第58回日本作業療法学会

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ポスター

脳血管疾患等

[PA-7] ポスター:脳血管疾患等 7

Sun. Nov 10, 2024 8:30 AM - 9:30 AM ポスター会場 (大ホール)

[PA-7-4] 当院における急性期病院から回復期病院への転院時期の差が及ぼす影響

大内 知美1, 井上 拓保2,3, 千賀 亜季子2, 髙橋 華菜子2, 永田 康佑2 (1.聖隷浜松病院  リハビリテーション部, 2.昭和大学藤が丘病院 リハビリテーション室, 3.昭和大学 保健医療学部リハビリテーション学科理学療法学専攻)

<背景>
2021年から2022年にかけて昭和大学藤が丘病院(以降当院)から本学附属の回復期病院へ転院した脳梗塞患者の平均在院日数は27.6日であり, 同じ機能を有する他施設と比較するとやや遅い傾向にある. 先行研究より, 在院日数の第一四分位数である17日未満で回復期病棟に移った群でADLが改善したという報告がある. そのため当院の脳梗塞患者を第一四分位数の18日で2 群に分類し, 回復期病院への転院時期の差がBarthel Index(以降BI)とActive Basic Movement Scale(以降ABMS), 最終的な転帰先にどのような影響を及ぼしているのかを検証し報告をする.
<方法>
研究デザインはカルテよりデータを抽出する後方視的研究とした. 対象は当院に2021年1月から2022年12月に当院に入院し, 本学附属の回復期病院に転院した脳梗塞の患者とした. データ欠損, 転院後の状態不良での再入院, 最終転帰先が死亡の患者は除外した患者61例が抽出された. 対象を当院在院日数18日未満(以降,転院早期群)と, 18日以上(以降,転院遅延群)の2群に分類した. 調査項目は年齢, 性別, 当院入院時から回復期病院転院時(以降急性期)のBI利得とABMSの改善度, 回復期転院時から回復期退院時(以降回復期)のBI利得とABMSの改善度, 最終的な転帰先とした. 統計学的解析は, カイ2乗検定, Mann-WhitneyのU検定を使用し, 有意水準は5%で統計処理を行った. 倫理的配慮として当院の倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号:2023-220-B).
<結果>
対象61例の平均年齢77.1±9.1歳で男性37例, 女性24例であった. 転院早期群が12例(平均年齢74.9±10.3歳, 男性8例 女性4例), そのうち自宅退院が10例であった.転院遅延群が49例(平均年齢77.7±8.8歳, 男性29例, 女性20例), そのうち自宅退院が29例であった. 年齢と性別, 最終的な転帰先に有意差は認めなかった. 急性期BI利得(転院早期群:26.3±18.6点vs転院遅延群:31.5±21.2点), 回復期BI利得(27.0±15.0点vs19.7±18.3点)とどちらにも有意差は認めなかった. 急性期ABMSの改善度(9.0±4.7点vs11.7±6.1点)に有意な差は認めなかった. 一方で回復期でのABMSの改善度(8.2±4.8点vs3.9±4.8点)には有意な差を認めた.
<考察>
本研究では, 転院時期の差に着目をしてBIとABMS, 最終的な転帰先に及ぼす影響を検証した. 転院早期群は遅延群と比較し, 回復期でのABMS改善度に有意差を認めた. 先行研究にて, 脳卒中患者の急性期病棟在院日数を短縮することが機能予後改善につながることや亜急性期リハビリテーション以降は回復期において訓練時間を長くすることが重要であることが提唱されており, 早期転院は身体機能向上に効果があることが示唆される. 一方で急性期のBI利得, ABMSの改善度に有意差を認めなかった要因として, 患者自身の全身状態の影響や安静度制限, 回復期病院転院が適応となる身体機能や基本動作能力の低さがあるのではないかと考える. 回復期のBI利得の有意差を認めなかった要因の一つとして, BIで評価できない高次脳機能障害の影響で身体機能が向上しても日常生活動作には介助が必要であった可能性が考えられる. しかし本研究は, 過去1年間の後方視的研究のため61例と症例数が少なく, 高い検定力を得るにはサンプルサイズが不足していた. 今後は, 調査期間の延長と病態重症度や安静度制限, 高次脳機能障害などの調査項目の追加を行う. さらに, 単変量解析だけでなく多変量解析にて急性期病院から回復期病院への転院時期の差が, どのような患者にABMSの改善をもたらすのか検証したい.