[PC-2-3] 当院高齢入院患者における退院後の肺炎発症に影響する因子の検討
【序論】
当院高齢入院患者が退院後に肺炎を発症し,再入院することをしばしば経験する.高齢患者は入院の度にADLが低下し,QOLが悪化するため,肺炎発症の要因を分析し,対策を行うことは重要である.
【目的】
当院高齢入院患者における退院後の肺炎発症に影響する因子を検討する.
【対象と方法】
対象は,2020年4月1日〜2023年3月31日の間,入院リハビリテーションを行った65歳以上の高齢患者170名のうち,自己にて口腔清掃能力が保たれていない者,著しい認知機能低下により疎通が図れない者,退院後の診療記録による追跡が行えない者等を除く130名.退院後の肺炎発症の確認方法は,診療記録にて,医師が誤嚥性肺炎もしくは誤嚥性肺炎疑いと診断した場合とした.退院後の肺炎発症に影響する因子として,退院時口腔清掃自立度(以下,退院時BDR指標)および患者背景(年齢,性別,高血圧症,高脂血症,糖尿病,透析の有無,転帰先,喫煙歴,既往歴[脳血管障害,心不全,肺炎]),身体機能(退院時ABMS-Ⅱ,退院時FIM)の解析を行った.統計解析にはEZR Ver 1.61 を使用し,有意水準は 5%未満とした.なお本研究は,川島病院研究倫理審査委員会の承認を得て実施した.
【結果】
対象130名のうち,退院後に肺炎を発症した患者は13名であった.肺炎発症との相関では,退院時BDR指標は非自立で高く(p<0.01),肺炎および脳血管障害の既往がある群で有意な正の相関(p<0.01)を示し,退院時ABMS-Ⅱ(p<0.01)および退院時FIM(p<0.01)が有意に低値を示した.これらの項目に関して多変量解析を行った結果,脳血管障害の既往が独立した危険因子として抽出された(p<0.01).
【考察】
今回の結果から,脳血管障害の既往により,運動麻痺等を有している患者では,退院後肺炎を発症するリスクが高いことが示唆された.これは,運動麻痺や高次脳機能障害の既往による活動量およびADLの低下から,免疫能が低下していることや,抗重力筋(腹筋群等)の筋力低下および咳嗽能力が低下し,誤嚥物質の除去が困難になっていることが誘因と思われる.
また,今回は肺炎の既往が危険因子でないことは,退院後,家族等による口腔ケアなどの実施が,肺炎を予防できていたことを想像させる.
これらの結果から,脳血管疾患を有する患者では,通常の運動リハビリテーションを行う際に,患者の訴えや肺炎既往がなくても呼吸・嚥下リハビリテーションの追加を検討し,医師,看護師を含むチームでカンファレンスを行い,情報を共有することで包括的に介入を行なっていく必要があると考える.
当院高齢入院患者が退院後に肺炎を発症し,再入院することをしばしば経験する.高齢患者は入院の度にADLが低下し,QOLが悪化するため,肺炎発症の要因を分析し,対策を行うことは重要である.
【目的】
当院高齢入院患者における退院後の肺炎発症に影響する因子を検討する.
【対象と方法】
対象は,2020年4月1日〜2023年3月31日の間,入院リハビリテーションを行った65歳以上の高齢患者170名のうち,自己にて口腔清掃能力が保たれていない者,著しい認知機能低下により疎通が図れない者,退院後の診療記録による追跡が行えない者等を除く130名.退院後の肺炎発症の確認方法は,診療記録にて,医師が誤嚥性肺炎もしくは誤嚥性肺炎疑いと診断した場合とした.退院後の肺炎発症に影響する因子として,退院時口腔清掃自立度(以下,退院時BDR指標)および患者背景(年齢,性別,高血圧症,高脂血症,糖尿病,透析の有無,転帰先,喫煙歴,既往歴[脳血管障害,心不全,肺炎]),身体機能(退院時ABMS-Ⅱ,退院時FIM)の解析を行った.統計解析にはEZR Ver 1.61 を使用し,有意水準は 5%未満とした.なお本研究は,川島病院研究倫理審査委員会の承認を得て実施した.
【結果】
対象130名のうち,退院後に肺炎を発症した患者は13名であった.肺炎発症との相関では,退院時BDR指標は非自立で高く(p<0.01),肺炎および脳血管障害の既往がある群で有意な正の相関(p<0.01)を示し,退院時ABMS-Ⅱ(p<0.01)および退院時FIM(p<0.01)が有意に低値を示した.これらの項目に関して多変量解析を行った結果,脳血管障害の既往が独立した危険因子として抽出された(p<0.01).
【考察】
今回の結果から,脳血管障害の既往により,運動麻痺等を有している患者では,退院後肺炎を発症するリスクが高いことが示唆された.これは,運動麻痺や高次脳機能障害の既往による活動量およびADLの低下から,免疫能が低下していることや,抗重力筋(腹筋群等)の筋力低下および咳嗽能力が低下し,誤嚥物質の除去が困難になっていることが誘因と思われる.
また,今回は肺炎の既往が危険因子でないことは,退院後,家族等による口腔ケアなどの実施が,肺炎を予防できていたことを想像させる.
これらの結果から,脳血管疾患を有する患者では,通常の運動リハビリテーションを行う際に,患者の訴えや肺炎既往がなくても呼吸・嚥下リハビリテーションの追加を検討し,医師,看護師を含むチームでカンファレンスを行い,情報を共有することで包括的に介入を行なっていく必要があると考える.