第58回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

発達障害

[PI-2] ポスター:発達障害 2 

2024年11月9日(土) 11:30 〜 12:30 ポスター会場 (大ホール)

[PI-2-3] 作業療法士による学童保育コンサルテーション

衝動性があり屋外に出て入室困難な事例への介入

平野 萌1, 八重樫 貴之2 (1.株式会社リニエR 人財育成推進課, 2.株式会社リニエR 子ども未来事業本部教育サービス推進室)

【はじめに】学童保育とは,共働きや一人親の小学生の放課後に児童指導員を配置し,その間の子どもの生活を保障する事業である.令和4年5月時点では,全国で26,683カ所,利用児童数は1,392,158人となり,急激に増加している.岡山県の調査では,学童保育利用児童総数に対する障がい児数の比率は8.68%であり,専門職から月1回程,実際の現場で直接,具体的な対応方法についてアドバイスを受けたいという現場の声が明らかになった.2016年より岡山県学童保育連絡協議会を中心に,学童保育に作業療法士(以下,OT)が訪問しコンサルテーションを行う動き(以下,OTコンサル)が全国各地で行われており,筆者もその担い手の1人である.今回,衝動性があり外に出てしまい入室困難な事例に対し,OTコンサルを実施した.
【目的と意義】上記事例に対するOTコンサルの介入効果を明らかにする事であり,その成果は,今後のOTコンサル支援の一助になると考えた.
【倫理的配慮】本研究は,社内倫理委員会の承認(承認番号2086)を得て実施.また開示すべきCIOは無い.
【症例】9歳女児.診断名なし.毎日A学童保育に通っており,下校後フリータイム,おやつ,外遊び,帰りの会,その日の帰宅時間に合わせて帰宅といった流れであった.指導員の困り事は「入室できない」「雨の日でも勝手に外に出てしまい蛇口の水や水たまりで遊び始めるため,指導員が対応にとられてしまう」「室内遊びでは,他児の作品を壊したり,机に登ったりする」「指導員が止めようとすると暴れ,怪我した事もある」等であった.児が外に出ると,指導員が3名走って追いかけ,10分以上入室困難であり,それにつられて外に出る児童もいた.また,室内では動き回り,興味のある遊びを選択し集中して取り組む事ができずADHDの発達特性が観察された.
【方法】2023年4月~2024年1月に,A学童保育へ月1回4時間訪問し,児の行動観察および指導員への助言を実施.内容は,児の発達特性の説明,環境調整,得意を活かした作業,感覚欲求を満たす作業の提案.介入前後の行動観察から比較検証し,介入効果について考察した.
【経過】指導員へ児の発達特性を説明し,環境調整としてドアや窓に補助錠をつける提案をした.また,動き回る感覚欲求を満たす遊びとしてトランポリンの導入を提案.児が興味のありそうな遊びや役割の検討,それを指導員介入のもと他児と行い,物を壊して気をひくのではなく,室内でも他児と穏やかに過ごせるよう促した.外に出た際には,対応者を決め複数人で追わない,「〇時になったら入るよ」と予告し入室を促すよう提案.切り替え困難な時は,信頼する指導員と静かな環境で気持ちを話す機会を作った.水へのこだわりに対しては,室内でできる足湯の導入を提案.
【結果】補助錠により,外に出る回数が減った.トランポリンは導入のタイミングを迷う声があり未実施.室内遊びではカードゲームを行い,慣れてくると指導員がいなくても他児と一緒に遊べるようになった.他児と帰りの会で紙芝居係を担えるようになった.外に出た後,予告により入室できる日もあった.足湯は最初ボタンを触る等落ち着かなかったが,テーブルを導入し折り紙やお話をしながらつかることでリラックスして過ごせるようになった.
【考察】当初,突発的に外に出てしまい,室内では他害もある児の対応に指導員らが振り回されていた.そのため,児の特性を踏まえ対応策を提案した.その事が,児が外に出る頻度を減らし,室内でも楽しみや役割をもって他児と過ごせる時間を増やす事に繋がった.OTコンサルは,指導員の児への理解を深め,効果的な支援をする一助になり得ると考えられた.