第58回日本作業療法学会

講演情報

一般演題

地域

[ON-4] 一般演題:地域 4

2024年11月9日(土) 15:40 〜 16:40 E会場 (204)

座長:久保田 智洋(アール医療専門職大学 作業療法学科)

[ON-4-2] 地域在住高齢者における作業の価値が生きがいに及ぼす影響の横断研究

岩崎 純平1, 會田 玉美2, 山田 孝3,4 (1.東京天使病院  リハビリテーション科, 2.目白大学大学院 リハビリテーション学研究科, 3.日本人間作業モデル研究所, 4.東京保健医療専門職大学)

【はじめに】
 筆者らは先行研究にて,地域在住高齢者における作業の価値カテゴリー1)を基に,地域在住高齢者に対する作業価値調査票(Questionnaire of Occupational Value for Elderly people:以下,QOVE)を開発した.QOVE は対象者の作業に対する価値を《他者交流》《自己発展》《作業謳歌》《生活調和》《帰属意識》の5因子から簡便にとらえる調査票である.QOVEを用いて作業の価値と健康の関連性を明らかにできれば,地域在住高齢者の健康増進に対する支援方法に資することができると考えた.
【目的】
 QOVEとIkigai-9の多重指標モデル分析を通し,地域在住高齢者における作業の価値が生きがいに与える影響を明らかにすることである.
【方法】
 対象者は,グループ活動に参加し,老研式活動能力指標が10点以上であり,かつ介護認定を受けていない地域在住高齢者とした.分析方法は,QOVEとIkigai-92)を用い仮説モデルを作成し多重指標モデル分析を行った.その際,QOVEの5因子すべてがIkigai-9の総得点に影響を及ぼすことを仮定してパス図を作成した.モデル適合度指標は,χ2検定, GFI, AGFI,CFI, RMSEAの値を確認した.QOVEがIkigai-9へ与える影響を標準化係数にて確認した.これらの統計解析はIBM SPSS Statistics ver.22 , Amos ver.24を用いて分析を行い,有意水準はp<0.05とした. また,本研究は,目白大学医学系研究に係る倫理審査委員会の承認を受けて実施した(承認番号:22医研−001).
【結果】
 地域在住高齢者393名に対し調査を行い189名の有効回答を得た.対象者の属性は,男性59名(31.2%),女性130名(68.7%)であり,平均年齢は76.8±5.2歳であった.仮説モデルの適合度指標は,χ2=234.85,df=123,p<0.001,GFI=0.884,AGFI=0.839,CFI=0.941,RMSEA=0.070であり,《生活調和》と《他者交流》がIkigai-9に対して中等度の正の有意なパスを示した.
【結論】
 地域在住高齢者の生きがいには,《生活調和》,あるいは《他者交流》の価値を抱く作業が影響を与えていることが示唆された.
【文献】
1)岩崎 純平,中村 哲也,山田 孝:地域在住高齢者が作業に抱く価値の検討 ~【選択的】価値と【義務的】価値の生成~.作業行動研究,24(4):161-170. 2021.
2)今井 忠則, 長田 久雄, 西村 芳貢:生きがい意識尺度(Ikigai–9)の信頼性と妥当性の検討. 日本公衆衛生雑誌, 59:433-439.2021.