[PI-7-1] 片麻痺を有する男児の両手活動に対する目標指向型アプローチ実践の一例
AHAを用いた介入前後の評価およびプログラム立案の有用性
本報告は本人・家族の同意および当法人の倫理審査委員会の許可を得ており,演題発表に関連して開示すべきCOIはない.
【はじめに】片麻痺の子どもにとって,生活場面における麻痺手の使用はその多くが両手動作における補助的な役割となる.Assisting Hand Assessment(AHA)は両手動作における麻痺手の使用を評価している.今回,片麻痺の子どもの両手活動に対して目標指向的に介入し,その効果を作業遂行および上肢機能の点から評価した.
【事例紹介】脳室周囲静脈梗塞による脳性麻痺(右片麻痺)のある10代前半の男児で,地域の学校に所属している.集中リハ目的で19日間のリハ入院となった.GMFCS Ⅰ,MACS Ⅱ,CFCS Ⅰ,セルフケアは自立していた.麻痺側上肢・手の機能は近位部の粗大な分離は良好,手関節は掌屈位をとることが多いものの末梢の分離は比較的良好で,小さな積木を側腹つまみで机上から持ち上げることができた.日常生活の多くは非麻痺手で遂行しているが,必要に応じて麻痺手の補助的な参加も見られた.痙縮改善を目的として,入院12日前に麻痺側前腕・手関節にボツリヌス治療を実施している.
【作業療法評価】入院時に本児・家族と協働で目標設定を行った.「食事で皿に右手を添える(以下,食事)」,「蝶々結びができるようになる(以下,結び)」,「ゲームコントローラー操作の上達(以下,ゲーム)」の3点を目標として特定した.COPMによる評価(遂行度/満足度)は食事3/4,結び1/1,ゲーム8/9であった.麻痺側上肢の評価は上肢機能の質的評価法(QUEST)が85.99/100点,Box & Block Test(BBT)が22個,STEFが42/100点,AHA unitが59/100であった.目標となる活動の観察およびAHAのビデオ分析から前腕・手関節による定位,および手指操作が課題と判断した.
【介入方法】目標となる活動に対して成功を保障しつつ難易度を段階づけて介入した.例えば食事に関しては,前腕回内位から始め,中間位から軽度回外位と手を添える難易度を段階付けた.また,準備的活動として,前腕・手関節のコントロール向上を目的にストレッチ,自動介助運動,左右手間でのボールキャッチ等を,手指の巧緻性向上を目的として積木のつまみ課題,手内操作を行った.両手課題としてペーパークラフトを取り入れ,作品制作の過程で麻痺手の補助的な使用を促した.また,介入強度を高めるため,自主練習として上記内容を病棟場面でも1日60分を目安に取り入れた.
【結果】介入の総時間は約2400分(個別リハ1400分,病棟1000分)となった.食事では持続的に麻痺手を茶碗に添えられるようになり,結びは失敗せず短時間で蝶々結びをできるようになり,ゲームは麻痺手によるボタンの押し間違えが減った.COPM(遂行度/満足度)は食事7/8,結び8/9,ゲーム機9/8と変化した.QUEST・AHAは得点に変化なく,BBTは30個,STEFは50点と向上した.
【考察】ボツリヌス治療に加え,遂行を阻害する構成要素を分析しつつ目標指向的に介入したことで目標となる作業遂行に向上が見られた.麻痺側上肢・手の最大能力を評価するBBTおよびSTEFで得点の向上が見られた一方で,両手動作での麻痺手の遂行を評価するAHAで変化が見られなかった.実施時間の短さ,年齢による問題に加え,生活場面における課題設定が限定的であったことも要因として考えられる.麻痺側上肢の機能を多面的に評価し,プログラム立案および介入内容を振り返るツールとしてAHAは有用である.
【はじめに】片麻痺の子どもにとって,生活場面における麻痺手の使用はその多くが両手動作における補助的な役割となる.Assisting Hand Assessment(AHA)は両手動作における麻痺手の使用を評価している.今回,片麻痺の子どもの両手活動に対して目標指向的に介入し,その効果を作業遂行および上肢機能の点から評価した.
【事例紹介】脳室周囲静脈梗塞による脳性麻痺(右片麻痺)のある10代前半の男児で,地域の学校に所属している.集中リハ目的で19日間のリハ入院となった.GMFCS Ⅰ,MACS Ⅱ,CFCS Ⅰ,セルフケアは自立していた.麻痺側上肢・手の機能は近位部の粗大な分離は良好,手関節は掌屈位をとることが多いものの末梢の分離は比較的良好で,小さな積木を側腹つまみで机上から持ち上げることができた.日常生活の多くは非麻痺手で遂行しているが,必要に応じて麻痺手の補助的な参加も見られた.痙縮改善を目的として,入院12日前に麻痺側前腕・手関節にボツリヌス治療を実施している.
【作業療法評価】入院時に本児・家族と協働で目標設定を行った.「食事で皿に右手を添える(以下,食事)」,「蝶々結びができるようになる(以下,結び)」,「ゲームコントローラー操作の上達(以下,ゲーム)」の3点を目標として特定した.COPMによる評価(遂行度/満足度)は食事3/4,結び1/1,ゲーム8/9であった.麻痺側上肢の評価は上肢機能の質的評価法(QUEST)が85.99/100点,Box & Block Test(BBT)が22個,STEFが42/100点,AHA unitが59/100であった.目標となる活動の観察およびAHAのビデオ分析から前腕・手関節による定位,および手指操作が課題と判断した.
【介入方法】目標となる活動に対して成功を保障しつつ難易度を段階づけて介入した.例えば食事に関しては,前腕回内位から始め,中間位から軽度回外位と手を添える難易度を段階付けた.また,準備的活動として,前腕・手関節のコントロール向上を目的にストレッチ,自動介助運動,左右手間でのボールキャッチ等を,手指の巧緻性向上を目的として積木のつまみ課題,手内操作を行った.両手課題としてペーパークラフトを取り入れ,作品制作の過程で麻痺手の補助的な使用を促した.また,介入強度を高めるため,自主練習として上記内容を病棟場面でも1日60分を目安に取り入れた.
【結果】介入の総時間は約2400分(個別リハ1400分,病棟1000分)となった.食事では持続的に麻痺手を茶碗に添えられるようになり,結びは失敗せず短時間で蝶々結びをできるようになり,ゲームは麻痺手によるボタンの押し間違えが減った.COPM(遂行度/満足度)は食事7/8,結び8/9,ゲーム機9/8と変化した.QUEST・AHAは得点に変化なく,BBTは30個,STEFは50点と向上した.
【考察】ボツリヌス治療に加え,遂行を阻害する構成要素を分析しつつ目標指向的に介入したことで目標となる作業遂行に向上が見られた.麻痺側上肢・手の最大能力を評価するBBTおよびSTEFで得点の向上が見られた一方で,両手動作での麻痺手の遂行を評価するAHAで変化が見られなかった.実施時間の短さ,年齢による問題に加え,生活場面における課題設定が限定的であったことも要因として考えられる.麻痺側上肢の機能を多面的に評価し,プログラム立案および介入内容を振り返るツールとしてAHAは有用である.