[PA-2-6] 回復期脳卒中後上肢機能障害・過緊張に対し,手指リハビリテーションロボットを適用した一例
【はじめに】近年,上肢のニューロリハビリテーション分野において多くのロボットが開発されている.その中で,前腕の生体信号をAIが解析し,手指の動きをアシストするMELTz®手指リハビリテーションシステム(以下,MELTz®)が開発され,脳卒中後上肢麻痺に対する有効性の検証が散見されるが,回復期でこのロボットを使用した事例についてはほぼ見られない.
今回,自動運動での手指伸展時,屈曲共同運動となり,日常生活での手指の使用が不十分な症例に対しMELTz®を使用して麻痺側手指の随意運動,筋緊張異常の改善を図った.なお,本報告について症例から書面にて同意を得ている.
【症例紹介】症例は70代男性で,既往歴に8回の脳卒中があり,今回,脳幹梗塞を発症後左片麻痺を呈した.発症2病日目より急性期病院に入院,発症35病日目に回復期病院に転院した.身体機能はBrunnstrom recovery stage:上肢Ⅲ・手指Ⅳ,Modified Ashworth Scale(以下,MAS):肩関節屈曲1,伸展1,外転1,内転1+,外旋2,内旋1+,肘関節屈曲1,伸展1+,前腕回外1+,回内0,手関節背屈1+,掌屈0,Fugl-Meyer Assessment(以下,FMA.上肢項目のみ評価):A 22点,B 2点,C 3点,D 4点,合計31点,認知機能はMMSEが29点であった.
【方法】発症49病日目から24日間 MELTz®を使用した.評価はFMA,MASを介入前(以下,初期評価)・介入後(以下,最終評価)・最終介入の5日後(以下,再評価)に実施した.介入頻度は2~3日に1回とし合計9回実施した.介入時間は20分程度であった.課題は1セット10回として対象者の疲労度に合わせ4~8セット実施した.介入以外の時間で作業療法,理学療法,言語療法を各40分~1時間実施した.
【結果】MASは前腕回内の再評価時のみ初期評価0点から1点増加が見られたが,その他の部位・運動は全て初期評価に比べて,最終評価・再評価時に点数の低下が見られ,肩関節外旋,手関節掌屈を除き,すべての項目で0点と正常値を示した. FMAは初期評価時31点から,最終評価時39点,再評価時37点と点数の増加が見られた.項目としては,A-Ⅱa,A-Ⅲ,Cで点数が増加した.
【考察】本症例は,MELTz®を継続的に使用し難易度別に反復訓練を実施することで,初期評価時より筋緊張の低減,麻痺側上肢,手指の随意運動が短期的な効果として得られたと推察される.また,再評価でも持続効果があった.
筋緊張の低減は,MELTz®の特徴である能力に応じた運動の間隔やパターンを調整することで,過剰な筋緊張亢進が引き起こされにくい状態の中,繰り返し運動を実施することができた結果,運動相反抑制による筋緊張の調整が行われたためと推察する.
FMAの向上は,意図した随意運動を繰り返し促通された結果,ニューロンの発火が行われ,神経回路の再生,再構築による運動学習の獲得につながったと考えられる.また,セラピスト,モニター,音声ガイダンスによる視覚,聴覚刺激フィードバックを用いることは,効率の良い運動学習が促されると報告されている(松尾,2016).その結果,短時間での介入においてもMAS,FMAが向上したと考えられる.他の要因として,発症から49日目のため可塑性による自然回復によるものも考えられる.MELTz®の使用により,比較的短期間での筋緊張の低減,機能改善を認めたが,先行研究に示されているMCID(9~12.4点)には達していなかった(Arya,2011)(Hiragami,2019).本症例の介入期間は3週間程度であることが要因の一つとして考えられるが,他に介入の量として,自発的な上肢の使用に必要な420回以上の反復練習に達していなかったことが要因として挙げられる(Han CE,2008).
今回,自動運動での手指伸展時,屈曲共同運動となり,日常生活での手指の使用が不十分な症例に対しMELTz®を使用して麻痺側手指の随意運動,筋緊張異常の改善を図った.なお,本報告について症例から書面にて同意を得ている.
【症例紹介】症例は70代男性で,既往歴に8回の脳卒中があり,今回,脳幹梗塞を発症後左片麻痺を呈した.発症2病日目より急性期病院に入院,発症35病日目に回復期病院に転院した.身体機能はBrunnstrom recovery stage:上肢Ⅲ・手指Ⅳ,Modified Ashworth Scale(以下,MAS):肩関節屈曲1,伸展1,外転1,内転1+,外旋2,内旋1+,肘関節屈曲1,伸展1+,前腕回外1+,回内0,手関節背屈1+,掌屈0,Fugl-Meyer Assessment(以下,FMA.上肢項目のみ評価):A 22点,B 2点,C 3点,D 4点,合計31点,認知機能はMMSEが29点であった.
【方法】発症49病日目から24日間 MELTz®を使用した.評価はFMA,MASを介入前(以下,初期評価)・介入後(以下,最終評価)・最終介入の5日後(以下,再評価)に実施した.介入頻度は2~3日に1回とし合計9回実施した.介入時間は20分程度であった.課題は1セット10回として対象者の疲労度に合わせ4~8セット実施した.介入以外の時間で作業療法,理学療法,言語療法を各40分~1時間実施した.
【結果】MASは前腕回内の再評価時のみ初期評価0点から1点増加が見られたが,その他の部位・運動は全て初期評価に比べて,最終評価・再評価時に点数の低下が見られ,肩関節外旋,手関節掌屈を除き,すべての項目で0点と正常値を示した. FMAは初期評価時31点から,最終評価時39点,再評価時37点と点数の増加が見られた.項目としては,A-Ⅱa,A-Ⅲ,Cで点数が増加した.
【考察】本症例は,MELTz®を継続的に使用し難易度別に反復訓練を実施することで,初期評価時より筋緊張の低減,麻痺側上肢,手指の随意運動が短期的な効果として得られたと推察される.また,再評価でも持続効果があった.
筋緊張の低減は,MELTz®の特徴である能力に応じた運動の間隔やパターンを調整することで,過剰な筋緊張亢進が引き起こされにくい状態の中,繰り返し運動を実施することができた結果,運動相反抑制による筋緊張の調整が行われたためと推察する.
FMAの向上は,意図した随意運動を繰り返し促通された結果,ニューロンの発火が行われ,神経回路の再生,再構築による運動学習の獲得につながったと考えられる.また,セラピスト,モニター,音声ガイダンスによる視覚,聴覚刺激フィードバックを用いることは,効率の良い運動学習が促されると報告されている(松尾,2016).その結果,短時間での介入においてもMAS,FMAが向上したと考えられる.他の要因として,発症から49日目のため可塑性による自然回復によるものも考えられる.MELTz®の使用により,比較的短期間での筋緊張の低減,機能改善を認めたが,先行研究に示されているMCID(9~12.4点)には達していなかった(Arya,2011)(Hiragami,2019).本症例の介入期間は3週間程度であることが要因の一つとして考えられるが,他に介入の量として,自発的な上肢の使用に必要な420回以上の反復練習に達していなかったことが要因として挙げられる(Han CE,2008).