[PA-7-15] 脳出血急性期の意識障害者に対する作業療法実施時間の増加による効果
【目的】脳出血急性期に頻発する意識障害は,脳出血により低下した心身機能や活動能力に悪影響を及ぼし,これらを更に低下させてしまうため,意識障害に対し積極的な作業療法(Occupational Therapy:OT)を行う必要がある.先に我々は,意識障害改善とリハ時間増加が関連することを報告しており(松本ら,2024),これらの因果関係を検証する必要があるが,意識障害に対するリハ時間増加の効果を対照群と比較検証した報告は無い.また,我々は,リハの中でも,特にOT時間の増加が日常生活動作能力に好影響を与えることを報告している(松本ら,2024).この日常生活動作能力と意識レベルは関連する(Zafonte, et al, 1996)ことから,OT時間の増加は意識障害改善にも有用である可能性がある.そこで,本研究は,脳出血患者の意識障害に対し,OT時間の増加による効果を検証することを目的とした.なお,本研究は当院倫理委員会の承認を得て実施した(整理番号:2232−1).
【方法】研究デザインは,非ランダム化比較試験とした.実験群では対照群よりもOT時間を20分増やした.OT時間の増加は研究開始後に行ったが,対照群のデータは過去の診療録から収集した.介入期間は,リハ開始日(発症翌日)から2週間とした.対象は,当院でリハを行ったJCSⅡ桁の意識障害がある脳出血患者86名(各群43名)とした.調査項目は,先行研究に基づき,アウトカムに関連すると考えられるベースライン特性17項目とした.一次アウトカムはJCSⅠ桁への改善率および改善までの期間とした.二次アウトカムはリハ開始時と比較した2週後のNational Institute of Health Stroke Scale(NIHSS)およびBarthel Index(BI)の変化量,最終のNIHSSおよびBI,増悪の有無とした.統計解析は,傾向スコアマッチングにより2群間のベースラインを調整後に,ログランク検定などを用いて二群間比較を行った.傾向スコアの算出には,ベースライン特性17項目を独立変数,作業療法実施時間増加の有無を従属変数とした多重ロジスティック回帰分析を行った.
【結果】傾向スコアマッチングにより各群26名が抽出された.一次アウトカムに関して,累積意識障害残存率は,実験群でより低下している様子が観察されたが,2群間で有意差は認めなかった(介入後14日時点の累積意識障害残存率:実験群32.0%,対照群57.7%,p=0.131).二次アウトカムには有意差を認めなかった.
【考察】本研究では,OT時間を20分増やすことによる意識障害改善効果を検討した.その結果,累積意識障害残存率は,実験群でより低下している様子が観察されたことから,OT時間の増加は意識障害改善に好影響を及ぼす可能性が考えられた.一方で,実験群と対照群に有意差を認めなかった.この理由は,サンプルサイズが不十分であった可能性が考えられる.サンプルサイズは,解析にログランク検定を用いることを想定し,各群43例とした.これは,先に対照群のデータを後方視的に収集し,対照群の累積意識障害残存率が約0.6であったため,実験群では0.3の累積意識障害残存率を期待し,αエラー=0.05,検出力(1−β)=0.80に設定し算出した.しかし,収集した実験群と対照群のベースライン特性は,一部不均質であった.そのため,傾向スコアマッチングによりバランスを調整したが,サンプルサイズが小さくなったことで検出力が低下したと考えられる.本研究結果から再度サンプルサイズを計算すると,各群58例が必要であったことから,サンプルサイズを増やすことで,OT時間の増加による意識障害改善効果を示せる可能性が考えられた.
【方法】研究デザインは,非ランダム化比較試験とした.実験群では対照群よりもOT時間を20分増やした.OT時間の増加は研究開始後に行ったが,対照群のデータは過去の診療録から収集した.介入期間は,リハ開始日(発症翌日)から2週間とした.対象は,当院でリハを行ったJCSⅡ桁の意識障害がある脳出血患者86名(各群43名)とした.調査項目は,先行研究に基づき,アウトカムに関連すると考えられるベースライン特性17項目とした.一次アウトカムはJCSⅠ桁への改善率および改善までの期間とした.二次アウトカムはリハ開始時と比較した2週後のNational Institute of Health Stroke Scale(NIHSS)およびBarthel Index(BI)の変化量,最終のNIHSSおよびBI,増悪の有無とした.統計解析は,傾向スコアマッチングにより2群間のベースラインを調整後に,ログランク検定などを用いて二群間比較を行った.傾向スコアの算出には,ベースライン特性17項目を独立変数,作業療法実施時間増加の有無を従属変数とした多重ロジスティック回帰分析を行った.
【結果】傾向スコアマッチングにより各群26名が抽出された.一次アウトカムに関して,累積意識障害残存率は,実験群でより低下している様子が観察されたが,2群間で有意差は認めなかった(介入後14日時点の累積意識障害残存率:実験群32.0%,対照群57.7%,p=0.131).二次アウトカムには有意差を認めなかった.
【考察】本研究では,OT時間を20分増やすことによる意識障害改善効果を検討した.その結果,累積意識障害残存率は,実験群でより低下している様子が観察されたことから,OT時間の増加は意識障害改善に好影響を及ぼす可能性が考えられた.一方で,実験群と対照群に有意差を認めなかった.この理由は,サンプルサイズが不十分であった可能性が考えられる.サンプルサイズは,解析にログランク検定を用いることを想定し,各群43例とした.これは,先に対照群のデータを後方視的に収集し,対照群の累積意識障害残存率が約0.6であったため,実験群では0.3の累積意識障害残存率を期待し,αエラー=0.05,検出力(1−β)=0.80に設定し算出した.しかし,収集した実験群と対照群のベースライン特性は,一部不均質であった.そのため,傾向スコアマッチングによりバランスを調整したが,サンプルサイズが小さくなったことで検出力が低下したと考えられる.本研究結果から再度サンプルサイズを計算すると,各群58例が必要であったことから,サンプルサイズを増やすことで,OT時間の増加による意識障害改善効果を示せる可能性が考えられた.