[PD-4-3] 肘部管症候群により尺骨神経麻痺を呈した症例に対して,2種類の治療的電気刺激装置を用いた一事例
【はじめに】
今回,肘部管症候群により尺骨神経麻痺を呈した60歳代の男性に随意運動介助型電気刺激装置(以下,IVES○R:OG技研株式会社),及び低周波治療機器(イトーES-429○R:伊藤超短波株式会社)を用いた訓練を約6ヶ月実施した.その経過について報告する,また発表に際し,本人には同意を得ている.
【症例紹介】
60歳代の男性.利き手は右手であり現役の電気工事士として業務されていた. X-2年前より小指に痺れを自覚.X-1年に曲げづらさを認め近医受診し,右肘部管症候群の診断で当院へ紹介受診となるが,手術希望なく経過.X年Y月より徐々に神経症状増悪し,前腕尺側面痺れ拡大を認め,手術方針となった.
【初期評価】(右/左)
術式は神経剥離術.外来へ移行にて初回介入し,頻度は1週間に1回40分間実施した.初期評価は,右環指,小指claw sign残存し,母指内転筋,背側,掌側骨間筋の筋萎縮を認める.関節可動域は肘関節−20~105度,でありその他の関節可動域制限は認めない.MMTは示指内外転2,環指及び小指内外転1と運動麻痺を認め,知覚は環指,小指に痺れを残存した.握力は25,2kg/41,2kg,Pinchは側副つまみ2,5/11,0,指腹つまみ1,0/4,0,指尖つまみ1,0/4,0であった.Q-DASHは日常生活スコア25仕事スコア50であった.
【目標設定】
長期目標は①洗顔時,水を溢さず掬える②箸操作の安定性獲得と設定し,短期目標は①背側骨間筋,掌側骨間筋,母指内転筋の自動運動の獲得②知覚の再構築を挙げた.
【介入方法】
初回は,IVESのパワーアシストモードを使用し,3ヶ月経過後,著しい改善が見込めないためイトーES-429に変更し,課題を行なった.直接的介入では①浅指屈筋,深指屈筋のストレッチング②開眼位での手指内外転(ミラー療法)③閉眼位での手指内外転④実動作訓練.その後,自主トレーニングは①虫様筋握り②小ペグの付け外し③洗濯バサミ付け外し④コインつまみ⑤積み木課題を行なった.
【結果】(右/左)
介入6か月経過後はclaw sign及び,母指内転筋,背側,掌側骨間筋の筋萎縮は残存するものの軽減した.MMTでは示指内外転2,環指及び小指内外転2と尺骨神経領域の運動麻痺残存した.痺れは消失した.握力は24,6kg/41,5kg.Pinchは側副つまみ5,0/11,0,指腹つまみ2,5/8,0,指尖つまみ2,5/8,0.Q-DASHは,日常生活スコア6,8仕事スコア0と改善を認めた.
【考察】
今回の尺骨神経麻痺の予後予測について,術前評価ではMcGowan分類はStageⅢ,術後の赤堀ら分類は可であり,軽度の機能障害や知覚障害が残存すると予測された.最終評価においてMMTやPinch力,Q-DASHの改善を認めた.これは小指外転筋,虫様筋,背側骨間筋への電気刺激を用いた自動運動や自主トレーニングを行い筋萎縮予防に繋がり,Q-DASHにおいても仕事スコアも0へ改善したが,箸の拙劣さ,水を掬う操作の拙劣さ残存した.脱神経筋に対してはパルス幅が100ms必要と言われており,IVESのパルス幅が300μsで実施するが,改善は認めず,イトーES-429へ変更した実施した.イトーES-429の最大パルス幅は500μsあり目視できる収縮は起きない.そのため,電気刺激装置による筋収縮だけではなく,神経再生による改善も考えられる.現状,脳血管疾患による運動麻痺に対して治療的電気刺激の効果については多く見られるが,末梢神経障害の症例が少ない.そこで今後も末梢神経障害に対する治療的電気刺激の検討が必要になると考えられる.その結果,治療的電気刺激と併用した徒手的療法や自主トレーニングを用いて,ADL改善,QOLの向上に繋がると考えられる.
今回,肘部管症候群により尺骨神経麻痺を呈した60歳代の男性に随意運動介助型電気刺激装置(以下,IVES○R:OG技研株式会社),及び低周波治療機器(イトーES-429○R:伊藤超短波株式会社)を用いた訓練を約6ヶ月実施した.その経過について報告する,また発表に際し,本人には同意を得ている.
【症例紹介】
60歳代の男性.利き手は右手であり現役の電気工事士として業務されていた. X-2年前より小指に痺れを自覚.X-1年に曲げづらさを認め近医受診し,右肘部管症候群の診断で当院へ紹介受診となるが,手術希望なく経過.X年Y月より徐々に神経症状増悪し,前腕尺側面痺れ拡大を認め,手術方針となった.
【初期評価】(右/左)
術式は神経剥離術.外来へ移行にて初回介入し,頻度は1週間に1回40分間実施した.初期評価は,右環指,小指claw sign残存し,母指内転筋,背側,掌側骨間筋の筋萎縮を認める.関節可動域は肘関節−20~105度,でありその他の関節可動域制限は認めない.MMTは示指内外転2,環指及び小指内外転1と運動麻痺を認め,知覚は環指,小指に痺れを残存した.握力は25,2kg/41,2kg,Pinchは側副つまみ2,5/11,0,指腹つまみ1,0/4,0,指尖つまみ1,0/4,0であった.Q-DASHは日常生活スコア25仕事スコア50であった.
【目標設定】
長期目標は①洗顔時,水を溢さず掬える②箸操作の安定性獲得と設定し,短期目標は①背側骨間筋,掌側骨間筋,母指内転筋の自動運動の獲得②知覚の再構築を挙げた.
【介入方法】
初回は,IVESのパワーアシストモードを使用し,3ヶ月経過後,著しい改善が見込めないためイトーES-429に変更し,課題を行なった.直接的介入では①浅指屈筋,深指屈筋のストレッチング②開眼位での手指内外転(ミラー療法)③閉眼位での手指内外転④実動作訓練.その後,自主トレーニングは①虫様筋握り②小ペグの付け外し③洗濯バサミ付け外し④コインつまみ⑤積み木課題を行なった.
【結果】(右/左)
介入6か月経過後はclaw sign及び,母指内転筋,背側,掌側骨間筋の筋萎縮は残存するものの軽減した.MMTでは示指内外転2,環指及び小指内外転2と尺骨神経領域の運動麻痺残存した.痺れは消失した.握力は24,6kg/41,5kg.Pinchは側副つまみ5,0/11,0,指腹つまみ2,5/8,0,指尖つまみ2,5/8,0.Q-DASHは,日常生活スコア6,8仕事スコア0と改善を認めた.
【考察】
今回の尺骨神経麻痺の予後予測について,術前評価ではMcGowan分類はStageⅢ,術後の赤堀ら分類は可であり,軽度の機能障害や知覚障害が残存すると予測された.最終評価においてMMTやPinch力,Q-DASHの改善を認めた.これは小指外転筋,虫様筋,背側骨間筋への電気刺激を用いた自動運動や自主トレーニングを行い筋萎縮予防に繋がり,Q-DASHにおいても仕事スコアも0へ改善したが,箸の拙劣さ,水を掬う操作の拙劣さ残存した.脱神経筋に対してはパルス幅が100ms必要と言われており,IVESのパルス幅が300μsで実施するが,改善は認めず,イトーES-429へ変更した実施した.イトーES-429の最大パルス幅は500μsあり目視できる収縮は起きない.そのため,電気刺激装置による筋収縮だけではなく,神経再生による改善も考えられる.現状,脳血管疾患による運動麻痺に対して治療的電気刺激の効果については多く見られるが,末梢神経障害の症例が少ない.そこで今後も末梢神経障害に対する治療的電気刺激の検討が必要になると考えられる.その結果,治療的電気刺激と併用した徒手的療法や自主トレーニングを用いて,ADL改善,QOLの向上に繋がると考えられる.