[ON-1-3] 合意目標の達成を重ねたことで修学旅行への参加に繋がった一例
<はじめに>医療ケア児の実態調査(厚生労働省2020)では社会からの孤立,外出の悩みは多く割合は7割と多い.今回,在宅生活する医療的ケア児に作業療法士(以下OT)が目標設定,動作訓練を段階的に提案し訪問リハビリテーション(以下訪問リハ)で実施.活動の場の拡大・社会参加へ繋がった症例について報告する.
<症例紹介>10代女性.X年時に脳動脈奇形による小脳出血を発症.開頭血種除去術,小脳部分切除,脳室ドレナージ施行,人工呼吸器管理となる.意思疎通困難,ADL全介助. 8か月後自宅退院.訪問リハ,訪問診療,訪問看護,訪問入浴,訪問学級を利用し家族5人の生活を開始. X+5年,現在のOTが介入.
<倫理的配慮>本研究は本人及び家族の同意を得て当院の倫理審査委員会の承認を受けた.
<初期評価>全身状態として意識はGCSでE3V1M2,意思疎通困難,人工呼吸器管理,胃婁.身体機能はBRS左右Ⅲ/Ⅲ/Ⅲ右手は自動運動様の動きあり.セルフケア全介助.生活空間評価のLSA(Life Space Assessment)は生活レベル1~2(寝室以外の自宅,敷地内).家族は外出へ不安が強く退院以降で外出は未実施.
<経過 >X+5年,週1回,60分介入.訓練はヘッドアップ30度程度で介助指導や徒手訓練を主に実施.訓練中,家族より「家族皆で外出等楽しみたい」と希望あり.外出内容については家族の主体性を促す為,共に現状の振り返りと課題を整理し,外出先の選定と必要な福祉車両への介助練習,医療機器の車内配置を検討した.結果,近隣の公園へ外出し弟のサッカーを応援する事が出来た.家族は「家と比べ反応が良い」と喜ばれ,退院から数年ぶりの家族の外出と振り返られた.
目標達成し家族より,さらなる外出と1年半後の「修学旅行に参加したい」と大きな希望も聞かれた.旅行に関して細かな目標設定が必要と考え,家族と話し合い①片道2時間の車での外出②環境の整わない場へ外出③夜間の外出④外出先での注入の合意目標を共有.
車での外出時間については,近隣の公園等から行い段階的に時間を延長し海や庭園等,2時間を超える外出に繋がった.環境の整わない場は,現状の困り感として,祖母宅の玄関が高く親戚の集まりへ行けない,会場のエレベーターが狭く乗降できない等が挙がった.その為,実際にスロープを使い介助方法の助言や,エレベーター幅に合わせ座位練習を行い外出へ繋げた.①②の目標を達成し経験を積み,家族の行動も変化が見られ,コンサートや水族館へ1日を通し外出も行い,夜間の外出や出先での注入も可能となった.また,医療ケア児の会へも参加するようになり,情報交換の場へ積極的に足を運ぶようになった.
修学旅行半年前は,医師,学校教諭,家族,関連職種で情報共有を実施.結果,1泊2日の旅行に本児一人で参加が行えた.家族から「皆で旅行できて良かったね」と発言があり,自宅とは違う表情を収めた写真が多く飾られていた.また,修学旅行に行けた事で前向きな発言がさらに増え「今度は家族で旅行がしたいね」と新たな希望も聞かれた.
<再評価>身体機能面は大幅な変化なし.LSAは生活レベル3~5(町内・町外)へと変化し,活動の場,外出する頻度,関わる人の拡大を認めた.また家族からは外出に対して前向きな発言が増えた.
<考察>地域の医療ケア児は,社会や情報から孤立する傾向にあり,生活期の訪問リハの持つ役割は大きい.前向きに本人らしい生活を目指すには,意味のある作業に対し成功体験を積む事が重要であり,OTはポイントを踏まえ成功へと導く必要がある.地域で働くOTは,家族と協働し作業を考え,目標達成する中で生活の選択肢を増やしQOLに寄与するよう関わる必要があると考える.
<症例紹介>10代女性.X年時に脳動脈奇形による小脳出血を発症.開頭血種除去術,小脳部分切除,脳室ドレナージ施行,人工呼吸器管理となる.意思疎通困難,ADL全介助. 8か月後自宅退院.訪問リハ,訪問診療,訪問看護,訪問入浴,訪問学級を利用し家族5人の生活を開始. X+5年,現在のOTが介入.
<倫理的配慮>本研究は本人及び家族の同意を得て当院の倫理審査委員会の承認を受けた.
<初期評価>全身状態として意識はGCSでE3V1M2,意思疎通困難,人工呼吸器管理,胃婁.身体機能はBRS左右Ⅲ/Ⅲ/Ⅲ右手は自動運動様の動きあり.セルフケア全介助.生活空間評価のLSA(Life Space Assessment)は生活レベル1~2(寝室以外の自宅,敷地内).家族は外出へ不安が強く退院以降で外出は未実施.
<経過 >X+5年,週1回,60分介入.訓練はヘッドアップ30度程度で介助指導や徒手訓練を主に実施.訓練中,家族より「家族皆で外出等楽しみたい」と希望あり.外出内容については家族の主体性を促す為,共に現状の振り返りと課題を整理し,外出先の選定と必要な福祉車両への介助練習,医療機器の車内配置を検討した.結果,近隣の公園へ外出し弟のサッカーを応援する事が出来た.家族は「家と比べ反応が良い」と喜ばれ,退院から数年ぶりの家族の外出と振り返られた.
目標達成し家族より,さらなる外出と1年半後の「修学旅行に参加したい」と大きな希望も聞かれた.旅行に関して細かな目標設定が必要と考え,家族と話し合い①片道2時間の車での外出②環境の整わない場へ外出③夜間の外出④外出先での注入の合意目標を共有.
車での外出時間については,近隣の公園等から行い段階的に時間を延長し海や庭園等,2時間を超える外出に繋がった.環境の整わない場は,現状の困り感として,祖母宅の玄関が高く親戚の集まりへ行けない,会場のエレベーターが狭く乗降できない等が挙がった.その為,実際にスロープを使い介助方法の助言や,エレベーター幅に合わせ座位練習を行い外出へ繋げた.①②の目標を達成し経験を積み,家族の行動も変化が見られ,コンサートや水族館へ1日を通し外出も行い,夜間の外出や出先での注入も可能となった.また,医療ケア児の会へも参加するようになり,情報交換の場へ積極的に足を運ぶようになった.
修学旅行半年前は,医師,学校教諭,家族,関連職種で情報共有を実施.結果,1泊2日の旅行に本児一人で参加が行えた.家族から「皆で旅行できて良かったね」と発言があり,自宅とは違う表情を収めた写真が多く飾られていた.また,修学旅行に行けた事で前向きな発言がさらに増え「今度は家族で旅行がしたいね」と新たな希望も聞かれた.
<再評価>身体機能面は大幅な変化なし.LSAは生活レベル3~5(町内・町外)へと変化し,活動の場,外出する頻度,関わる人の拡大を認めた.また家族からは外出に対して前向きな発言が増えた.
<考察>地域の医療ケア児は,社会や情報から孤立する傾向にあり,生活期の訪問リハの持つ役割は大きい.前向きに本人らしい生活を目指すには,意味のある作業に対し成功体験を積む事が重要であり,OTはポイントを踏まえ成功へと導く必要がある.地域で働くOTは,家族と協働し作業を考え,目標達成する中で生活の選択肢を増やしQOLに寄与するよう関わる必要があると考える.