第58回日本作業療法学会

講演情報

一般演題

高齢期 / 認知障害(高次脳機能障害を含む)

[OJ-4] 一般演題:高齢期 4/ 認知障害(高次脳機能障害を含む) 5  

2024年11月10日(日) 10:50 〜 11:50 F会場 (201・202)

座長:村田 和香(群馬パース大学 リハビリテーション学部)

[OJ-4-1] 会話インデックスと認知症発症リスクとの関連

島田 裕之, 土井 剛彦, 堤本 広大, 崎本 史生, 見須 裕香 (国立長寿医療研究センター 老年学・社会科学研究センター)

【はじめに】
 社会的ネットワークと社会参加は,認知機能の低下,アルツハイマー病およびその他の認知症の発症と関連することが明らかとされている.これらの活動の基盤として会話することが要求されるが,日常の会話状況を評価する指標は限られており,評価体制が整っていない状況にある.
【目的】
 本研究では,高齢者における会話状況を簡便に把握するための指標を開発し,その予測妥当性の検証として,60か月間の認知症発症を診療情報明細書から特定して関連性を検討することを目的とした.
【方法】
 2015年9月から2017年2月までに実施した高齢者機能健診(NCGG-SGS)のコホートデータを用いて分析を行った.このデータベースには,一般的に健康で顕著な認知障害のない60歳以上の日本人4,167人が含まれていた.対象者の除外基準は,要介護認定,日常生活機能障害,認知症,パーキンソン病,脳血管疾患,うつ病,MMSE20点以下,欠損値のある者とした.対象者は,ベースライン時の6つの日常会話調査項目(会話人数,会話時間,自分が話す時間,同居家族との会話頻度,別居家族との会話頻度,友人との会話頻度)に従って複合スコアとして算出しYouden indexにより認知症リスク判定のカットオフ値を求めた.認知症の新規発症は32のICD-10コードから特定し,60ヵ月にわたって毎月追跡した.会話インデックスと認知症発症との関連はCox比例ハザードモデルをもちいて解析した.本研究は国立長寿医療研究センターの倫理審査委員会の承認を得て実施した(No 770-1).
【結果】
 除外基準に該当しない2,531人(72.7±6.7歳,60-96歳)のデータを解析した.1,000人年あたりの認知症発症率は15.7(95%信頼区間:13.6-18.1)であった.認知症発症に対する会話インデックスのカットオフ値は16/17点であった.会話が少ない群には,新たに認知症を発症した人が多く含まれ,Cox比例ハザードモデルでは会話量が多い群では低い群と比較して認知症発症リスクが低いことが示された(ハザード比:0.65, 95%信頼区間:0.48–0.89).
【結論】
 認知症発症リスクは日常会話の少なさと有意に関連していた.日常会話の評価は認知症発症のリスク指標として有用であろう.