[PA-9-15] 「生活の見通し」が目標設定の可否に及ぼす影響:横断研究
【はじめに】作業に焦点を当てた目標設定は重要であるが,急性期の入院患者における調査では,初回面接で目標設定ができた割合は40%であり,できない理由の一つは退院後の生活に対する見通しが持てないことであったとされている(石川ら,2021).しかし,見通しを持てることが,目標設定と関係するかは定かでない.
【目的】見通しの程度が目標設定の可否に及ぼす影響を明らかにすること,また目標設定ができなかった場合の理由を見通しの程度別に整理して明らかにすることとした.
【方法】研究デザイン:横断研究を採用した.倫理的配慮:当院倫理委員会の承認を受けて実施し(承認番号22-14),対象者からは書面で同意を得た.対象:2023年4月~12月に当院の一般病棟または地域包括ケア病棟に入院し研究代表者が担当した者とし,疎通不良の者を除外した.手順:初期評価で面接,観察,検査を実施後に見通しを持てる程度を確認した上で,ADOCを用いた目標設定を行なった.見通しの程度は「退院後の生活に見通しが持てましたか?」と質問し,4件法で回答を得た(4:とてもできた,3:ややできた,2:あまりできない,1:全くできない).また目標設定の可否はADOCの手順を完遂できたか否かで判断し,目標設定が不可の場合はその理由を聴取した.分析方法と統計処理:目標設定の可否で可能群と不可群に分類し,年齢,性別,FIM,MMSE,見通しの程度を比較するため尺度に応じて検定した.その後,目標設定の可否を目的変数とし,見通しの程度を説明変数としたロジスティック回帰分析を行なった(共変量:FIM,MMSE).統計ソフトはEZRを用い,有意水準は5%とした.また目標設定の不可理由は,内容の類似性で分類した上で,見通しの程度が高い群(4件法の4-3)と低い群(4件法の2-1)のそれぞれにおいて割合を算出した.
【結果】研究対象者99名のうち15名を除外した84名を分析対象とした.年齢は75.9±10.6歳,性別は男性63%・女性37%,疾患内訳は脳疾患18%・整形疾患29%・神経難病22%・内部疾患31%,FIMは84.8±25.6点,MMSEは25.6±4.1点であり,見通しの程度は中央値(四分位範囲)で3(2-4)であった.目標設定の可否:可能群(64%)/不可群(36%)の比較は,年齢が75.7±10.4歳/76.1±11.0歳,性別(男)が59%/70%,FIMが85.4±22.6点/83.6±27.1点,MMSEが25.9±3.9点/25.1±4.5点,見通しの程度が3(3-4)/2(1-3.75)であり,有意差を認めたのは見通しの程度のみであった.ロジスティック回帰分析の結果,見通しの程度はFIMとMMSEで調整しても目標設定の可否に影響を及ぼした(OR=3.0,95%CI=1.68-5.36,p<0.001).目標設定の不可理由:見通しの程度が高い群は(n=10),「困らないことが分かったから特にない」といった”希望の希薄”が60%,「生活上の困り事はないから筋トレだけしてほしい」といった”機能訓練の希望”が40%であり,見通しの程度が低い群は(n=20),「先の見通しが立たないから」といった”見通しの希薄”が90%,「どのくらい動けるか分からないから」といった”能力認識の不足”が10%であった.
【考察】見通しの程度は目標設定の可否に影響することが明らかになり,作業に焦点を当てた目標設定を促進するためには,生活の見通しを持てるように関わることが重要であると考えた.また見通しの程度が高くても目標設定ができない理由の一つは「困らないことが分かったから」であり,その場合は目標設定の可否よりもそれまでのプロセスを重視することが重要であると考えた.
【目的】見通しの程度が目標設定の可否に及ぼす影響を明らかにすること,また目標設定ができなかった場合の理由を見通しの程度別に整理して明らかにすることとした.
【方法】研究デザイン:横断研究を採用した.倫理的配慮:当院倫理委員会の承認を受けて実施し(承認番号22-14),対象者からは書面で同意を得た.対象:2023年4月~12月に当院の一般病棟または地域包括ケア病棟に入院し研究代表者が担当した者とし,疎通不良の者を除外した.手順:初期評価で面接,観察,検査を実施後に見通しを持てる程度を確認した上で,ADOCを用いた目標設定を行なった.見通しの程度は「退院後の生活に見通しが持てましたか?」と質問し,4件法で回答を得た(4:とてもできた,3:ややできた,2:あまりできない,1:全くできない).また目標設定の可否はADOCの手順を完遂できたか否かで判断し,目標設定が不可の場合はその理由を聴取した.分析方法と統計処理:目標設定の可否で可能群と不可群に分類し,年齢,性別,FIM,MMSE,見通しの程度を比較するため尺度に応じて検定した.その後,目標設定の可否を目的変数とし,見通しの程度を説明変数としたロジスティック回帰分析を行なった(共変量:FIM,MMSE).統計ソフトはEZRを用い,有意水準は5%とした.また目標設定の不可理由は,内容の類似性で分類した上で,見通しの程度が高い群(4件法の4-3)と低い群(4件法の2-1)のそれぞれにおいて割合を算出した.
【結果】研究対象者99名のうち15名を除外した84名を分析対象とした.年齢は75.9±10.6歳,性別は男性63%・女性37%,疾患内訳は脳疾患18%・整形疾患29%・神経難病22%・内部疾患31%,FIMは84.8±25.6点,MMSEは25.6±4.1点であり,見通しの程度は中央値(四分位範囲)で3(2-4)であった.目標設定の可否:可能群(64%)/不可群(36%)の比較は,年齢が75.7±10.4歳/76.1±11.0歳,性別(男)が59%/70%,FIMが85.4±22.6点/83.6±27.1点,MMSEが25.9±3.9点/25.1±4.5点,見通しの程度が3(3-4)/2(1-3.75)であり,有意差を認めたのは見通しの程度のみであった.ロジスティック回帰分析の結果,見通しの程度はFIMとMMSEで調整しても目標設定の可否に影響を及ぼした(OR=3.0,95%CI=1.68-5.36,p<0.001).目標設定の不可理由:見通しの程度が高い群は(n=10),「困らないことが分かったから特にない」といった”希望の希薄”が60%,「生活上の困り事はないから筋トレだけしてほしい」といった”機能訓練の希望”が40%であり,見通しの程度が低い群は(n=20),「先の見通しが立たないから」といった”見通しの希薄”が90%,「どのくらい動けるか分からないから」といった”能力認識の不足”が10%であった.
【考察】見通しの程度は目標設定の可否に影響することが明らかになり,作業に焦点を当てた目標設定を促進するためには,生活の見通しを持てるように関わることが重要であると考えた.また見通しの程度が高くても目標設定ができない理由の一つは「困らないことが分かったから」であり,その場合は目標設定の可否よりもそれまでのプロセスを重視することが重要であると考えた.