[PE-6-5] 訪問リハビリテーションによるALS患者へのコミュニケーション支援の実践
【はじめに】
筋萎縮性側索硬化症(以下,ALS)では症状の進行とともに音声・言語による意思疎通が徐々に困難になる.その代替手段は透明文字盤などのアナログなものから,iPadアプリや重度意思伝達装置などIT機器を用いたものまで様々である.代替手段の選択においては対象者の身体機能,希望,生活環境などを多面的に評価し,症状の進行を予測しながらタイムリーに対応することが求められる.今回,訪問リハビリテーション(以下,リハ)にてALS者を担当する機会を得た.音声・言語での意思疎通に支障がない時期から,将来に向けた代替手段の検討を本人や家族,多職種と連携しながら行い,最終的にPPSスイッチによる重度意思伝達装置の導入に至ったため,その経過を報告する.なお,発表にあたり本人および家族から同意を得ている.
【対象】
40歳代後半の男性で仕事の休職と同時に訪問リハが開始となった.MMTは上肢5下肢2体幹2であり,自宅内では車椅子を自操していた.福祉用具や住環境の整備が既に行われていたこともあり,自宅内ではほぼ自立して生活できていた.嚥下機能の低下はなく,音声・言語による意思疎通が可能であった.初回面接では「自分で車を運転して家族で旅行に行きたい」などの希望が聞かれ,主訴は「出来るだけ進行を遅らせたい」とのことであった.特定医療費受給者証,介護保険証,障害手帳(下肢)を取得していた.主介護者は妻であったが,正社員で仕事をしており日中は不在であった.
【介入方針】
ALS診療ガイドラインを参考とした機能訓練や本人の希望に沿った関わりをしながら,症状の進行に合わせてADLや余暇活動を快適に行えるための介入を行う方針とした.加えて,将来必要となる意思疎通の代替手段の検討を進めた.本発表ではコミュニケーション支援の経過を示す.
【経過】
準備期:意思疎通の代替方法や制度に関する情報を提供した.iPadのアクセシビリティとアプリ,スイッチを組み合わせた方法や,PPSスイッチや視線入力装置を用いた重度意思伝達装置に興味を示したためデモ機を使って使用感を確認し,その結果を家族や多職種で共有した.
導入期:上肢近位筋および手指のMMTが2~3レベルとなり,徐々に発声時に易疲労性が見られてきたため,金銭的負担を考慮して本人が持っていたiPadを接点スイッチで操作する方法から機器を導入した.その場での臨機応変な会話は音声・言語で行い,事前に話したい内容が決まっている診察などの際にはiPadのメモアプリに書き込んでおくなど,コミュニケーションの一部で支援機器を使う形から導入した.その後の進行を見据えてPPSスイッチや視線入力装置を使う練習を続け,タイミングを見て身体障害者手帳を音声・言語と上肢でも取得した.最終的には視線入力は操作が速いことがメリットであったが,操作ミスが多いという不安があり,確実に文字入力できるPPSスイッチによる重度意思伝達装置の申請・導入を行った.家族や多職種で装置の操作方法やトラブル時の対応,スイッチの置き場やパソッテルの位置・角度,姿勢やポジショニングの注意点などを共有した.意思伝達の手段が担保されたことに本人や家族から安堵の声が聞かれた.
【考察】
ALSは症状の進行が早く,先々を見据えた支援が重要である.今回,音声・言語での意思疎通が困難となる前に代替手段の導入が出来た背景としては,準備期でデモ機を使って使用感を確認していたことや,重度意思伝達装置の導入に向けて身体障害者手帳の申請をタイムリーに行えたことなど,症状の進行を予測して関われたことが幸いしたと考える.
筋萎縮性側索硬化症(以下,ALS)では症状の進行とともに音声・言語による意思疎通が徐々に困難になる.その代替手段は透明文字盤などのアナログなものから,iPadアプリや重度意思伝達装置などIT機器を用いたものまで様々である.代替手段の選択においては対象者の身体機能,希望,生活環境などを多面的に評価し,症状の進行を予測しながらタイムリーに対応することが求められる.今回,訪問リハビリテーション(以下,リハ)にてALS者を担当する機会を得た.音声・言語での意思疎通に支障がない時期から,将来に向けた代替手段の検討を本人や家族,多職種と連携しながら行い,最終的にPPSスイッチによる重度意思伝達装置の導入に至ったため,その経過を報告する.なお,発表にあたり本人および家族から同意を得ている.
【対象】
40歳代後半の男性で仕事の休職と同時に訪問リハが開始となった.MMTは上肢5下肢2体幹2であり,自宅内では車椅子を自操していた.福祉用具や住環境の整備が既に行われていたこともあり,自宅内ではほぼ自立して生活できていた.嚥下機能の低下はなく,音声・言語による意思疎通が可能であった.初回面接では「自分で車を運転して家族で旅行に行きたい」などの希望が聞かれ,主訴は「出来るだけ進行を遅らせたい」とのことであった.特定医療費受給者証,介護保険証,障害手帳(下肢)を取得していた.主介護者は妻であったが,正社員で仕事をしており日中は不在であった.
【介入方針】
ALS診療ガイドラインを参考とした機能訓練や本人の希望に沿った関わりをしながら,症状の進行に合わせてADLや余暇活動を快適に行えるための介入を行う方針とした.加えて,将来必要となる意思疎通の代替手段の検討を進めた.本発表ではコミュニケーション支援の経過を示す.
【経過】
準備期:意思疎通の代替方法や制度に関する情報を提供した.iPadのアクセシビリティとアプリ,スイッチを組み合わせた方法や,PPSスイッチや視線入力装置を用いた重度意思伝達装置に興味を示したためデモ機を使って使用感を確認し,その結果を家族や多職種で共有した.
導入期:上肢近位筋および手指のMMTが2~3レベルとなり,徐々に発声時に易疲労性が見られてきたため,金銭的負担を考慮して本人が持っていたiPadを接点スイッチで操作する方法から機器を導入した.その場での臨機応変な会話は音声・言語で行い,事前に話したい内容が決まっている診察などの際にはiPadのメモアプリに書き込んでおくなど,コミュニケーションの一部で支援機器を使う形から導入した.その後の進行を見据えてPPSスイッチや視線入力装置を使う練習を続け,タイミングを見て身体障害者手帳を音声・言語と上肢でも取得した.最終的には視線入力は操作が速いことがメリットであったが,操作ミスが多いという不安があり,確実に文字入力できるPPSスイッチによる重度意思伝達装置の申請・導入を行った.家族や多職種で装置の操作方法やトラブル時の対応,スイッチの置き場やパソッテルの位置・角度,姿勢やポジショニングの注意点などを共有した.意思伝達の手段が担保されたことに本人や家族から安堵の声が聞かれた.
【考察】
ALSは症状の進行が早く,先々を見据えた支援が重要である.今回,音声・言語での意思疎通が困難となる前に代替手段の導入が出来た背景としては,準備期でデモ機を使って使用感を確認していたことや,重度意思伝達装置の導入に向けて身体障害者手帳の申請をタイムリーに行えたことなど,症状の進行を予測して関われたことが幸いしたと考える.