第58回日本作業療法学会

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一般演題

教育 /地域

[OR-2] 一般演題:教育 2/地域 8 

Sun. Nov 10, 2024 8:30 AM - 9:30 AM H会場 (207)

座長:髙木 大輔(東北文化学園大学 )

[OR-2-3] 回復期リハビリテーション病棟の作業療法士における多職種連携実践の現状と経験年数との関連

松永 誠1, 太田 健一2 (1.津島市民病院 リハビリテーション作業療法科, 2.日本福祉大学福祉経営学部医療 ・福祉マネジメント学科(通信教育))

【はじめに】回復期リハビリテーション病棟の作業療法士(Occupational Therapist: 以下,OT)には,多職種連携実践(Interprofessional Work: 以下,IPW)の能力が欠かせない(日本OT協会2005,岡本隆嗣2021).一方で,OTのIPWに関する先行研究は少なく,実践の現状を示した具体的な資料は見当たらない.ここで他の職種も含めた先行研究に着目すると,IPWの現状が示されるとともに,経験年数との関連を言及した報告が複数ある(出貝裕子ら2021,守屋百合子ら2021).以上から本研究では,回復期リハビリテーション病棟におけるOTのIPW促進に向け,その現状を示すとともに,経験年数との関連を明らかにすることを目的として調査に着手した.
【方法】A県下の回復期リハビリテーション病棟に勤務するOT45名を対象に,郵送による質問紙調査を実施した.質問紙の構成は,回答者の基本情報と,IPWコンピテンシー自己評価尺度大塚モデル改訂版(Otsuka Interprofessional work Competency Scale-Revision24: 以下,OIPCS-24)(國澤尚子ら2017)の24項目(している=4点,時々している=3点,あまりしていない=2点,していない=1点)とした.記述統計からOIPCS-24の現状を把握するとともに,経験年数(6年以下29名,7年以上16名)との関連をχ2検定にて分析した.統計学的有意水準は5%とした.
【倫理的配慮】本研究に際し,研究代表者が勤務する病院責任者に書面で同意を得た.また,OIPCS-24の使用にあたり開発者に許可を得た.質問紙の回答者には,協力は任意であり,回答内容は統計的に処理をして厳重に管理すること,回答と返送により研究同意とみなすことを書面で説明した.加えて,研究の全過程において,ヘルシンキ宣言,人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針を遵守した.なお,発表に際して申告すべき利益相反はない.
【結果】OIPCS-24の各項目の平均値は,項目9「私は他の専門職同士のやりとりで議論の内容が整理できるような方法(図解・板書など)を提案する」(平均値2.2),項目16「私は患者・家族を交えたケア会議の開催を必要に応じて提案する」(平均値2.5),項目10「私は他の専門職同士の議論がかみ合うように橋渡し役をする」(平均値2.6)の順に低かった.χ2検定では,項目10(p=.007),項目12「私は他の専門職同士のやりとりで話しやすい雰囲気をつくる」(p=.036),項目16「私は患者・家族を交えたケア会議の開催を必要に応じて提案する」(p<.001)において有意差を認めた.
【考察】全体で平均値が低かった項目は,多職種を対象とした先行研究と概ね近い傾向であった(出貝裕子ら2021).経験年数の違いにより有意差が出た項目では,項目10は先行研究と同様であったが,項目12,16は異なった結果であった(守屋百合子ら2021).全体で平均値が低かった項目及び,経験年数と関連があった項目にはファシリテーションに分類される項目が多かった.これは,全職種が備えるべき能力ではないが,多くの職種が備えることで連携が促進するとされている(埼玉県立大学編2022).本研究の限界として,記述統計では全体を推測できないこと,対象者数が少なく多変量解析に至らなかったことが挙げられる.以上をもとに発展的研究を行い,OTのIPW促進に向けた教育に繋げていきたい.