助けをするようになった」という回答も多かった.このことは,健康運動指導を通しOTの受刑者への関わり方をモデルとして,あらためて他者への接し方を学んでいることが推察された.今回の調査からOTが行う健康運動指導は,受刑者の健康意識を高め,社会とつながり,行動の変容を導く有用性があることが伺えた.また,感染症の流行中に健康運動指導の頻度が一時低下したことが影響したのか,あらためて社会とのつながりを欲していることがわかった.今後の課題は,刑務所に収容されている時期から社会とつながる機会・作業の提供を増やすために,どのように刑務所職員と協業するかということである.