[PG-2-2] 急性期からの段階的な支援により復職が可能となった重症皮膚筋炎の1例
【はじめに】皮膚筋炎は主に近位筋有意の筋力低下,典型的な皮膚症状を伴う自己免疫疾患である.治療開始早期からのリハビリテーションは筋力回復,日常生活動作(以下ADL)の改善に有効であるとされているが,作業療法(以下OT)介入の報告は少ない.今回皮膚筋炎により心身機能・活動・参加の低下を呈したA氏を担当し,急性期から段階的に支援を行った.その結果,対象者と協業的な関係性が構築でき,自宅での生活・復職や余暇活動が可能となったため報告する. 本報告に際して対象者に十分な説明を行い,同意を得ている.
【症例紹介】30代後半の女性,事務職,独居.Y-1月頃から食欲不振や皮膚症状が出現した.次第に倦怠感,呼吸困難感を認め日常生活困難となりY月Z日当院に入院,3剤併用療法が開始となった.皮膚筋炎(抗MDA5抗体陽性)と診断され,Z+12日目にOT開始となった.
【評価】体幹筋・四肢近位筋の筋力低下(MMT体幹・肩関節・股関節2),両手指感覚障害・皮膚症状による疼痛,労作時呼吸困難感,耐久性低下を認めた.基本動作は修正自立,m-FIM56点であった.身体症状とそれに伴う活動制限,治療効果や今後に対しての苦悩や不安,苛立ちなど精神面の不安定さがうかがえた.
【経過・結果】炎症反応や筋原性酵素が上昇している時期(第Ⅰ期:Y月~Y+1月)より開始し,表情,自発話は乏しかったが,生活状況等を聴取しつつ非言語的な関わりも意識し,多職種で情報共有し関わった.経過中症状進行によりさらなる筋力低下や嚥下機能障害を呈したが,関わりを継続するうちに人となりを知る会話や,作業遂行(特に排泄)とそれに対する思い・希望などの表出が増えてきた.症状進行が落ち着いてきた時期(第Ⅱ期:Y+1月~Y+4月)からはCK値や修正Borgスケールを指標に段階的に機能訓練を実施したことで,再燃や過用性の筋力低下は認めず経過した.2週間ごとに短期目標を共に設定し多職種で共有して関わった結果,近位筋MMT2と筋力低下は残存していたが,ほぼ全介助であった更衣・清拭は監視で可能となり,m-FIM68点と改善を認めた.この時点で主科治療が一段落し当院系列病院に転院,のち実家に退院し,再び当院にて外来開始した(第Ⅲ期:Y+7月~Y+9月).開始時筋力低下や易疲労性は残存していたが,具体的なフィードバックをもとに,対象者が生活の中で主体的に取り組む形で行った結果,心身機能・活動・参加の改善を認め,自宅生活・就労再開の方針となった.本人からも「困っていることはない,あとはやってみないとわからないですね」と前向きな表出があった.
【考察】相互交流的リーズニングのプロセスは「関わるきっかけとなる言動」への対応から始まり,「客観的な判断に基づく関わり」や「優しく人間味のある関わり」のもと,「対象者と経験と目標の共有」を行い,「ともに歩んでいく関係性の構築」に至るプロセスとされている(内堀ら,2022).本症例でも症状が増悪傾向で,病気の受容も十分でない時期から心身面や作業遂行へタイムリーに対応することから関わりはじめた.そして,その過程で協業的な関係性が構築でき,対象者の新たな希望の表出や目標設定,治療への主体的な参加が可能となったのではないかと思われる.さらに,対象者の若年で多趣味,計画的等の個人因子や,それを配慮したOT介入は,身体機能の低下は残存していても自宅生活,復職まで可能となった要因の1つだと考えられる.また,多職種で現状や方針を確認し,全身状態に合わせてプログラムを立案することで,安全に早期からリハビリを実施することができる可能性が示唆された.
【症例紹介】30代後半の女性,事務職,独居.Y-1月頃から食欲不振や皮膚症状が出現した.次第に倦怠感,呼吸困難感を認め日常生活困難となりY月Z日当院に入院,3剤併用療法が開始となった.皮膚筋炎(抗MDA5抗体陽性)と診断され,Z+12日目にOT開始となった.
【評価】体幹筋・四肢近位筋の筋力低下(MMT体幹・肩関節・股関節2),両手指感覚障害・皮膚症状による疼痛,労作時呼吸困難感,耐久性低下を認めた.基本動作は修正自立,m-FIM56点であった.身体症状とそれに伴う活動制限,治療効果や今後に対しての苦悩や不安,苛立ちなど精神面の不安定さがうかがえた.
【経過・結果】炎症反応や筋原性酵素が上昇している時期(第Ⅰ期:Y月~Y+1月)より開始し,表情,自発話は乏しかったが,生活状況等を聴取しつつ非言語的な関わりも意識し,多職種で情報共有し関わった.経過中症状進行によりさらなる筋力低下や嚥下機能障害を呈したが,関わりを継続するうちに人となりを知る会話や,作業遂行(特に排泄)とそれに対する思い・希望などの表出が増えてきた.症状進行が落ち着いてきた時期(第Ⅱ期:Y+1月~Y+4月)からはCK値や修正Borgスケールを指標に段階的に機能訓練を実施したことで,再燃や過用性の筋力低下は認めず経過した.2週間ごとに短期目標を共に設定し多職種で共有して関わった結果,近位筋MMT2と筋力低下は残存していたが,ほぼ全介助であった更衣・清拭は監視で可能となり,m-FIM68点と改善を認めた.この時点で主科治療が一段落し当院系列病院に転院,のち実家に退院し,再び当院にて外来開始した(第Ⅲ期:Y+7月~Y+9月).開始時筋力低下や易疲労性は残存していたが,具体的なフィードバックをもとに,対象者が生活の中で主体的に取り組む形で行った結果,心身機能・活動・参加の改善を認め,自宅生活・就労再開の方針となった.本人からも「困っていることはない,あとはやってみないとわからないですね」と前向きな表出があった.
【考察】相互交流的リーズニングのプロセスは「関わるきっかけとなる言動」への対応から始まり,「客観的な判断に基づく関わり」や「優しく人間味のある関わり」のもと,「対象者と経験と目標の共有」を行い,「ともに歩んでいく関係性の構築」に至るプロセスとされている(内堀ら,2022).本症例でも症状が増悪傾向で,病気の受容も十分でない時期から心身面や作業遂行へタイムリーに対応することから関わりはじめた.そして,その過程で協業的な関係性が構築でき,対象者の新たな希望の表出や目標設定,治療への主体的な参加が可能となったのではないかと思われる.さらに,対象者の若年で多趣味,計画的等の個人因子や,それを配慮したOT介入は,身体機能の低下は残存していても自宅生活,復職まで可能となった要因の1つだと考えられる.また,多職種で現状や方針を確認し,全身状態に合わせてプログラムを立案することで,安全に早期からリハビリを実施することができる可能性が示唆された.