[PA-9-17] 急性期においてADOCを使用した目標設定と作業療法実践により, 作業満足度が向上した事例
【はじめに】今回, 短期間で脳梗塞の再発を繰り返している事例を担当し, 事例と作業療法士間での目標の共有に難渋した. 目標のすり合わせを行う手段として作業選択意思決定支援ソフト(以下:ADOC)を用いた. その結果, 段階的な作業の獲得に繋がり, 作業に対する満足度が向上した為, 以下に報告する. なお, 発表に際し事例から同意を得た.
【事例紹介】80代男性, 右利き. 妻と2人暮らし. 仕事は眼科医. アテローム血栓性脳梗塞を発症し, 当院にて保存加療開始. 構音障害と右片麻痺を認めた. 今回の発症から数か月前にも二度脳梗塞を発症し, リハビリの後, 自宅退院と復職を果たしていた. 事例から表出されるのは「ひとまず仕事に行かないと」, といった内容であった.
【作業療法評価】2病日より作業療法開始. 構音障害による発話明瞭度の低下を認めていたが, コミュニケーションは可能. MMSE28点(二回目の脳梗塞発症時と変化なし), 病識や礼節は保たれていた. SIAS44点, FMAの上肢評価13点, BBS26点, FIM83点, 基本動作は軽介助であった. これまでの脳梗塞と比較して, 重度の右片麻痺を呈しており, ADLに軽度~中等度の介助を要する状態であった. ADOCでは,更衣と排泄の項目において緊急度と重要度が高い, という結果になり, 満足度は【更衣(満足度2)】, 【排泄(満足度3)】であった.
【方針】事例と作業療法士間での目標のすり合わせの為にADOCを使用した面接を行った. ホープである仕事も大切であるが, 初期評価の時点で緊急度と重要度が高いのは特に更衣と排泄であるということが分かり, 共有した. 事例は理解し, 気づきが生まれ, 回復期病院への転院までの期間はこの2点に焦点を当て, 「トイレでの排泄時に見守りのもと左手を使用して下衣の着衣ができる」を目標に, 作業療法介入を行った.
【経過】初期は, ズボンの引き上げの際に右後方へのふらつきを認め, 自身でのズボンの着衣が困難であった. 事例からは, 「トイレは一人で出来るようにしたい」, 「ミギ手が使えずヒダリ手だけでパンツを上げるのが難しいから看護師さんに手伝ってもらっている」という訴えがあった. 1週目は動的バランスの改善に向けて, 右上下肢・体幹の機能訓練, 立位バランス訓練, リーチ動作訓練を中心に実施した. 加えて, 病棟看護師と連携しながら, おむつの変更やセパレート型のパジャマへの移行を行い, より普段の生活に近い環境への調整を行った. 2週目は上記の訓練と並行して, 実動作訓練を中心に実施した. 安全に動作を行えるように手すりを把持するタイミング等を指導し, 適宜フィードバックをしながら訓練を継続した. 転院直前の時点では, ふらつき無く下衣の引き上げが可能となり, 病棟内では見守りにてトイレ動作が可能となった. 事例からは, 「トイレは自分で出来るようになって嬉しい」といった発言があった.
【結果】14病日の評価結果は, SIAS52点, FMAの上肢評価20点, BBS35点, FIM101点, 基本動作は見守りにて可能となった. 病棟内では付き添い歩行にて自室のトイレまで移動し, 下衣操作・清拭は見守りにて可能となった. ADOCの最終評価は, 【更衣(満足度4)】, 【排泄(満足度4)】であった.
【考察】友利らは, 急性期作業療法においては協働的に目標設定を行うことが困難なケースもある, と述べている. ADOCは, 急性期における短期間での介入においても, 本人の意思を尊重しながら優先的に達成すべき目標の共有に有効であったと考える. また, 急性期を脱した後も, 段階的な目標を共有して介入することが重要であると考える.
【事例紹介】80代男性, 右利き. 妻と2人暮らし. 仕事は眼科医. アテローム血栓性脳梗塞を発症し, 当院にて保存加療開始. 構音障害と右片麻痺を認めた. 今回の発症から数か月前にも二度脳梗塞を発症し, リハビリの後, 自宅退院と復職を果たしていた. 事例から表出されるのは「ひとまず仕事に行かないと」, といった内容であった.
【作業療法評価】2病日より作業療法開始. 構音障害による発話明瞭度の低下を認めていたが, コミュニケーションは可能. MMSE28点(二回目の脳梗塞発症時と変化なし), 病識や礼節は保たれていた. SIAS44点, FMAの上肢評価13点, BBS26点, FIM83点, 基本動作は軽介助であった. これまでの脳梗塞と比較して, 重度の右片麻痺を呈しており, ADLに軽度~中等度の介助を要する状態であった. ADOCでは,更衣と排泄の項目において緊急度と重要度が高い, という結果になり, 満足度は【更衣(満足度2)】, 【排泄(満足度3)】であった.
【方針】事例と作業療法士間での目標のすり合わせの為にADOCを使用した面接を行った. ホープである仕事も大切であるが, 初期評価の時点で緊急度と重要度が高いのは特に更衣と排泄であるということが分かり, 共有した. 事例は理解し, 気づきが生まれ, 回復期病院への転院までの期間はこの2点に焦点を当て, 「トイレでの排泄時に見守りのもと左手を使用して下衣の着衣ができる」を目標に, 作業療法介入を行った.
【経過】初期は, ズボンの引き上げの際に右後方へのふらつきを認め, 自身でのズボンの着衣が困難であった. 事例からは, 「トイレは一人で出来るようにしたい」, 「ミギ手が使えずヒダリ手だけでパンツを上げるのが難しいから看護師さんに手伝ってもらっている」という訴えがあった. 1週目は動的バランスの改善に向けて, 右上下肢・体幹の機能訓練, 立位バランス訓練, リーチ動作訓練を中心に実施した. 加えて, 病棟看護師と連携しながら, おむつの変更やセパレート型のパジャマへの移行を行い, より普段の生活に近い環境への調整を行った. 2週目は上記の訓練と並行して, 実動作訓練を中心に実施した. 安全に動作を行えるように手すりを把持するタイミング等を指導し, 適宜フィードバックをしながら訓練を継続した. 転院直前の時点では, ふらつき無く下衣の引き上げが可能となり, 病棟内では見守りにてトイレ動作が可能となった. 事例からは, 「トイレは自分で出来るようになって嬉しい」といった発言があった.
【結果】14病日の評価結果は, SIAS52点, FMAの上肢評価20点, BBS35点, FIM101点, 基本動作は見守りにて可能となった. 病棟内では付き添い歩行にて自室のトイレまで移動し, 下衣操作・清拭は見守りにて可能となった. ADOCの最終評価は, 【更衣(満足度4)】, 【排泄(満足度4)】であった.
【考察】友利らは, 急性期作業療法においては協働的に目標設定を行うことが困難なケースもある, と述べている. ADOCは, 急性期における短期間での介入においても, 本人の意思を尊重しながら優先的に達成すべき目標の共有に有効であったと考える. また, 急性期を脱した後も, 段階的な目標を共有して介入することが重要であると考える.