[PI-5-5] 重症心身障害者に対する個別活動の増加が与える影響
【はじめに】生活介護事業所では,身の回りの生活やコミュニケーション,仕事などの生産活動全般に支援を必要とする.しかし,支援する側の人手不足も否めず,利用者に対して十分に関わる時間を提供することも難しいこともしばしば見受けられる.今回,個別で関わる時間を増やしたことで経口摂取が安定し,意思表出の機会が増した症例を報告する.対象となる利用者・家族には演題発表に関する同意を得ている.
【症例】30歳代女性.診断名は脳性麻痺,知的障害.障害支援区分は6.身体障害者手帳1種1級.生後3か月より発達の遅れを指摘される.7か月よりてんかん発作がみられ,半年間入院治療を受けた.3歳で座位可能となるも,上下肢機能全廃のため全介助が必要.小中高と養護学校を経て,当法人の通所施設とグループホーム(以下GH)に入所し現在に至る.X-7年食事が摂れず,てんかん薬を飲むことができない状態が続いた.その1年後体重が27kgになったことをきっかけに胃瘻造設の手術を受けた.
基本動作は座位や立位は支えが必要,ADLは全介助.大島分類2.上下肢末梢部や口腔内など感覚過敏のため,活動中は手掌を使用する物品の把持が苦手.コミュニケーションは,手足の動きや表情の変化で読み取れることがある.好きなことは横になってラジオを聴くこと,抱っこをしてもらうこと.家族の意向は,表情や発する声で訴えることがあるので,感じ取ってほしい,外に出かけていろんな刺激をもらってほしい,口から食べてほしい.
GH内での食事摂取状況は胃瘻から水分摂取と併用して経口摂取も行っていた.あんぱんを主食とし,おかずは本人の好きなものをペースト状や極刻みで提供する.極度の偏食であり,温度や物が違うと日によって食べる時と食べない時がみられた.通所施設内では,豆乳を好んでいたため1日100-200ml程度提供していた.X-3か月よりGHでの経口摂取量が急に減少し,3日に1回の経口摂取となっていた.そのため胃瘻から栄養摂取量の増加を検討されたが,経口摂取の安定を目的に,通所施設内での個別活動を実施することとなった.
介入は感覚刺激を入れていくことを中心に実施.初回は関係性作りのため,言葉を交わしながらストレッチやボディタッチから始めた.1週間後より,本人が好きな活動を探るため,感覚統合を促す目的として粗大運動,トランポリン・台車に乗って移動する遊び・ボールプール・ハンモックなど,感覚刺激に対する活動を提供した.身体が揺れていたり,OTと接触しているときの表情は良く,好んでいることがわかる一面もあった.反対に,ボールプールは感覚刺激が多く,特に手掌面に触れることが不快に感じているような様子も見受けられた.また活動に合わせて,飲み物や本人の好きな食べ物の提供も行った.個別で関わる時間を増やしてから,徐々に経口摂取量が増えるという変化がみられた.時折摂取を拒否することもあったが,GHで夕・朝と全量食べることが増えた.通所内で食べ物や飲み物の提供をするときには,食べたいと合図で訴えることがみられ,提供するタイミングを合わせられるようになった.
【考察】今回食事を摂るようになったことには様々な要因があるが,一つは個別で関わる時間を確保したことにより他者への興味関心・信頼感に繋がった可能性がある.また,身体に触り,粗大運動やバランスなど,動きを取り入れた活動により五感が刺激されたことも影響したと考える.人的資源が不足している中で個別で関わる時間を増やすことは容易ではないが,短時間でも向き合い,コミュニケーションを深めることが今後更なる意思表出や興味関心の拡大に繋がるかもしれない.
【症例】30歳代女性.診断名は脳性麻痺,知的障害.障害支援区分は6.身体障害者手帳1種1級.生後3か月より発達の遅れを指摘される.7か月よりてんかん発作がみられ,半年間入院治療を受けた.3歳で座位可能となるも,上下肢機能全廃のため全介助が必要.小中高と養護学校を経て,当法人の通所施設とグループホーム(以下GH)に入所し現在に至る.X-7年食事が摂れず,てんかん薬を飲むことができない状態が続いた.その1年後体重が27kgになったことをきっかけに胃瘻造設の手術を受けた.
基本動作は座位や立位は支えが必要,ADLは全介助.大島分類2.上下肢末梢部や口腔内など感覚過敏のため,活動中は手掌を使用する物品の把持が苦手.コミュニケーションは,手足の動きや表情の変化で読み取れることがある.好きなことは横になってラジオを聴くこと,抱っこをしてもらうこと.家族の意向は,表情や発する声で訴えることがあるので,感じ取ってほしい,外に出かけていろんな刺激をもらってほしい,口から食べてほしい.
GH内での食事摂取状況は胃瘻から水分摂取と併用して経口摂取も行っていた.あんぱんを主食とし,おかずは本人の好きなものをペースト状や極刻みで提供する.極度の偏食であり,温度や物が違うと日によって食べる時と食べない時がみられた.通所施設内では,豆乳を好んでいたため1日100-200ml程度提供していた.X-3か月よりGHでの経口摂取量が急に減少し,3日に1回の経口摂取となっていた.そのため胃瘻から栄養摂取量の増加を検討されたが,経口摂取の安定を目的に,通所施設内での個別活動を実施することとなった.
介入は感覚刺激を入れていくことを中心に実施.初回は関係性作りのため,言葉を交わしながらストレッチやボディタッチから始めた.1週間後より,本人が好きな活動を探るため,感覚統合を促す目的として粗大運動,トランポリン・台車に乗って移動する遊び・ボールプール・ハンモックなど,感覚刺激に対する活動を提供した.身体が揺れていたり,OTと接触しているときの表情は良く,好んでいることがわかる一面もあった.反対に,ボールプールは感覚刺激が多く,特に手掌面に触れることが不快に感じているような様子も見受けられた.また活動に合わせて,飲み物や本人の好きな食べ物の提供も行った.個別で関わる時間を増やしてから,徐々に経口摂取量が増えるという変化がみられた.時折摂取を拒否することもあったが,GHで夕・朝と全量食べることが増えた.通所内で食べ物や飲み物の提供をするときには,食べたいと合図で訴えることがみられ,提供するタイミングを合わせられるようになった.
【考察】今回食事を摂るようになったことには様々な要因があるが,一つは個別で関わる時間を確保したことにより他者への興味関心・信頼感に繋がった可能性がある.また,身体に触り,粗大運動やバランスなど,動きを取り入れた活動により五感が刺激されたことも影響したと考える.人的資源が不足している中で個別で関わる時間を増やすことは容易ではないが,短時間でも向き合い,コミュニケーションを深めることが今後更なる意思表出や興味関心の拡大に繋がるかもしれない.