[ON-7-4] 高齢者における地域組織の運営への関わりと生きがい
~ JAGES2016-2019-2022 縦断研究~
【はじめに】
本邦では,多様な主体が参画し住民の暮らしと生きがい,地域をともに創る地域共生社会の実現が求められている(厚労省,2018).第四次作業療法5ヵ年戦略のスローガンでは,地域共生社会の実現に向けて人々の活動・参加を支援していく必要性が示された(JAOT,2022).参加の支援には住民の積極的な地域活動への参加だけでなく,地域社会の担い手として住民の主体的な運営への参画も重要である.高齢者において他者支援・社会貢献型の社会参加者は生きがいなしリスクが低く(山田ら,2024),また,地域組織で役割を担う者は,健康アウトカムとの正の関連が示された(Takagi et al.,2013; Ishikawa et al.,2016).地域組織の運営に関わる者は生きがい感が高い(島貫ら,2005)ことが明らかになっているが,横断研究での検証であり因果関係は十分ではない.
【目的】
地域組織に参加し且つ運営に関わる高齢者は生きがいが高いかを明らかにすることである.
【方法】
本研究は,日本老年学的評価研究(Japan Gerontological Evaluation Study:JAGES)の2016年,2019年,2022年のデータを用いた縦断研究である.対象は3時点の自記式調査に回答した全国23市町65歳以上の高齢者8,711人(平均71.9歳)である.目的変数は2022年の生きがい(0~10点),説明変数は2019年の地域組織の参加と運営(参加と運営あり,参加のみあり,参加および運営なし)とし,参加のみありを参照軍とした.8種類の地域組織(ボランティア,スポーツ,老人クラブ,町内会,学習・教養,特技伝達,趣味,通いの場)の活動に月1回以上の参加を参加ありとした.また,運営に関わっている組織が1種類以上ありで運営ありとした.調整変数は2016年の性,年齢,等価所得,地域組織の参加と運営などを使用した(VanderWeele et al.,2016).統計学的分析では,線形回帰分析(強制投入法,有意水準5%)を用いて非標準化係数B,95%信頼区間(confidence interval;CI),p値を算出した.本研究は関係機関の倫理審査委員会の承認を得て実施し,対象者には書面で説明し,同意を得た.
【結果】
2022年の生きがいの平均値は7.1±2.1点で,2019年の地域組織の参加と運営は,参加と運営ありが3,103人(35.6%),参加のみありが2,729人(31.3%),参加および運営なしの者が2,879人(33.1%)だった.参加のみありを参照群とした生きがいは,参加と運営ありでB=0.28([95%CI:0.18-0.39],p<0.001),参加および運営なしでB=-0.29([95%CI:-0.41-0.17],p<0.001)であった.
【考察】
生きがいがある者ほど地域組織への参加や運営に関わった可能性が否定できないものの,地域組織に参加し且つ運営にも関わっている高齢者は,参加のみの高齢者と比較して,その後の生きがいが高いことがわかった.作業療法士は,高齢者を地域活動への参加や運営に繋ぐことで生きがい,地域をともに創る地域共生社会の実現に寄与できると考えられる.
本邦では,多様な主体が参画し住民の暮らしと生きがい,地域をともに創る地域共生社会の実現が求められている(厚労省,2018).第四次作業療法5ヵ年戦略のスローガンでは,地域共生社会の実現に向けて人々の活動・参加を支援していく必要性が示された(JAOT,2022).参加の支援には住民の積極的な地域活動への参加だけでなく,地域社会の担い手として住民の主体的な運営への参画も重要である.高齢者において他者支援・社会貢献型の社会参加者は生きがいなしリスクが低く(山田ら,2024),また,地域組織で役割を担う者は,健康アウトカムとの正の関連が示された(Takagi et al.,2013; Ishikawa et al.,2016).地域組織の運営に関わる者は生きがい感が高い(島貫ら,2005)ことが明らかになっているが,横断研究での検証であり因果関係は十分ではない.
【目的】
地域組織に参加し且つ運営に関わる高齢者は生きがいが高いかを明らかにすることである.
【方法】
本研究は,日本老年学的評価研究(Japan Gerontological Evaluation Study:JAGES)の2016年,2019年,2022年のデータを用いた縦断研究である.対象は3時点の自記式調査に回答した全国23市町65歳以上の高齢者8,711人(平均71.9歳)である.目的変数は2022年の生きがい(0~10点),説明変数は2019年の地域組織の参加と運営(参加と運営あり,参加のみあり,参加および運営なし)とし,参加のみありを参照軍とした.8種類の地域組織(ボランティア,スポーツ,老人クラブ,町内会,学習・教養,特技伝達,趣味,通いの場)の活動に月1回以上の参加を参加ありとした.また,運営に関わっている組織が1種類以上ありで運営ありとした.調整変数は2016年の性,年齢,等価所得,地域組織の参加と運営などを使用した(VanderWeele et al.,2016).統計学的分析では,線形回帰分析(強制投入法,有意水準5%)を用いて非標準化係数B,95%信頼区間(confidence interval;CI),p値を算出した.本研究は関係機関の倫理審査委員会の承認を得て実施し,対象者には書面で説明し,同意を得た.
【結果】
2022年の生きがいの平均値は7.1±2.1点で,2019年の地域組織の参加と運営は,参加と運営ありが3,103人(35.6%),参加のみありが2,729人(31.3%),参加および運営なしの者が2,879人(33.1%)だった.参加のみありを参照群とした生きがいは,参加と運営ありでB=0.28([95%CI:0.18-0.39],p<0.001),参加および運営なしでB=-0.29([95%CI:-0.41-0.17],p<0.001)であった.
【考察】
生きがいがある者ほど地域組織への参加や運営に関わった可能性が否定できないものの,地域組織に参加し且つ運営にも関わっている高齢者は,参加のみの高齢者と比較して,その後の生きがいが高いことがわかった.作業療法士は,高齢者を地域活動への参加や運営に繋ぐことで生きがい,地域をともに創る地域共生社会の実現に寄与できると考えられる.