[PD-4-4] 頚椎症性脊髄症により不全麻痺と感覚障害を呈した症例への回復期リハビリテーション病棟における自動車運転再開支援
【序論】近年,回復期リハビリテーション病棟における自動車運転支援の頻度は増加している.当院では,高次脳機能障害患者の自動車運転再開支援システムを多職種で作成し運用している.しかし入院患者の疾患割合に変化が生じ,若年の脊髄損傷や,頸椎症性脊髄症等の脊椎疾患患者が増加し,自動車運転再開の判断に難渋していた.今回,頚椎症性頚髄症により左上下肢を主に不全麻痺と痙縮,感覚障害が残存した症例に対し,希望であった自動車運転再開に向け指定自動車学校と連携した支援を行い,早期の自動車運転再開と復職に至ったためその経過を報告する.
【倫理•COI】発表に際し症例から文書同意を得ている.COIに関連する企業等はない.
【症例紹介】60歳代男性.診断名は頚椎症性脊髄症.X日,前医にて椎弓切除術を施行し,X+15日に当院入院となった.病前生活は,2階建てアパートに妻と同居され,ADL自立.職業は家庭訪問型の英会話講師であり,生徒宅訪問の際に自動車運転が必須であった.
初期評価では,MMT左右共に上肢4,左下肢3 右下肢5,握力左右共に17kg,MAS左指屈筋1+ 左下腿三頭筋3,表在覚左2/10 右5/10,STEF左64点/右74点,FIM99/126点であった. 左上下肢の痙縮と感覚障害が残存しており,病棟ADLは左下肢に短下肢装具(UDフレックス)と歩行器を使用し歩行監視レベルであった.まずは自宅復帰に必要なADL獲得に向け,PT,OT6単位/日,基本動作訓練,ADL•IADL訓練,筋力増強訓練,上肢機能訓練,物理療法で介入を進めた.運転技能に関しては,車の乗り降りやハンドル,ペダル操作場面で困難さがみられていた.上記介入後X+56日には,MMT左右共に上下肢4,MAS左指屈筋1左下腿三頭筋2,表在覚左7/10 右8/10,STEF右77点/左75点,FIM117/126点となった.左上下肢の痙縮や感覚障害は残存しているが,病棟ADLは概ね修正自立となり,左下肢に短下肢装具(タマラック)+杖歩行修正自立まで改善を認め,復職に向けた自動車運転再開に向けた支援を開始した.
【経過•結果】X+64日,ハンドルやペダル操作の反応速度を確認する為,簡易自動車運転シミュレーターSiDSを実施し,適性ありの判定となった.同時期に,病院の公用車を用い,停車車両の乗り降り評価•訓練を行った.しかし,症例の復職には最大60分間ほどの連続運転が必要であり,連続運転の評価は病院で判断することが難しい状況であった.そこで高次脳機能障害患者向けの実車教習を依頼している指定自動車学校に本症例の評価を打診したところ,受け入れ可能との返答を得た.X+77日,実車教習を実施.担当OTも実車教習に同席し,教習員に対し身体機能面の問題点を共有した.復職に必要な最大60分間連続の走行評価を行い,乗り降り動作,ハンドル,ペダル操作は可能であった.Driving Assessment Scaleは46/50点であった.X+103日に自宅退院となる.
【考察】免許の拒否又は保留の理由として,道路交通法では自動車運転等の安全運転に必要とされる認知,予測,判断又は操作のいずれかに係る能力を欠く症状を呈する病気と記載されている. しかし,どの病気が自動車の安全運転に支障をきたすかは曖昧で判断が困難(武原格.2017)とされており,当院でも脊椎疾患に関する判断に苦慮していた.そこで高次脳機能障害患者を対象とした実車教習を依頼していた指定自動車学校に相談し,入院中に身体機能面に関する運転技能の最終確認が可能となった.これにより自動車の安全運転に必要な運転技能を評価でき,早期の自動車運転再開と復職を促進できたと考える.
【結語】回復期リハビリテーション病棟に入院する様々な障害像を持つ患者に対し,自動車運転を安易に禁止することなく,安全な運転再開に向けて評価•支援を行うことは重要な課題である.
【倫理•COI】発表に際し症例から文書同意を得ている.COIに関連する企業等はない.
【症例紹介】60歳代男性.診断名は頚椎症性脊髄症.X日,前医にて椎弓切除術を施行し,X+15日に当院入院となった.病前生活は,2階建てアパートに妻と同居され,ADL自立.職業は家庭訪問型の英会話講師であり,生徒宅訪問の際に自動車運転が必須であった.
初期評価では,MMT左右共に上肢4,左下肢3 右下肢5,握力左右共に17kg,MAS左指屈筋1+ 左下腿三頭筋3,表在覚左2/10 右5/10,STEF左64点/右74点,FIM99/126点であった. 左上下肢の痙縮と感覚障害が残存しており,病棟ADLは左下肢に短下肢装具(UDフレックス)と歩行器を使用し歩行監視レベルであった.まずは自宅復帰に必要なADL獲得に向け,PT,OT6単位/日,基本動作訓練,ADL•IADL訓練,筋力増強訓練,上肢機能訓練,物理療法で介入を進めた.運転技能に関しては,車の乗り降りやハンドル,ペダル操作場面で困難さがみられていた.上記介入後X+56日には,MMT左右共に上下肢4,MAS左指屈筋1左下腿三頭筋2,表在覚左7/10 右8/10,STEF右77点/左75点,FIM117/126点となった.左上下肢の痙縮や感覚障害は残存しているが,病棟ADLは概ね修正自立となり,左下肢に短下肢装具(タマラック)+杖歩行修正自立まで改善を認め,復職に向けた自動車運転再開に向けた支援を開始した.
【経過•結果】X+64日,ハンドルやペダル操作の反応速度を確認する為,簡易自動車運転シミュレーターSiDSを実施し,適性ありの判定となった.同時期に,病院の公用車を用い,停車車両の乗り降り評価•訓練を行った.しかし,症例の復職には最大60分間ほどの連続運転が必要であり,連続運転の評価は病院で判断することが難しい状況であった.そこで高次脳機能障害患者向けの実車教習を依頼している指定自動車学校に本症例の評価を打診したところ,受け入れ可能との返答を得た.X+77日,実車教習を実施.担当OTも実車教習に同席し,教習員に対し身体機能面の問題点を共有した.復職に必要な最大60分間連続の走行評価を行い,乗り降り動作,ハンドル,ペダル操作は可能であった.Driving Assessment Scaleは46/50点であった.X+103日に自宅退院となる.
【考察】免許の拒否又は保留の理由として,道路交通法では自動車運転等の安全運転に必要とされる認知,予測,判断又は操作のいずれかに係る能力を欠く症状を呈する病気と記載されている. しかし,どの病気が自動車の安全運転に支障をきたすかは曖昧で判断が困難(武原格.2017)とされており,当院でも脊椎疾患に関する判断に苦慮していた.そこで高次脳機能障害患者を対象とした実車教習を依頼していた指定自動車学校に相談し,入院中に身体機能面に関する運転技能の最終確認が可能となった.これにより自動車の安全運転に必要な運転技能を評価でき,早期の自動車運転再開と復職を促進できたと考える.
【結語】回復期リハビリテーション病棟に入院する様々な障害像を持つ患者に対し,自動車運転を安易に禁止することなく,安全な運転再開に向けて評価•支援を行うことは重要な課題である.