第58回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

がん

[PF-2] ポスター:がん 2  

2024年11月9日(土) 11:30 〜 12:30 ポスター会場 (大ホール)

[PF-2-3] 緩和ケアチーム対象がん患者に対するリハビリテーション専門職による介入の効果

壱岐尾 優太1, 大原 寛之2, 後藤 慎一2, 草野 友美3, 東 登志夫4 (1.日本赤十字社長崎原爆病院 リハビリテーション科, 2.同 緩和ケア内科, 3.同 看護部, 4.長崎大学生命医科学域(保健学系))

【はじめに】
がんリハビリテーションガイドライン第2版において,根治治療対象外の進行がん患者に対しては,全身状態が安定している場合の監督下での運動療法は,身体機能やQOLに対して徐々にエビデンスが構築されてきている.一方で,緩和ケアチーム(以下PCT)に紹介となる進行がん患者は,身体および精神症状が強く,全身状態が安定していないことが多い.このような対象者に対してのリハビリテーション介入の効果に関しては,現在のところ一定の見解が得られていない.実臨床の場面でも,彼らにリハビリテーション処方が出されるかどうかは主治医によって意見が分かれている現状がある.そこで,本研究の目的は,症状緩和目的でPCTが介入している患者に対するリハビリテーション専門職による個別介入(以下リハ介入)の効果を,身体機能および身体・精神症状に焦点を当てて検討することとした.
【方法】
デザインは後方視的観察研究である.対象の取込基準は,2021年4月~2023年3月の間に当院入院中で,症状緩和目的でPCTに紹介されたがん患者284名のうち,PCT介入期間が1週間以上あり,身体機能(握力)または身体・精神症状(Edmonton Symptom Assessment System Revised Japanese version:以下ESAS-r-J)の評価が2回以上実施できた者とした.統計解析は,PCT介入初回評価時(T0)と最終評価時(T1)における握力およびESAS-r-Jの変化量を従属変数,握力にはリハ介入の有無および全身状態(Performance Status:以下PS),ESAS-r-Jにはリハ介入の有無およびT0時の各下位項目の値を独立変数とした重回帰分析を用いて比較し,有意水準は5%とした.尚,本研究は当院倫理委員会の承認を得て実施した.
【結果】
取り込み基準を満たした対象者は35名であった.対象者の平均年齢は,71.9±10.7歳(男20名,女15名),診断は,固形癌が28名,造血器腫瘍が7名,PSは,1が9名,2が7名,3が14名,4が5名であった.PCTの平均介入期間は34.9±18.1日であった.35名のうち,リハ介入群は23名,非介入群は12名であった.リハ介入内容は,対象者の全身状態や症状に合わせて,運動療法や日常生活動作練習,リラクゼーションなどを包括的に実施していた.T0における各評価は両群で有意差を認めなかった.T0とT1の変化量は,握力(リハ介入群vs非介入群:1.05±3.24 vs -1.88±1.92,p=0.04)およびESAS-r-Jのだるさ(-1.65±4.26 vs -0.57±4.76,p=0.03),吐き気(-0.9±2.45 vs -0.29±4.42,p=0.04),食欲不振(-2.75±4.30 vs 0.5±3.62,p<0.01)において,非介入群と比べてリハ介入群で有意な改善を認めた.
【考察】
比較的病状が進行しており症状が安定していない患者であっても,症状緩和治療に加えて,症状の進行や苦痛症状に合わせたリハビリテーションを実施することで,身体機能の改善および一部症状の軽減を認める可能性が示唆された.