第58回日本作業療法学会

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ポスター

発達障害

[PI-1] ポスター:発達障害 1

Sat. Nov 9, 2024 10:30 AM - 11:30 AM ポスター会場 (大ホール)

[PI-1-4] 保育クラス運営に対する環境調整を主としたコンサルテーションの取り組み

環境調整で子どもと保育者を元気に!

丹葉 寛之1, 中岡 和代2 (1.関西福祉科学大学 保健医療学部 リハビリテーション学科 作業療法専攻, 2.大阪公立大学大学院 リハビリテーション学研究科)

【はじめに】現在,通常学級に在籍している小中学校の児童生徒の8.8%が特別な教育的支援が必要であると言われていおり,外部専門家として作業療法士による学校への介入が増えている.また,授業中に立ち歩く,授業を妨害するなど小一プロブレムが問題視され,幼保小連携を行い義務教育及びその後の学校教育の基礎を幼児期から養うことが推奨されている.今後,幼児期から学童期への移行をスムーズにするために保育所等にも作業療法士による介入を進めていく必要があると考えられる.
【目的】今回,認定子ども園園長及び年長クラス担任から「子ども同士の揉め事が絶えず保育運営が成り立たない」という相談がありコンサルテーションを実施した.P-E-Oモデルを用いた分析,支援方法の提案を行った結果,1回のコンサルテーションで変化が見られたので報告する.本研究は倫理委員会の承認,施設長の同意を得て実施した.
【対象と方法】年長児クラス(28名)の担任3名と園長に対し,2022年6月と11月にコンサルテーションを実施した.園長から保育の様子や困り感を聴取後,保育活動を2時間程度観察し,その後,担任と園長から再聴取及びフィードバックを行った.困り感は「トラブルにより個々の対応が多くなり,クラスで一つの集団として全員で取り組むことが少ない」「一人の子どもの行動に他児がつられて目的とした活動が成立しない」などであった.
【分析と支援方法の提案】P:担任は一生懸命子どもに関わるが,個々の対応に追われ主担が誰かわからない.1人1人の子どもに熱心に向き合っているが全体が見られない.声に張りがなく子どもに声が届かない.余裕のない表情.E:子どもの大きな声がハウリングし刺激が多く担任の声が聞こえない.保育室は雑然として空間の構造化ができていない.モノが多く机と机の間隔が狭くトラブルの原因になっている.圧倒的に「動」の活動が多く常に子どもが動いている.O:子どもも担任も保育活動を楽しみたいが集団活動として成立しない.個々の対応により活動が中断する.子どもは配膳の時に列に並ぶなどのルールに従うことができるが,一斉に給食がスタートできない.支援方法の提案は①物理的環境を整える,②人的環境を整えることを行った.①は保育環境を整えることで小さなトラブル軽減や注意集中を高めることを期待し,保育室内の構造化,不必要なものを退けてぶつからないような余裕のある空間を作ることを提案した.②は集団として良い行動(見本になる行動)を作ることで,個々に課題のある子どもの行動が変わることを期待し,子どもの動きに「静と動」をつけ,強弱をつける.特に「静」の動きを強化する.そのためにわざと小さな声で喋ることや,生活の中にも調整する動き(水筒をフックに掛ける等)を入れていく.集団をまとめるために声を揃える,一斉に静かになるなど,同じ行動ができるような指示,関わりをすることを提案した.
【結果と考察】11月の保育活動の観察では,保育室を構造化しシンプルになっていた.子ども同士の接触やトラブルが軽減している.活動全体に「静と動」のメリハリがつき,子どもの声を意図的に出させることに取り組み,担任の声もよく通るようになっている.担任から全体保育が進めやすくなった,一斉に声がそろうようになったなどの変化を聞くことができた.今回のコンサルテーションでは,保育者の負担にならず,すぐにできそうな支援内容の提案,個々の支援ではなく,集団を整える支援方法,環境因子への働きかけを提案し,保育者に成功体験を感じてもらえたことにより,保育クラス運営に変化が見られたと考えられる.