[PA-4-10] 作業療法介入プロセスモデルに課題指向型訓練とTransfer Packageを活用し上肢機能と作業遂行能力の改善を認めた事例報告
【はじめに】右片麻痺を呈した事例に対し,CI療法に準じた介入と作業療法介入プロセスモデル(以下,OTIPM)に基づいた作業療法を実践し,上肢機能の改善と作業遂行能力の向上を認めたため報告する.
【事例紹介】70代,男性,右利き,脳梗塞.現病歴:右片麻痺が出現し前院に救急搬送され,13病日後に当院に転院し,転院当日から作業療法(以下,OT)を開始した.精神面:社交性のある穏やかな性格だが,情緒不安定になり落ち込みやすく精神的脆弱性がみられた.発症前の日常生活動作(以下,ADL):独居で自立しギターを販売する楽器店を営んでいた.事例には研究内容について口頭にて説明を行い,研究協力の同意を得た.
【作業療法評価】運動麻痺:Brunnstrom Stageにて上肢Ⅲ・手指Ⅱ・下肢Ⅳ,Fugl-Meyer Assessment of the Upper Extremity(以下,FMA-UE)22/66点,Motor Activity Log(以下,MAL):Amount of Use(以下,AOU)0.00,Quality of Movement (以下,QOM)0.07で右上肢の使用はほぼ皆無だった.バランス機能:Berg Balance Scale(以下,BBS)30/56点,基本動作は見守り,入浴を除くセルフケアは可能も右上肢の使用はなく,入浴は機械浴,移動は車いす介助であった.Functional Independence Measure (以下,FIM):64/126点(運動41点,認知23点)であった.Aid for Decision-making in Occupation Choice(以下,ADOC)で希望する作業は①屋内の移動,②屋外の移動,③交通機関の利用,④物を持って運ぶこと,⑤手と腕の使用,満足度はすべて1であった.ADOC for Hand(以下,ADOC-H)では「ズボンと下着の上げ下ろし」「背中の洗体」「お椀・コップを持つ」「ペットボトルの開閉」を挙げた.OTIPMの流れに沿って評価し,Assessment of Motor and Process Skills(以下,AMPS)にて課題遂行の観察と遂行分析を行った.選択した課題は「トーストとインスタントコーヒー」「食器を手で洗う」で,ロジット値は運動技能0.6 logits,プロセス技能2.0 logitsであった.
【経過】OTでは右上肢に対し神経筋再教育などの機能指向型訓練とOTIPMに基づき回復モデルにCI療法に準じた課題指向型訓練,Transfer packageにより右上肢の機能改善と作業遂行能力の向上を図った.また代償モデル・習得モデルを用いて右上肢を使用し獲得可能な作業を練習して病棟ADLに般化した.家屋調査を行い自宅生活に必要な具体的作業を評価し動作練習を実施した.
【結果】FMA-UE:34/66点,MAL(AOU/QOM):0.78/0.64,BBS:47/56点,基本動作・セルフケアは右上肢を一部使用し自立,入浴も個浴で自立,移動は屋内T字杖歩行が自立,FIM:112/126点(運動82点,認知30点)であった.2回目のAMPS結果は同課題で運動技能2.0 logits,プロセス技能2.1 logitsで,ADOC(満足度)は①屋内の移動(4/5),②屋外の移動(2/5),③交通機関の利用(1/5),④物を持って運ぶこと(2/5),⑤手と腕の使用(2/5),ADOC-Hに挙げた動作はすべて達成した.
【考察】FMA-UE,MAL-AOU,AMPSの運動技能能力値で臨床的に意義のある改善を認めた.機能指向型訓練と課題指向型訓練で麻痺手の機能改善と作業遂行能力の向上により自己効力感を高め,Transfer packageで右上肢使用を促し生活動作に反映し量的な使用が向上した.またOTIPMに基づく作業に焦点を当てた実践が希望する作業の獲得に寄与したと考えられた.脳卒中後の回復期の作業療法では,CI療法など効果的な上肢機能アプローチで機能改善を図りながら,OTIPMにより作業に焦点を当てた実践を行うことで,機能改善と作業遂行能力向上の両立を図ることができる可能性が示唆された.
【事例紹介】70代,男性,右利き,脳梗塞.現病歴:右片麻痺が出現し前院に救急搬送され,13病日後に当院に転院し,転院当日から作業療法(以下,OT)を開始した.精神面:社交性のある穏やかな性格だが,情緒不安定になり落ち込みやすく精神的脆弱性がみられた.発症前の日常生活動作(以下,ADL):独居で自立しギターを販売する楽器店を営んでいた.事例には研究内容について口頭にて説明を行い,研究協力の同意を得た.
【作業療法評価】運動麻痺:Brunnstrom Stageにて上肢Ⅲ・手指Ⅱ・下肢Ⅳ,Fugl-Meyer Assessment of the Upper Extremity(以下,FMA-UE)22/66点,Motor Activity Log(以下,MAL):Amount of Use(以下,AOU)0.00,Quality of Movement (以下,QOM)0.07で右上肢の使用はほぼ皆無だった.バランス機能:Berg Balance Scale(以下,BBS)30/56点,基本動作は見守り,入浴を除くセルフケアは可能も右上肢の使用はなく,入浴は機械浴,移動は車いす介助であった.Functional Independence Measure (以下,FIM):64/126点(運動41点,認知23点)であった.Aid for Decision-making in Occupation Choice(以下,ADOC)で希望する作業は①屋内の移動,②屋外の移動,③交通機関の利用,④物を持って運ぶこと,⑤手と腕の使用,満足度はすべて1であった.ADOC for Hand(以下,ADOC-H)では「ズボンと下着の上げ下ろし」「背中の洗体」「お椀・コップを持つ」「ペットボトルの開閉」を挙げた.OTIPMの流れに沿って評価し,Assessment of Motor and Process Skills(以下,AMPS)にて課題遂行の観察と遂行分析を行った.選択した課題は「トーストとインスタントコーヒー」「食器を手で洗う」で,ロジット値は運動技能0.6 logits,プロセス技能2.0 logitsであった.
【経過】OTでは右上肢に対し神経筋再教育などの機能指向型訓練とOTIPMに基づき回復モデルにCI療法に準じた課題指向型訓練,Transfer packageにより右上肢の機能改善と作業遂行能力の向上を図った.また代償モデル・習得モデルを用いて右上肢を使用し獲得可能な作業を練習して病棟ADLに般化した.家屋調査を行い自宅生活に必要な具体的作業を評価し動作練習を実施した.
【結果】FMA-UE:34/66点,MAL(AOU/QOM):0.78/0.64,BBS:47/56点,基本動作・セルフケアは右上肢を一部使用し自立,入浴も個浴で自立,移動は屋内T字杖歩行が自立,FIM:112/126点(運動82点,認知30点)であった.2回目のAMPS結果は同課題で運動技能2.0 logits,プロセス技能2.1 logitsで,ADOC(満足度)は①屋内の移動(4/5),②屋外の移動(2/5),③交通機関の利用(1/5),④物を持って運ぶこと(2/5),⑤手と腕の使用(2/5),ADOC-Hに挙げた動作はすべて達成した.
【考察】FMA-UE,MAL-AOU,AMPSの運動技能能力値で臨床的に意義のある改善を認めた.機能指向型訓練と課題指向型訓練で麻痺手の機能改善と作業遂行能力の向上により自己効力感を高め,Transfer packageで右上肢使用を促し生活動作に反映し量的な使用が向上した.またOTIPMに基づく作業に焦点を当てた実践が希望する作業の獲得に寄与したと考えられた.脳卒中後の回復期の作業療法では,CI療法など効果的な上肢機能アプローチで機能改善を図りながら,OTIPMにより作業に焦点を当てた実践を行うことで,機能改善と作業遂行能力向上の両立を図ることができる可能性が示唆された.