第58回日本作業療法学会

Presentation information

ポスター

内科疾患

[PG-3] ポスター:内科疾患 3

Sun. Nov 10, 2024 10:30 AM - 11:30 AM ポスター会場 (大ホール)

[PG-3-2] 自己導尿導入適応の可能性がある高齢女性の適応評価

排尿ケアチーム作業療法士の役割

佐々木 露葉1,2, 栃倉 未知1, 小林 隆司3, 小内 友紀子4 (1.麻生リハビリ総合病院, 2.東京都立大学大学院 作業療法科学域, 3.兵庫医科大学 リハビリテーション学部作業療法学科, 4.ときわ会常磐病院 泌尿器科)

【はじめに】2016年より排尿自立指導料,2020年より排尿自立支援加算が開始された.排尿ケアチームの具体的な活動の報告は理学療法(以下PT)・看護(以下Ns.)では見られるが,作業療法(以下OT)では少ない.当院では排尿ケアチームのOTが,必要に応じて介入や評価を行っている.今回,清潔間歇自己導尿(以下CIC:Clean Intermittent Catheterization)の導入が必要となる可能性のある女性に対して,羞恥心に配慮して評価を行った.女性の自己導尿は,尿道口を探すことが困難,下衣を下す範囲が広い,開脚の必要性が高い等男性に比較すると難易度が高いと言われている(CIC認定セミナー資料2022).その評価のタイミングや方法の工夫について報告する.
【対象】当院にX年Y月Z日に発熱,視神経脊髄炎の診断(C7~Th10長大病変,Th10~12硬膜外血腫)で,リハビリテーション継続目的で回復期病棟に入院された70歳代女性(以下Pt). 運動は両下肢不全麻痺(右足関節のみ背屈可能),感覚はTh8以下脱失,膀胱直腸障害あり.BMI24.8.基本動作は重介助,移乗は2人介助.ADLはベッド上にて食事は自立.尿道留置カテーテル挿入中,おむつ内排泄.更衣は重介助,入浴は機械浴であった.認知機能は問題ないが,羞恥心・不安が強く,障害受容は不十分であった.夫と二人暮らしだが夫は高齢のため,介護が必要な時は施設入所を希望されていた.倫理的配慮として,入院時に書面と口頭にて承諾を得て,当院の倫理委員会にて承認を得た.
【排尿ケアチームOT評価の流れ】尿道留置カテーテル抜去後自尿があるも,残尿が100mlを超えており,CIC適応の可能性があった.Ptは肥満や基本動作未定着のため,医師より評価依頼があった.担当OTは男性のため,排尿ケアチームの女性OTが評価を行った.説明は医師(以下Dr.),Ns,が行った.
【OT評価の工夫点】担当OTより患者情報を確認し,羞恥心に配慮するため,下衣を脱がずに陰部にリーチし,尿道口を目視する方法を検討した.その結果,半ズボンに尿道口の位置をマーキングし,実際にそれをベッド上で着脱可能か,手鏡を設置できるか,設置した手鏡で尿道口を目視してリーチ可能かを評価することとした.
 手順は,OTが骨盤の模型で尿道口の場所を提示,半ズボンの尿道口を更に提示.OTが半ズボンを履き,尿道口にリーチして見せてから,実際にPtに半ズボンを履いていただいた.
【結果】介助を要した点や追加で下肢をベッドサイドに固定するベルトを抽出し,これらの結果を排尿ケアチームと担当OTに共有した.後に担当OTより,「丁寧に説明してもらい,動作も不安なくできた」とPtのコメントがあったと聞いた.その後,自尿が増え残尿が殆どなくなったためCICは適応外となった.退院後の排泄スタイルは,移乗に軽介助を要していたため,おむつ内失禁となった.
【考察】CIC適応評価結果は実生活には必要なかった.しかし,事前に評価を行うことで退院後の排泄スタイルの第二選択を確保できていたことは,医療者側として安心材料となり,Ptには,トイレ排泄へのモチベーションになっていた.今回,Ptが女性であったため女性OTが評価を実施,下衣を脱ぐ必要のない方法を検討したことが,奏功したと考える.栗田らは「身体機能が良好でも,意欲低下が排尿自立を阻害したケースがある」(2017)と報告しているように,排泄スタイルを確立するためにPtの心情に配慮することは重要と考える.