[PI-3-6] 自閉スペクトラム症児の感覚反応が箸操作獲得に与える要因に関する研究
【はじめに】本研究の目的は,自閉スペクトラム症(ASD)児やその疑いがある児における感覚過敏や感覚鈍麻が箸操作に与える影響について明らかにすることである.ASD児の不器用さは近年注目を浴びており,こうした不器用さは様々な日常生活に影響を及ぼすことが考えられる.ASD児の箸操作の特徴として①箸を開くときの一定しない母指の動き,②撓側と尺側の分離運動の未熟さ,③動きが一定しない「不安定」な指の動きによる箸操作があることが明らかにされている(田中ら,2019).また,大歳ら(2023)はASD児やその疑いがある児の幼児群では72.7%,学齢児群では85.1%の児に何らかの感覚の偏りがあったことを報告している.これらのことから,ASD児における箸操作における不器用さは,運動と感覚の両面の影響を受けている可能性が考えられる.そこで,本研究ではASD児の感覚が箸操作に及ぼす影響について着目し,箸操作が自立しているASD児やその疑いがある児と,自立していないASD児とその疑いがある児の感覚特性の違いを明らかにする.
【方法】対象は児童発達支援事業と放課後等デイサービス事業を行う2施設を利用するASDの診断を受けている,もしくはその疑いがある児で,年長から小学校2年生の児36名とした.分析には日本版感覚プロファイル(SP-J)の結果と日常の療育記録を用い,目的変数をSP-J評価時点において対象児の記録より箸操作に関する課題に「補助具有り」もしくは「補助具無し」で取り組んでいる,すでに課題を「卒業」している,箸操作に関する課題を「非実施」の4群とし,SP-Jの評価結果である象限,セクション,因子の各項目を説明変数とし,「補助具有り」を基準カテゴリと設定し,多項ロジスティック回帰分析にて95%信頼区間を算出した.
【倫理的配慮】本研究は筆者が所属する「人を対象とする研究」倫理委員会の承認(2023-41-B)を受けている.
【結果】「補助具有り」を基準カテゴリとし象限別における95%信頼区間で有意水準を満たしたものは,「自助具無し」が感覚探求,「非実施」で感覚回避であった.同様にセクション別では,「補助具無し」は全ての項目,「卒業」で触覚,「非実施」で聴覚,前庭覚,耐久性・筋緊張に関する感覚処理,身体の位置や動きに関する両性機能,情動反応や活動レベルに影響する視覚の調整機能であった.因子別では,「補助具無し」では耐久性の低さ,不注意,低登録,感覚過敏,寡動,微細であり,「卒業」では寡動,「非実施」では情動反応,耐久性の低さ,低登録,感覚過敏であった.
【考察】本研究ではSP-Jを用いてASD児やその疑いがある児に対して,感覚が各児の個別課題における箸操作に及ぼす影響について箸操作課題における「補助具有り」を基準に検討した.その結果,象限,セクション,因子の各項目で有意となる項目を抽出することができた.箸操作の獲得は日本においては文化的な意味や社会的な意味をもつ側面がある.そのため,保護者等からのニーズにも箸操作の獲得は多くみられる.本研究のように感覚に着目して分析することは,感覚の影響によって日常生活や学校生活において困難さを示す児の成長を支援していくためにも今後より一層発展させていく必要があると考える.一方で,本研究における箸操作課題における段階づけは明確な基準のものではなく,各児の様々な状況にあわせたものであることは限界ともいえる.そのため,今後は段階づけを明確にし,さらに対象児数を増やし,より詳細な検討ができるようにしていく必要があると考える.
【方法】対象は児童発達支援事業と放課後等デイサービス事業を行う2施設を利用するASDの診断を受けている,もしくはその疑いがある児で,年長から小学校2年生の児36名とした.分析には日本版感覚プロファイル(SP-J)の結果と日常の療育記録を用い,目的変数をSP-J評価時点において対象児の記録より箸操作に関する課題に「補助具有り」もしくは「補助具無し」で取り組んでいる,すでに課題を「卒業」している,箸操作に関する課題を「非実施」の4群とし,SP-Jの評価結果である象限,セクション,因子の各項目を説明変数とし,「補助具有り」を基準カテゴリと設定し,多項ロジスティック回帰分析にて95%信頼区間を算出した.
【倫理的配慮】本研究は筆者が所属する「人を対象とする研究」倫理委員会の承認(2023-41-B)を受けている.
【結果】「補助具有り」を基準カテゴリとし象限別における95%信頼区間で有意水準を満たしたものは,「自助具無し」が感覚探求,「非実施」で感覚回避であった.同様にセクション別では,「補助具無し」は全ての項目,「卒業」で触覚,「非実施」で聴覚,前庭覚,耐久性・筋緊張に関する感覚処理,身体の位置や動きに関する両性機能,情動反応や活動レベルに影響する視覚の調整機能であった.因子別では,「補助具無し」では耐久性の低さ,不注意,低登録,感覚過敏,寡動,微細であり,「卒業」では寡動,「非実施」では情動反応,耐久性の低さ,低登録,感覚過敏であった.
【考察】本研究ではSP-Jを用いてASD児やその疑いがある児に対して,感覚が各児の個別課題における箸操作に及ぼす影響について箸操作課題における「補助具有り」を基準に検討した.その結果,象限,セクション,因子の各項目で有意となる項目を抽出することができた.箸操作の獲得は日本においては文化的な意味や社会的な意味をもつ側面がある.そのため,保護者等からのニーズにも箸操作の獲得は多くみられる.本研究のように感覚に着目して分析することは,感覚の影響によって日常生活や学校生活において困難さを示す児の成長を支援していくためにも今後より一層発展させていく必要があると考える.一方で,本研究における箸操作課題における段階づけは明確な基準のものではなく,各児の様々な状況にあわせたものであることは限界ともいえる.そのため,今後は段階づけを明確にし,さらに対象児数を増やし,より詳細な検討ができるようにしていく必要があると考える.