[PH-8-3] メタ認知トレーニングの実践報告と多職種連携
【背景】
当院は160床からなる単科の精神科病院である.入院患者は,在院期間が15年以上の長期入院の統合失調症患者が多く,65歳以上の高齢者が多い.患者が達成感や自信を得たり,生活のしづらさを改善するのを目的に作業療法(以下OT)を行ってきた.近年,メタ認知の低下が生活のしづらさと関連している1)ということが報告されており,認知機能を高める治療法としてメタ認知トレーニング(以下MCT)を導入することとなった.
【目的】
長期入院している統合失調症患者へのMCT導入の経緯と実践を紹介し,MCT参加者の主観的体験や他職種に与えた効果を通してMCTプログラムの意義を検討する.
【実践内容】
対象:当院に1年以上入院している統合失調症長期入院患者で,OTが実施されている患者とした.紙面と口頭でMCTの概要,治療的意義を説明し,21名の参加の同意を文書で得た.
院内の手続き:新しいプログラムの導入にあたり,医師,病棟看護師(以下Ns),精神保健福祉士(以下PSW),公認心理師(以下CP)にMCTの概要や治療的意義を説明した.
治療構造:MCTは1グループ5~8名の患者と,リーダーとコリーダーの作業療法士で,パワーポイント資料2)を用いて各モジュール1時間のセッションを週1回,8モジュール×2クール(4か月間)実施した.MCT実施後にMCT-J参加者満足度評価3),当院独自に作成したアンケート:①MCTの意義,②生活への影響,③感想を聴取した.また,実践に当たり当院の倫理審査を受けている.
【結果】
患者は2021年10月~2022年2月に8名,2022年2月~6月に8名,2022年6月~10月に5名が参加した.出席率はいずれも80%以上で中断者はいなかった.参加者満足度評価では「楽しんで行えた」,「悩みは減少した」等の肯定的な結果が得られた反面,MCTの目的や理論の理解は困難であったという否定的な結果もあった.アンケート結果①意義:他者の意見を聞くこと,皆で話し合うこと,②生活への影響:自分の意見を言えた,自分と違う考え方もあることに気付けた,③感想:楽しみながら参加できた,人それぞれの意見があることに気づけたと,回答があった.
他職種はPSW,CPはMCT実施中の様子に関心を持ち,プログラムに参加することで,患者の理解を深めた.また,他職種連携でのプログラムの提案がなされた.Nsでは患者がホームワーク3)を病棟へ持ち帰ることによってMCTへの理解が深まり,メタ認知の視点での働きかけの一助となった.
【考察】
MCTの導入により患者の生活のしづらさを,認知機能の視点から考えることができ,作業遂行や認知機能へ働きかけることの重要性を確認できた.長期入院患者へ構造化された根拠のある治療を行うことによって効果を高められることが示唆され,他のプログラムにも考慮していく必要があると考える.また,OTの治療的視点やアプローチを他職種が知る機会となった.
【参考文献】
1)Kyouhei Fujii, Masayoshi Kobayashi,et al.Effectiveness of Metacognitive Trainingfor Long-Term Hospitalized Patients with Schizophrenia:A Pilot Study with a Crossover Desigh.Ajian J Occup Ther17:45-52,2021.
2)九州大学 https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/
3)一般社団法人MCT-J Network http://mct-j.jpn.org/mctjshoukai.html
当院は160床からなる単科の精神科病院である.入院患者は,在院期間が15年以上の長期入院の統合失調症患者が多く,65歳以上の高齢者が多い.患者が達成感や自信を得たり,生活のしづらさを改善するのを目的に作業療法(以下OT)を行ってきた.近年,メタ認知の低下が生活のしづらさと関連している1)ということが報告されており,認知機能を高める治療法としてメタ認知トレーニング(以下MCT)を導入することとなった.
【目的】
長期入院している統合失調症患者へのMCT導入の経緯と実践を紹介し,MCT参加者の主観的体験や他職種に与えた効果を通してMCTプログラムの意義を検討する.
【実践内容】
対象:当院に1年以上入院している統合失調症長期入院患者で,OTが実施されている患者とした.紙面と口頭でMCTの概要,治療的意義を説明し,21名の参加の同意を文書で得た.
院内の手続き:新しいプログラムの導入にあたり,医師,病棟看護師(以下Ns),精神保健福祉士(以下PSW),公認心理師(以下CP)にMCTの概要や治療的意義を説明した.
治療構造:MCTは1グループ5~8名の患者と,リーダーとコリーダーの作業療法士で,パワーポイント資料2)を用いて各モジュール1時間のセッションを週1回,8モジュール×2クール(4か月間)実施した.MCT実施後にMCT-J参加者満足度評価3),当院独自に作成したアンケート:①MCTの意義,②生活への影響,③感想を聴取した.また,実践に当たり当院の倫理審査を受けている.
【結果】
患者は2021年10月~2022年2月に8名,2022年2月~6月に8名,2022年6月~10月に5名が参加した.出席率はいずれも80%以上で中断者はいなかった.参加者満足度評価では「楽しんで行えた」,「悩みは減少した」等の肯定的な結果が得られた反面,MCTの目的や理論の理解は困難であったという否定的な結果もあった.アンケート結果①意義:他者の意見を聞くこと,皆で話し合うこと,②生活への影響:自分の意見を言えた,自分と違う考え方もあることに気付けた,③感想:楽しみながら参加できた,人それぞれの意見があることに気づけたと,回答があった.
他職種はPSW,CPはMCT実施中の様子に関心を持ち,プログラムに参加することで,患者の理解を深めた.また,他職種連携でのプログラムの提案がなされた.Nsでは患者がホームワーク3)を病棟へ持ち帰ることによってMCTへの理解が深まり,メタ認知の視点での働きかけの一助となった.
【考察】
MCTの導入により患者の生活のしづらさを,認知機能の視点から考えることができ,作業遂行や認知機能へ働きかけることの重要性を確認できた.長期入院患者へ構造化された根拠のある治療を行うことによって効果を高められることが示唆され,他のプログラムにも考慮していく必要があると考える.また,OTの治療的視点やアプローチを他職種が知る機会となった.
【参考文献】
1)Kyouhei Fujii, Masayoshi Kobayashi,et al.Effectiveness of Metacognitive Trainingfor Long-Term Hospitalized Patients with Schizophrenia:A Pilot Study with a Crossover Desigh.Ajian J Occup Ther17:45-52,2021.
2)九州大学 https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/
3)一般社団法人MCT-J Network http://mct-j.jpn.org/mctjshoukai.html