第58回日本作業療法学会

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ポスター

がん

[PF-9] ポスター:がん 9

2024年11月10日(日) 10:30 〜 11:30 ポスター会場 (大ホール)

[PF-9-2] 脳腫瘍術後患者の不安症状に対するOccupation-based interventionの有効性

伊藤 駿1, 佐賀里 昭2, 古橋 啓介1, 井戸 芳和1, 堀内 博士1 (1.信州大学医学部附属病院 リハビリテーション部, 2.信州大学 医学部保健学科作業療法学専攻)

【目的】
 脳腫瘍患者の41%と48%がそれぞれ抑うつ症状と不安症状を呈することがある (Arnold SD, 2008).これらの精神症状は,脳腫瘍の手術を受けた患者における生活の質の低下,生存期間の短縮,自殺念慮と関連しているため (Gibson AW, 2021),不安や抑うつ症状に対するリハビリテーション介入は重要である.近年,がん患者に対する意味のある作業を基盤とした介入 (Occupation-based intervention: OBI) が精神症状に対して効果があるとされている (Sagari, 2018).そこで本研究では,開頭手術を受けた脳腫瘍患者を対象に,(1) 職業選択・決定支援システムを用いてデザインされたOBI および (2) 障害または身体機能に焦点を当てた介入 (impairment-based intervention: IBI) の2種類の介入の有効性を検証し,比較することを目的とした.
【方法】
 対象者は2020年1月から2022年1月までに当院で開頭腫瘍摘出術が行われた101例の患者とした.2020年1月1日~2021年3月31日までの期間に入院した患者をIBI group,2021年4月1日~2022年1月31日までの期間に入院した患者をOBI groupとした.IBI groupはカルテを参照して対照群とし,OBI groupは介入内容を設定した介入群とした.適格基準として,精神状態短時間検査-日本版24点以上の症例,20歳以上の症例とした.不安と抑うつはHospital Anxiety and Depression Scale (HADS) を用いて評価した.統計解析は,Functional Independence Measureの運動項目,認知項目の因子,入院期間を投入したロジスティック回帰分析にてPropensity score(PS)を算出した.1:1のPS matching法にてMann-whitneyのU検定,X2検定による二群間比較を行った.有意水準はp<0.05とした.なお,本研究は当院の倫理委員会の承認を得て実施した.
【結果】
 全体として,2020年1月1日から2022年1月31日の間に脳腫瘍切除術を受けた101例がスクリーニングされ,適格基準を満たさない方,またはデータ欠損の方を除外し,最終的に42例が解析に組み入れられた.PS matching法を用いてOBI群とIBI群から各6例を選択し,背景因子を揃えた.両群の患者属性項目については有意な差を認めなかった.介入後のOBI groupとIBIgroupの比較では,OBI groupのHADS-Aの項目で有意な改善を示した(p <0.05).
【考察】
 本研究では,リハビリテーションを受ける脳腫瘍術後患者に対するOBIの有効性について検討した初めての試みであった.OBI groupは,IBI groupよりも不安の項目で改善を示した.脳腫瘍術後患者は退院後の社会参加に対して不安を持つ方が多い (Lee C, 2018).そのため患者の期待に沿った明確な目標に基づき,有意義で手段的な日常生活活動を対象とした介入や指導を実施することで,退院時の患者の心理状態に影響を与え,退院後の不安を軽減できた可能性がある.今後は,サンプルサイズを増やし,ランダム化比較試験デザインで,このプログラムの有用性について検証したいと考えている.