[OP-1-5] スノーダンプ除雪における突き入れ動作および引き出し動作の筋活動量の比較研究
【序論】除雪作業は,積雪地にて冬期間に行う作業活動であるが,身体的負担が強く,特に高齢世帯にとって自立した生活が出来るか否かの要因になるとされている.除雪作業では,スノーシャベルまたはスノーダンプ(以下:ダンプ)を用いることが一般的であり,ダンプの方が作業効率は優れる反面,身体的負担も強いとされる.ダンプ除雪における作業工程は5工程(突き入れ,押し下げ,引き出し,運搬,持ち上げ)に分類される.我々が行った健常成人への調査では,ダンプ除雪時には突き入れ動作時に上肢および腰背部への負担が高いことが示されているものの,筋活動や動作特徴といった視点からした先行研究はない.
【目的】ダンプ除雪の突き入れ動作および引き出し動作時の上肢・体幹活動量を筋活動の視点から明らかにすることである.
【方法】対象者は本研究に同意を得た健常男性8名とし(平均年齢20.5±0.5歳),いずれもダンプ除雪経験者ということを確認した.本実験での課題動作は集積した雪塊にダンプの突き入れ動作から引き出し動作までを行い,1被験者につき3回実施した.作業時に筋電図測定を行うために,各被験者には,両側の上腕二頭筋,上腕三頭筋,腹直筋,脊柱起立筋の合計8か所に無線タイプの電極を貼付し,各筋は左右の数値を平均化し,実施時間で除することで1秒間あたりの筋活動量を求めた.事前に測定した3秒間の最大随意収縮の中央1秒間の積分値(iEMG)に対する割合(%iEMG)を算出した.統計解析では,突き入れ動作および引き出し動作時の各筋の平均%iEMGを対応のあるt検定を用いて比較を行い,有意水準は5%とした.なお,本研究は,本学倫理審査委員会の承認を得て行った.
【結果】各被験者における突き入れ動作時の平均% iEMGは,上腕二頭筋25%,上腕三頭筋40%,腹直筋32%,脊柱起立筋22%であったのに対し,引き出し動作は,上腕二頭筋13%,上腕三頭筋38%,腹直筋28%,脊柱起立筋25%であった.統計解析の結果,突き入れ動作において有意に上腕二頭筋の活動量が多いという結果になった(p<0.01,d=1.04).
【考察】最大筋力の30%程度の負荷は筋持久性の向上に有用であることが知られているが,本研究の結果ではダンプ作業での突き入れ動作および引き出し動作の繰り返しは持久性向上トレーニングと類似した活動量が必要であることが示唆された.また,動作の特性としては突き入れ動作では上腕二頭筋の活動が引き出し動作に比べると高く,動作時に肘折れを防ぐための上腕三頭筋との同時収縮が生じたことや,雪塊にダンプを突き入れて崩し入れる動作時に上腕二頭筋の遠心性収縮が発生した影響などが推測される結果であった.一方,測定筋全体の筋活動では動作による活動量には明確な差は今回の研究では認められなかった.この結果は,ダンプ除雪に類似する台車操作に関する先行研究でも,押すのみでなく引く動作でも労作性が強いという報告と類似した結果であった.本研究においては,ダンプ除雪の作業工程のうち,突き入れ動作と引き出し動作のみの調査しか行っていないため,今後はその他の作業工程を含めた調査を行い,各作業工程における筋活動の特性を把握する必要があると考える.
【目的】ダンプ除雪の突き入れ動作および引き出し動作時の上肢・体幹活動量を筋活動の視点から明らかにすることである.
【方法】対象者は本研究に同意を得た健常男性8名とし(平均年齢20.5±0.5歳),いずれもダンプ除雪経験者ということを確認した.本実験での課題動作は集積した雪塊にダンプの突き入れ動作から引き出し動作までを行い,1被験者につき3回実施した.作業時に筋電図測定を行うために,各被験者には,両側の上腕二頭筋,上腕三頭筋,腹直筋,脊柱起立筋の合計8か所に無線タイプの電極を貼付し,各筋は左右の数値を平均化し,実施時間で除することで1秒間あたりの筋活動量を求めた.事前に測定した3秒間の最大随意収縮の中央1秒間の積分値(iEMG)に対する割合(%iEMG)を算出した.統計解析では,突き入れ動作および引き出し動作時の各筋の平均%iEMGを対応のあるt検定を用いて比較を行い,有意水準は5%とした.なお,本研究は,本学倫理審査委員会の承認を得て行った.
【結果】各被験者における突き入れ動作時の平均% iEMGは,上腕二頭筋25%,上腕三頭筋40%,腹直筋32%,脊柱起立筋22%であったのに対し,引き出し動作は,上腕二頭筋13%,上腕三頭筋38%,腹直筋28%,脊柱起立筋25%であった.統計解析の結果,突き入れ動作において有意に上腕二頭筋の活動量が多いという結果になった(p<0.01,d=1.04).
【考察】最大筋力の30%程度の負荷は筋持久性の向上に有用であることが知られているが,本研究の結果ではダンプ作業での突き入れ動作および引き出し動作の繰り返しは持久性向上トレーニングと類似した活動量が必要であることが示唆された.また,動作の特性としては突き入れ動作では上腕二頭筋の活動が引き出し動作に比べると高く,動作時に肘折れを防ぐための上腕三頭筋との同時収縮が生じたことや,雪塊にダンプを突き入れて崩し入れる動作時に上腕二頭筋の遠心性収縮が発生した影響などが推測される結果であった.一方,測定筋全体の筋活動では動作による活動量には明確な差は今回の研究では認められなかった.この結果は,ダンプ除雪に類似する台車操作に関する先行研究でも,押すのみでなく引く動作でも労作性が強いという報告と類似した結果であった.本研究においては,ダンプ除雪の作業工程のうち,突き入れ動作と引き出し動作のみの調査しか行っていないため,今後はその他の作業工程を含めた調査を行い,各作業工程における筋活動の特性を把握する必要があると考える.