[PA-7-9] 神経筋電気刺激および課題指向型訓練の併用と協調性訓練による重度上肢機能障害に対するアプローチ
【はじめに】脳卒中患者に対するリハビリテーション治療で,神経筋電気刺激(NMES)は弛緩性の病態に対して筋出力向上に対する有効性が示され,Fugl-Meyer assesment(FMA)上肢項目の改善を認めたと報告がある.また,課題指向型訓練は上肢機能の向上と生活における使用頻度を増加させる.今回,重度左上肢機能障害と体幹失調を呈した症例に対し,NMESと課題指向型訓練の併用と協調性訓練を実施した結果,補助手として機能し,ADL・IADLを再獲得したため報告する.
【症例紹介】右橋梗塞により左片麻痺を呈した70歳代女性.右利きで病前ADLは自立.発症より20病日目にリハビリテーション治療目的で当院へ入院した.入院時,意識清明で改訂長谷川式簡易知能評価スケールは30点,高次脳機能障害なし.指鼻試験と踵膝試験で右上下肢陽性,躯幹失調検査でステージⅡの失調症状を認めた.麻痺側 Brunnstrom Recovery Stage(BRS)上肢Ⅲ手指Ⅱ下肢Ⅲ,左肩関節裂隙が1横指開大し翼状肩甲も認めた.徒手筋力検査(MMT:右/左)三角筋5/3−,上腕二頭筋5/2,長橈側手根伸筋5/1,上腕三頭筋5/1,橈側手根屈筋5/1,深指屈筋5/1で FMAの上肢運動項目は8点,簡易上肢機能検査(STEF)右上肢97点,左上肢実施できず.日常生活での麻痺側上肢参加状況はMotor Activity Log(MAL)Amount of Use(AOU)0点,Quality of Movement(QOM)0点,Functional Independence Measure(FIM)79点(運動項目44点,認知項目35点)であった.今回の発表にあたり本人に趣旨を説明して口頭で同意を得た.
【治療経過】左肩甲骨周囲筋の筋力増強,左肩関節亜脱臼と左上肢筋収縮を改善するためNMESを使用した.左上肢随意運動の改善に合わせて,運動範囲を拡大するため上肢と手指の筋力訓練,Shaping,Task practice等の課題指向型訓練を実施した.また,体幹失調が肩甲帯の不安定性の要因と考え,協調性を改善するため床上動作訓練を実施した.さらに,病棟生活で左上肢の使用機会を増やすように促し,自宅生活を想定して掃除や洗濯,調理等の活動を実施できるよう方法を検討しながら訓練を実施した.
【結果】退院時,BRS上肢Ⅴ手指Ⅴ下肢Ⅳ,左肩関節亜脱臼と左翼状肩甲は改善.MMTは三角筋5/4,上腕二頭筋5/4,長橈側手根伸筋5/4,上腕三頭筋5/3+,橈側手根屈筋5/3+,深指屈筋5/3+と麻痺側で増強し,体幹失調も改善した.FMA上肢運動項目が50点,STEFが左上肢71点,右上肢97点に改善した.MALのAOUが2.25点,QOMが1.88点.FIMが117点(運動項目82点,認知項目35点)に改善した.生活内で左上肢の使用頻度が増え,掃除,洗濯,調理活動も可能となり95病日目に自宅へ退院した.
【考察】運動麻痺の回復ステージ理論において,急性期の回復メカニズムは残存する皮質脊髄路を刺激し興奮性を高めることで,麻痺の回復を促進できるとされ,電気刺激による求心性入力が興奮性を高めることが明らかとなってきている.本症例は,亜急性期からではあるが電気刺激により皮質脊髄路を刺激したことで麻痺肢の随意運動改善に影響したと考える.さらに,上肢機能の改善に合わせ課題指向型訓練を追加し運動範囲を拡大したことで,上肢機能がより改善したと考える.また,体幹失調の改善が肩甲帯の安定性に繋がり,上肢の操作性が向上したことも要因と考える.当初は「手が使えるようになりたい」と目標を掲げていたが,目標が漠然としていて麻痺側上肢を実際に使おうとしていなかった.上肢機能の改善に応じて生活目標を具体的に再設定し,麻痺側上肢の使用場面を明確にしたことで生活内で使用する頻度が増え,汎化が促進された結果,ADL・IADLを再獲得できたと考える.
【症例紹介】右橋梗塞により左片麻痺を呈した70歳代女性.右利きで病前ADLは自立.発症より20病日目にリハビリテーション治療目的で当院へ入院した.入院時,意識清明で改訂長谷川式簡易知能評価スケールは30点,高次脳機能障害なし.指鼻試験と踵膝試験で右上下肢陽性,躯幹失調検査でステージⅡの失調症状を認めた.麻痺側 Brunnstrom Recovery Stage(BRS)上肢Ⅲ手指Ⅱ下肢Ⅲ,左肩関節裂隙が1横指開大し翼状肩甲も認めた.徒手筋力検査(MMT:右/左)三角筋5/3−,上腕二頭筋5/2,長橈側手根伸筋5/1,上腕三頭筋5/1,橈側手根屈筋5/1,深指屈筋5/1で FMAの上肢運動項目は8点,簡易上肢機能検査(STEF)右上肢97点,左上肢実施できず.日常生活での麻痺側上肢参加状況はMotor Activity Log(MAL)Amount of Use(AOU)0点,Quality of Movement(QOM)0点,Functional Independence Measure(FIM)79点(運動項目44点,認知項目35点)であった.今回の発表にあたり本人に趣旨を説明して口頭で同意を得た.
【治療経過】左肩甲骨周囲筋の筋力増強,左肩関節亜脱臼と左上肢筋収縮を改善するためNMESを使用した.左上肢随意運動の改善に合わせて,運動範囲を拡大するため上肢と手指の筋力訓練,Shaping,Task practice等の課題指向型訓練を実施した.また,体幹失調が肩甲帯の不安定性の要因と考え,協調性を改善するため床上動作訓練を実施した.さらに,病棟生活で左上肢の使用機会を増やすように促し,自宅生活を想定して掃除や洗濯,調理等の活動を実施できるよう方法を検討しながら訓練を実施した.
【結果】退院時,BRS上肢Ⅴ手指Ⅴ下肢Ⅳ,左肩関節亜脱臼と左翼状肩甲は改善.MMTは三角筋5/4,上腕二頭筋5/4,長橈側手根伸筋5/4,上腕三頭筋5/3+,橈側手根屈筋5/3+,深指屈筋5/3+と麻痺側で増強し,体幹失調も改善した.FMA上肢運動項目が50点,STEFが左上肢71点,右上肢97点に改善した.MALのAOUが2.25点,QOMが1.88点.FIMが117点(運動項目82点,認知項目35点)に改善した.生活内で左上肢の使用頻度が増え,掃除,洗濯,調理活動も可能となり95病日目に自宅へ退院した.
【考察】運動麻痺の回復ステージ理論において,急性期の回復メカニズムは残存する皮質脊髄路を刺激し興奮性を高めることで,麻痺の回復を促進できるとされ,電気刺激による求心性入力が興奮性を高めることが明らかとなってきている.本症例は,亜急性期からではあるが電気刺激により皮質脊髄路を刺激したことで麻痺肢の随意運動改善に影響したと考える.さらに,上肢機能の改善に合わせ課題指向型訓練を追加し運動範囲を拡大したことで,上肢機能がより改善したと考える.また,体幹失調の改善が肩甲帯の安定性に繋がり,上肢の操作性が向上したことも要因と考える.当初は「手が使えるようになりたい」と目標を掲げていたが,目標が漠然としていて麻痺側上肢を実際に使おうとしていなかった.上肢機能の改善に応じて生活目標を具体的に再設定し,麻痺側上肢の使用場面を明確にしたことで生活内で使用する頻度が増え,汎化が促進された結果,ADL・IADLを再獲得できたと考える.