[PH-1-3] アルコール依存症患者の再飲酒のリスク要因の検討
断酒生活を継続するための支援を考える
【はじめに】アルコール依存症患者は再飲酒率が高く,入院・通院治療による断酒の導入以降,その継続が不可欠である.断酒を継続するための社会資源の一つにデイケアがあるが,通所中に再飲酒を行い,入退院を繰り返す患者も少なくない.再飲酒行動には様々な要因の関与が考えられるが,断酒生活の継続の支援において,それらの検討は重要である.
【目的】アルコール依存症患者の再飲酒のリスク要因を検討し,断酒を継続しながら地域生活を送るための支援のあり方を考察する.
【方法】大阪府のアルコール依存症専門病院のデイケアに通所する患者のうち,研究参加への同意が得られた男性25名を対象に,アルコール再飲酒リスク評価尺度(Alcohol Relapse Risk Scale;以下,ARRS,Ogai et al., 2009)を用いて質問紙調査を実施した.ARRSは,32項目3件法の自記式であり,各項目は「刺激への脆弱性」「感情面の問題」「飲酒の衝動性」「酒害認識の不足」「飲酒へのポジティブな期待」の下位尺度で構成される.調査では,対象者の基本属性(年齢,同居者の有無,通所月数,調査前直近3か月間の通所日数)も取得した.
本研究は大阪河﨑リハビリテーション大学の研究倫理審査委員会の承認を得た上で実施した.
【結果】対象者の平均年齢は66.12歳(SD=11.48;範囲=40−90),平均通所月数は54.51か月(SD=55.98;範囲=2.12−222.83),直近3か月間の平均通所日数は35.08日(SD=20.01;範囲=2−70)であった.家族構成については,単身が13名,同居者ありが12名であった.年齢,通所月数,直近3か月間の通所日数を説明変数,ARRSの合計点を目的変数として重回帰分析を実施した結果,有意な結果が示された(R2= .53, F(3,21)= 8.01,p= .001).その詳細として,年齢は有意であり (t=-3.76, p= .001) ,通所月数(t=-1.87, p= .08),直近通所日数(t=1.79, p= .09 )は有意傾向にとどまった.ARRSの下位尺度についても,5項目全てにおいて年齢のみが有意であった.次に,年齢と同居者の有無を説明変数,ARRSの合計点を目的変数として重回帰分析を実施したところ,年齢のみが有意であった(t= -2.34, p= .03).目的変数を下位尺度の「刺激への脆弱性」にした場合では,年齢と同居者の有無に有意な交互作用がみられた(t=-2.22, p= .04).同居者ありにおける年齢は有意ではなかったが,単身では年齢が有意であり,年齢が1歳上がると脆弱性のリスクが0.49下がることが示された.
【考察】アルコール依存症者による再飲酒行動のリスク要因として年齢が検出され,年齢が上がることで再飲酒のリスクが下がることが示唆された.刺激脆弱性においては年齢と同居者の有無の交互作用が認められ,単身の場合は,年齢が上がることでアルコールに対する脆弱性が低下するが,同居者ありの場合は低下しないことが示された.さらに,デイケアへの通所期間の長さや通所日数の多さは,それだけでは再飲酒を防ぐための直接的な要因とはならないことが推察された.これらの結果から,特に同居者ありのアルコール依存症患者に対しては,一層の支援を図ることが必要であると考えられる.また,デイケアやその他の社会資源(断酒会,AA等の自助グループ)に繋ぐ(繋いでいる)だけでは不十分であり,そこでの参加状況の評価や,仲間との交流の促し,作業活動プログラムの提供などが地域における断酒生活の継続を支えるための一助となるだろう.
【目的】アルコール依存症患者の再飲酒のリスク要因を検討し,断酒を継続しながら地域生活を送るための支援のあり方を考察する.
【方法】大阪府のアルコール依存症専門病院のデイケアに通所する患者のうち,研究参加への同意が得られた男性25名を対象に,アルコール再飲酒リスク評価尺度(Alcohol Relapse Risk Scale;以下,ARRS,Ogai et al., 2009)を用いて質問紙調査を実施した.ARRSは,32項目3件法の自記式であり,各項目は「刺激への脆弱性」「感情面の問題」「飲酒の衝動性」「酒害認識の不足」「飲酒へのポジティブな期待」の下位尺度で構成される.調査では,対象者の基本属性(年齢,同居者の有無,通所月数,調査前直近3か月間の通所日数)も取得した.
本研究は大阪河﨑リハビリテーション大学の研究倫理審査委員会の承認を得た上で実施した.
【結果】対象者の平均年齢は66.12歳(SD=11.48;範囲=40−90),平均通所月数は54.51か月(SD=55.98;範囲=2.12−222.83),直近3か月間の平均通所日数は35.08日(SD=20.01;範囲=2−70)であった.家族構成については,単身が13名,同居者ありが12名であった.年齢,通所月数,直近3か月間の通所日数を説明変数,ARRSの合計点を目的変数として重回帰分析を実施した結果,有意な結果が示された(R2= .53, F(3,21)= 8.01,p= .001).その詳細として,年齢は有意であり (t=-3.76, p= .001) ,通所月数(t=-1.87, p= .08),直近通所日数(t=1.79, p= .09 )は有意傾向にとどまった.ARRSの下位尺度についても,5項目全てにおいて年齢のみが有意であった.次に,年齢と同居者の有無を説明変数,ARRSの合計点を目的変数として重回帰分析を実施したところ,年齢のみが有意であった(t= -2.34, p= .03).目的変数を下位尺度の「刺激への脆弱性」にした場合では,年齢と同居者の有無に有意な交互作用がみられた(t=-2.22, p= .04).同居者ありにおける年齢は有意ではなかったが,単身では年齢が有意であり,年齢が1歳上がると脆弱性のリスクが0.49下がることが示された.
【考察】アルコール依存症者による再飲酒行動のリスク要因として年齢が検出され,年齢が上がることで再飲酒のリスクが下がることが示唆された.刺激脆弱性においては年齢と同居者の有無の交互作用が認められ,単身の場合は,年齢が上がることでアルコールに対する脆弱性が低下するが,同居者ありの場合は低下しないことが示された.さらに,デイケアへの通所期間の長さや通所日数の多さは,それだけでは再飲酒を防ぐための直接的な要因とはならないことが推察された.これらの結果から,特に同居者ありのアルコール依存症患者に対しては,一層の支援を図ることが必要であると考えられる.また,デイケアやその他の社会資源(断酒会,AA等の自助グループ)に繋ぐ(繋いでいる)だけでは不十分であり,そこでの参加状況の評価や,仲間との交流の促し,作業活動プログラムの提供などが地域における断酒生活の継続を支えるための一助となるだろう.