[PA-9-7] 箸操作のフォーム・操作性における3点箸の有効性の検証
【はじめに】
箸操作訓練には課題難易度を下げ学習効果を高めることを目的にばね箸などの自助具の使用が推奨される.一方で普通箸の操作獲得には自助具で段階付けした訓練よりも普通箸のみで訓練した方が有効であるとの報告もあり,訓練に使用する箸の選択に迷う経験がある.今回は指の接触面の分かりやすいしつけ箸(以下3点箸)と,自助具を使用し箸操作のフォーム・操作性に与える効果の違いについて検証した.
【方法】
本研究では2種類の箸でフォーム・操作性の比較を行った.一方はばね箸様の自助具である「箸蔵くん」,もう一方は指の接触位置にくぼみのある「3点箸」を使用した.3点箸とは伝統的な箸の持ち方の習得を目的とした箸である.普通箸を用いた操作訓練において1~3指の接触面の指導に難渋する経験が多いため,普通箸に形状が近いが接触面の手がかりがある3点箸を検証に使用した.研究対象は利き手交換経験のない右利きの健常者24名である.まず対象の利き手での箸操作フォームを確認し,中田らの分類を参考にAV型(伝統的な持ち方)・AI型・X型をはじめとした5種類に分類した.型毎の人数に偏りがでないよう対象を2群に分け,それぞれ箸蔵くん群・3点箸群とした.非利き手である左手で箸操作練習を実施した.訓練内容は指定された箸を使用して大豆の運搬を10分×5日間実施した.また訓練期間の前後に,普通箸を用いてフォーム・操作性の評価を行った. フォームの評価では動画を撮影しフォームの型を分類,操作性の評価では豆・輪ゴムの移動個数,箸を10回開閉し箸先が合う回数の測定を行った.統計解析は大豆の移動個数は対応のあるt検定,輪ゴムの移動個数・箸の開閉動作はMann-WhitneyのU検定を用いた.対象者には本研究の趣旨と内容について口頭と紙面での説明を行った上で研究同意を得た.
【結果】
フォームについて,AV型の人数は箸蔵くん群1名→1名であったのに対し,3点箸群は2名→9名であった.操作性について,大豆・輪ゴムの移動個数,箸の開閉動作は訓練前後で2群間では有意差を認めなかった.(p>0.05)
【考察】
フォームの評価では3点箸群ではAV型獲得者が多かった.箸蔵くんは普通箸と比較し構造と手指動作に乖離があるためフォームの改善に至らなかったと考える.普通箸に構造が近い,また指の接触位置に視覚・触覚の手がかりがある3点箸の使用は有効であったと考える.箸のフォームについて,健常成人では箸操作が成熟していれば,操作フォームによる操作性の違いは顕著には生じないといわれているが,AV型が最も安定した持ち方との報告もある.患側での箸操作獲得においては,残存機能を活かしたフォームの選択が重要と考える.しかし障害のない非利き手においては,3点箸を用いて安定性の高いAV型フォームの獲得を目的に3点箸を使用することは有用だと考える.操作性の評価において訓練前後に有意差が認められなかった点については,非利き手での箸の操作性向上には60分程度の練習では不十分としている先行研究もあり,本研究では訓練期間の短さが操作性の向上に至らなかった一因と考えられる.また3点箸群と比較し課題難易度が低い箸蔵くん群では,従来の箸操作訓練において自助具の使用が推奨されていることもあり学習効果が高まることも予測されたが,2群間において結果に有意差は認められなかった.このことから,難易度を下げることで学習効果の向上を期待するという面では,箸操作訓練に箸蔵くんを選択するメリットは少ない可能性が本研究においても示唆された.これらの検証結果から,普通箸の操作獲得を目的とした練習において,伝統的なフォームの獲得者が多い3点箸を使用することは有効性が高いと考える.
箸操作訓練には課題難易度を下げ学習効果を高めることを目的にばね箸などの自助具の使用が推奨される.一方で普通箸の操作獲得には自助具で段階付けした訓練よりも普通箸のみで訓練した方が有効であるとの報告もあり,訓練に使用する箸の選択に迷う経験がある.今回は指の接触面の分かりやすいしつけ箸(以下3点箸)と,自助具を使用し箸操作のフォーム・操作性に与える効果の違いについて検証した.
【方法】
本研究では2種類の箸でフォーム・操作性の比較を行った.一方はばね箸様の自助具である「箸蔵くん」,もう一方は指の接触位置にくぼみのある「3点箸」を使用した.3点箸とは伝統的な箸の持ち方の習得を目的とした箸である.普通箸を用いた操作訓練において1~3指の接触面の指導に難渋する経験が多いため,普通箸に形状が近いが接触面の手がかりがある3点箸を検証に使用した.研究対象は利き手交換経験のない右利きの健常者24名である.まず対象の利き手での箸操作フォームを確認し,中田らの分類を参考にAV型(伝統的な持ち方)・AI型・X型をはじめとした5種類に分類した.型毎の人数に偏りがでないよう対象を2群に分け,それぞれ箸蔵くん群・3点箸群とした.非利き手である左手で箸操作練習を実施した.訓練内容は指定された箸を使用して大豆の運搬を10分×5日間実施した.また訓練期間の前後に,普通箸を用いてフォーム・操作性の評価を行った. フォームの評価では動画を撮影しフォームの型を分類,操作性の評価では豆・輪ゴムの移動個数,箸を10回開閉し箸先が合う回数の測定を行った.統計解析は大豆の移動個数は対応のあるt検定,輪ゴムの移動個数・箸の開閉動作はMann-WhitneyのU検定を用いた.対象者には本研究の趣旨と内容について口頭と紙面での説明を行った上で研究同意を得た.
【結果】
フォームについて,AV型の人数は箸蔵くん群1名→1名であったのに対し,3点箸群は2名→9名であった.操作性について,大豆・輪ゴムの移動個数,箸の開閉動作は訓練前後で2群間では有意差を認めなかった.(p>0.05)
【考察】
フォームの評価では3点箸群ではAV型獲得者が多かった.箸蔵くんは普通箸と比較し構造と手指動作に乖離があるためフォームの改善に至らなかったと考える.普通箸に構造が近い,また指の接触位置に視覚・触覚の手がかりがある3点箸の使用は有効であったと考える.箸のフォームについて,健常成人では箸操作が成熟していれば,操作フォームによる操作性の違いは顕著には生じないといわれているが,AV型が最も安定した持ち方との報告もある.患側での箸操作獲得においては,残存機能を活かしたフォームの選択が重要と考える.しかし障害のない非利き手においては,3点箸を用いて安定性の高いAV型フォームの獲得を目的に3点箸を使用することは有用だと考える.操作性の評価において訓練前後に有意差が認められなかった点については,非利き手での箸の操作性向上には60分程度の練習では不十分としている先行研究もあり,本研究では訓練期間の短さが操作性の向上に至らなかった一因と考えられる.また3点箸群と比較し課題難易度が低い箸蔵くん群では,従来の箸操作訓練において自助具の使用が推奨されていることもあり学習効果が高まることも予測されたが,2群間において結果に有意差は認められなかった.このことから,難易度を下げることで学習効果の向上を期待するという面では,箸操作訓練に箸蔵くんを選択するメリットは少ない可能性が本研究においても示唆された.これらの検証結果から,普通箸の操作獲得を目的とした練習において,伝統的なフォームの獲得者が多い3点箸を使用することは有効性が高いと考える.