[PA-2-17] 麻痺側上肢の使用頻度評価におけるMotor Activity Logと3軸加速度計の役割の違い
脳卒中者の上肢運動麻痺の程度に着目して
【背景】脳卒中発症後のADLやQuality of Lifeに影響する上肢運動麻痺に対し,回復期では機能改善だけでなく,生活での使用頻度向上を目的に介入を行うことが重要である.麻痺側上肢の使用頻度評価としてMotor Activity Log-AOU(以下,MAL)と3軸加速度計(以下,加速度計)を用いた方法があり,それぞれの評価特性は報告されているも,重症度に着目した報告は少ない.そこで本研究は,上肢運動麻痺の程度に着目し,麻痺側上肢の使用頻度評価におけるMALと加速度計の評価特性の違いを縦断的調査から明らかにすることを目的とした.
【方法】対象:2021年10月〜2023年8月の期間,当院回復期リハビリテーション病棟に入院し,認知良好で麻痺側上肢が非利き手である脳卒中発症患者とした.
評価:基本情報に年齢,性別,エジンバラ利き手テスト,入院時の発症経過日及びMini- Mental State Examinationを調査・測定した.上肢機能評価は入院1ヶ月時及び2ヶ月時にFugl-Meyer Assessment上肢(以下,FMA),MALを評価し,上肢活動量評価は加速度計(AMWS020,ATR-Motion社)を両手首に1つずつ装着し,入浴除く9〜17時の連続8時間計測した.なお,入院時から2ヶ月時までの期間は標準的な作業療法を実施した.
データ抽出:計測データから解析ソフト(Sensor Data Analyzer,ATR-Motion社製)を用いて抽出・統制後,各軸の二乗和平方根(√(x^2+y^2+z^2))を算出し,リハビリ時間を除く計測時間の積算量を麻痺側及び非麻痺側上肢それぞれの上肢活動量として定めた.その後,上肢活動量において麻痺側上肢が非麻痺側上肢と比べどの程度活動していたかを側性化係数Latelality Index(以下,LI)を用い算出し,加速度計による麻痺側上肢の使用頻度評価として設定した.LIは-1~1で推移し,0に近いほど左右手の活動量の差が少ない,つまり麻痺側上肢の使用率が高いことを示す.
分析:入院1ヶ月時のFMAとMALを用いた階層別クラスター分析(ward法)から,良好群及び不良群に分け,群間比較にMann-Whitney U検定,各群における各変数の関連性をSpearmanの順位和検定,各群におけるMAL及びLIの評価前後の推移を変化率を用い,それぞれ算出した.
統計:HAD ver.18.0(Shimizu,2016)を使用し,有意水準5%とした.なお,本研究は当院倫理審査委員会の承認の下,対象への同意を得て実施した(R3-リハNo.2).
【結果】分析対象は22名となり,クラスター分析の結果,良好群9名不良群13名に群分けされ,基本情報における群間での有意な差は認められなかった.入院2ヶ月時のMALとLIの関連では,良好群は中等度の有意な相関傾向(r=.62)を認めるも,不良群では有意な相関関係は認めなかった.また変化率では,不良群においてMALの変化率が0にも関わらず,LIが僅かながらも1名が上昇し5名が低下を示した.
【考察】相関分析及び変化率の結果より,重症度の高い対象において,MALと加速度計との異なる評価特性を認め,また加速度計はMALには検出できない微細な変化を捉えた.MALは重症度が高いと床効果を示しやすく(Chuang IC,2017),一方で加速度計は意図した運動以外にも微細な動きを検出すること(Hayward,2016)から,加速度計は活動レベルで変化を認めない重症度の高い対象に適応できる可能性が示唆された.また先行研究より,麻痺側上肢の機能低下が生じやすい要因に,重症度の高さ(Molle,2019),麻痺側上肢が非利き手であること(塚本,2011)が報告されている.そのため,MALでは変化を認めず LIの変化率の低下を認めたことより,加速度計は麻痺側上肢が廃用方向へ進行していないかを評価する役割を担う可能性が示唆された.
【方法】対象:2021年10月〜2023年8月の期間,当院回復期リハビリテーション病棟に入院し,認知良好で麻痺側上肢が非利き手である脳卒中発症患者とした.
評価:基本情報に年齢,性別,エジンバラ利き手テスト,入院時の発症経過日及びMini- Mental State Examinationを調査・測定した.上肢機能評価は入院1ヶ月時及び2ヶ月時にFugl-Meyer Assessment上肢(以下,FMA),MALを評価し,上肢活動量評価は加速度計(AMWS020,ATR-Motion社)を両手首に1つずつ装着し,入浴除く9〜17時の連続8時間計測した.なお,入院時から2ヶ月時までの期間は標準的な作業療法を実施した.
データ抽出:計測データから解析ソフト(Sensor Data Analyzer,ATR-Motion社製)を用いて抽出・統制後,各軸の二乗和平方根(√(x^2+y^2+z^2))を算出し,リハビリ時間を除く計測時間の積算量を麻痺側及び非麻痺側上肢それぞれの上肢活動量として定めた.その後,上肢活動量において麻痺側上肢が非麻痺側上肢と比べどの程度活動していたかを側性化係数Latelality Index(以下,LI)を用い算出し,加速度計による麻痺側上肢の使用頻度評価として設定した.LIは-1~1で推移し,0に近いほど左右手の活動量の差が少ない,つまり麻痺側上肢の使用率が高いことを示す.
分析:入院1ヶ月時のFMAとMALを用いた階層別クラスター分析(ward法)から,良好群及び不良群に分け,群間比較にMann-Whitney U検定,各群における各変数の関連性をSpearmanの順位和検定,各群におけるMAL及びLIの評価前後の推移を変化率を用い,それぞれ算出した.
統計:HAD ver.18.0(Shimizu,2016)を使用し,有意水準5%とした.なお,本研究は当院倫理審査委員会の承認の下,対象への同意を得て実施した(R3-リハNo.2).
【結果】分析対象は22名となり,クラスター分析の結果,良好群9名不良群13名に群分けされ,基本情報における群間での有意な差は認められなかった.入院2ヶ月時のMALとLIの関連では,良好群は中等度の有意な相関傾向(r=.62)を認めるも,不良群では有意な相関関係は認めなかった.また変化率では,不良群においてMALの変化率が0にも関わらず,LIが僅かながらも1名が上昇し5名が低下を示した.
【考察】相関分析及び変化率の結果より,重症度の高い対象において,MALと加速度計との異なる評価特性を認め,また加速度計はMALには検出できない微細な変化を捉えた.MALは重症度が高いと床効果を示しやすく(Chuang IC,2017),一方で加速度計は意図した運動以外にも微細な動きを検出すること(Hayward,2016)から,加速度計は活動レベルで変化を認めない重症度の高い対象に適応できる可能性が示唆された.また先行研究より,麻痺側上肢の機能低下が生じやすい要因に,重症度の高さ(Molle,2019),麻痺側上肢が非利き手であること(塚本,2011)が報告されている.そのため,MALでは変化を認めず LIの変化率の低下を認めたことより,加速度計は麻痺側上肢が廃用方向へ進行していないかを評価する役割を担う可能性が示唆された.