[PI-5-4] 重症心身障害者に対するベッド頭部挙上姿勢(head of bed elevation:HOBE)における姿勢支持の有無が体圧分布に及ぼす影響
【はじめに】
重症心身障害児・者は,脊柱や四肢の変形拘縮を有するものが多く,24時間を通じた姿勢管理が重要である.姿勢管理の方法の一つにベッド頭部挙上姿勢(以下,HOBE)があり,ベッド上で座位保持に近いメリットがある一方,姿勢の崩れによる褥瘡リスクの向上といったデメリットも報告されている.そのため,臨床ではその活用に躊躇する場面も多いが,クッションなどを用いた姿勢支持により安定した姿勢保持が可能な対象者もいる.そこで本研究では,姿勢の崩れを示す指標の一つである体圧分布を用い,重症心身障害者(以下,重心)のHOBE時の体圧分布の特徴を調査し,角度挙上に伴って生じる変化および姿勢支持を行った場合との相違を明らかにする.なお,本研究は所属施設の倫理委員会の承認を受け,発表にあたって対象者の保護者に対して研究について説明し同意を得た.
【実験方法】
重心3名(GMFCS V,年齢28〜62歳)を対象とした.体圧の測定には圧力分布測定装置BodiTrak2(タカノ株式会社)を使用した.実験姿勢は「0°」と「45°角度挙上位(以下,45°)」,「姿勢支持あり0°(以下,支持0°)」「姿勢支持あり45°挙上位(以下,支持45°)」の4姿勢とした.被験者は頭・膝裏にのみクッションを配置した姿勢支持なし条件と,体幹のねじれに沿って姿勢支持用のクッションを配置した姿勢支持あり条件間で,角度挙上時の体圧分布の違いを比較した.姿勢は1姿勢につき10分間保持し,後半5分間の体圧データのうち,1分毎のデータを抽出して平均した.体圧データは10〜100mmHgの範囲を分析対象とした.全身の体圧データから平均圧(mmHg),センシングエリア(以下,エリア)(cm2)を分析した.加えて,実験時の静止画からPosture and Postural Ability Scale(以下,PPAS)の背臥位のスコアを0〜12点で採点し,6点以下を中等度,2点以下を重度として非対称性を評価した.
【結果】
結果の数値は0°→45°,支持0°→支持45°の順に示す.PPASスコアは重心Aで4点→3点,5点→5点,重心Bで8点→5点,9点→6点,重心Cで4点→0点,7点→4点であった.重心A・Cは0°の姿勢で中等度以上の非対称性を有しており,全対象者の姿勢支持なし条件で角度挙上に伴う非対称性の増加が確認された.同角度間における姿勢支持の有無の比較から,姿勢支持による非対称性の軽減が確認された.体圧分布から,重心Aのエリアは1400.67→1669.83, 2130.17→2228.50,平均圧は21.67→27.83,18.33→20.83であった.重心Bのエリアは2557.83→2371.00,2505.00→2888.17,平均圧は20.67→17.17,18.50→19.67であった.重心Cのエリアは2647.33→2457.83,3066.17→3704.50,平均圧は26.50→40.00,20.83→25.00であった.姿勢支持の有無の比較から,エリアは全対象者が姿勢支持あり条件で拡大した.重心B・Cにおける姿勢支持なし条件内では角度挙上によるエリアが狭小化したが,姿勢支持あり条件内では全対象者が角度挙上で拡大した.平均圧は重心A・Cで姿勢支持あり条件で低下し,全対象者で0°よりも支持45°が低値を示した.
【考察】
姿勢支持によりPPASスコアが向上したことから,今回の姿勢支持は非対称性の軽減に有効であったと言える.その効果は,姿勢支持の有無で比較した体圧のエリアの拡大,平均圧の低下によって示された.また,角度挙上時の結果から,姿勢支持によるエリアの拡大が得られ,平均圧も一定の分散がなされていることが考えられる.以上から,HOBE時に姿勢を支持することは,姿勢支持面の拡大と圧分散に寄与し,姿勢の非対称性の軽減にも有用であると考える.
重症心身障害児・者は,脊柱や四肢の変形拘縮を有するものが多く,24時間を通じた姿勢管理が重要である.姿勢管理の方法の一つにベッド頭部挙上姿勢(以下,HOBE)があり,ベッド上で座位保持に近いメリットがある一方,姿勢の崩れによる褥瘡リスクの向上といったデメリットも報告されている.そのため,臨床ではその活用に躊躇する場面も多いが,クッションなどを用いた姿勢支持により安定した姿勢保持が可能な対象者もいる.そこで本研究では,姿勢の崩れを示す指標の一つである体圧分布を用い,重症心身障害者(以下,重心)のHOBE時の体圧分布の特徴を調査し,角度挙上に伴って生じる変化および姿勢支持を行った場合との相違を明らかにする.なお,本研究は所属施設の倫理委員会の承認を受け,発表にあたって対象者の保護者に対して研究について説明し同意を得た.
【実験方法】
重心3名(GMFCS V,年齢28〜62歳)を対象とした.体圧の測定には圧力分布測定装置BodiTrak2(タカノ株式会社)を使用した.実験姿勢は「0°」と「45°角度挙上位(以下,45°)」,「姿勢支持あり0°(以下,支持0°)」「姿勢支持あり45°挙上位(以下,支持45°)」の4姿勢とした.被験者は頭・膝裏にのみクッションを配置した姿勢支持なし条件と,体幹のねじれに沿って姿勢支持用のクッションを配置した姿勢支持あり条件間で,角度挙上時の体圧分布の違いを比較した.姿勢は1姿勢につき10分間保持し,後半5分間の体圧データのうち,1分毎のデータを抽出して平均した.体圧データは10〜100mmHgの範囲を分析対象とした.全身の体圧データから平均圧(mmHg),センシングエリア(以下,エリア)(cm2)を分析した.加えて,実験時の静止画からPosture and Postural Ability Scale(以下,PPAS)の背臥位のスコアを0〜12点で採点し,6点以下を中等度,2点以下を重度として非対称性を評価した.
【結果】
結果の数値は0°→45°,支持0°→支持45°の順に示す.PPASスコアは重心Aで4点→3点,5点→5点,重心Bで8点→5点,9点→6点,重心Cで4点→0点,7点→4点であった.重心A・Cは0°の姿勢で中等度以上の非対称性を有しており,全対象者の姿勢支持なし条件で角度挙上に伴う非対称性の増加が確認された.同角度間における姿勢支持の有無の比較から,姿勢支持による非対称性の軽減が確認された.体圧分布から,重心Aのエリアは1400.67→1669.83, 2130.17→2228.50,平均圧は21.67→27.83,18.33→20.83であった.重心Bのエリアは2557.83→2371.00,2505.00→2888.17,平均圧は20.67→17.17,18.50→19.67であった.重心Cのエリアは2647.33→2457.83,3066.17→3704.50,平均圧は26.50→40.00,20.83→25.00であった.姿勢支持の有無の比較から,エリアは全対象者が姿勢支持あり条件で拡大した.重心B・Cにおける姿勢支持なし条件内では角度挙上によるエリアが狭小化したが,姿勢支持あり条件内では全対象者が角度挙上で拡大した.平均圧は重心A・Cで姿勢支持あり条件で低下し,全対象者で0°よりも支持45°が低値を示した.
【考察】
姿勢支持によりPPASスコアが向上したことから,今回の姿勢支持は非対称性の軽減に有効であったと言える.その効果は,姿勢支持の有無で比較した体圧のエリアの拡大,平均圧の低下によって示された.また,角度挙上時の結果から,姿勢支持によるエリアの拡大が得られ,平均圧も一定の分散がなされていることが考えられる.以上から,HOBE時に姿勢を支持することは,姿勢支持面の拡大と圧分散に寄与し,姿勢の非対称性の軽減にも有用であると考える.