[PI-7-2] Escobar症候群児の指と指の間で挟む把持形態の獲得
【はじめに】Escobar症候群とは関節部の翼状片,拘縮,特異顔貌,骨格系の異常で特徴づけられる症候群で,非進行性で稀な疾患であり,作業療法の介入についての報告はほぼない.今回,生後36日から8歳4カ月に至る物品操作の獲得の介入を報告し,作業療法の一例を示す.発表にあたり症例の母親から同意を得た.
【症例紹介】支援学級に在籍する8歳4カ月男児.現病歴:37週に帝王切開.生後36日,Escobar症候群と診断され,OTが開始された.生活年齢8歳4か月時の新版K式発達検査は,全領域37カ月,姿勢-運動446日,認知-適応46カ月,言語-社会34カ月であった.両耳難聴を認め補聴器装用.四肢関節に拘縮,合趾を認めた.関節可動域(単位°,右/左):肩関節屈曲125/125,外転145/125,外旋50/50,内旋90/90,肘屈曲110/105,伸展-60/-70,前腕回内25/20,回外20/20,手関節掌屈50/60,背屈30/30,示指~小指MP関節屈曲70/60,伸展0/0,PIP・DIP関節屈曲0/0,伸展0/0であった.両下肢は股関節,膝関節に屈曲位拘縮を認めた.MMT:上下肢5,感覚:問題なし.把持:手指の奇形・関節拘縮により母指対立不可で物品把持は主に示指,環指の間に挟む方法で実施.移動:支持物なしで10m程度可能であるが,実用的な移動能力として,室内は四つ這い,屋外は車いす自己駆動.食事:ピンセット箸で自立.歯磨き:片手~両手把持で実施.補聴器装用:介助.更衣:胸元ボタンのみ介助. 排泄動作:臀部を拭くことは仕上げ必要.洗体:一部介助である.
【経過】OTでは継続的に四肢関節可動域運動,成長に合わせ運動発達へのアプローチ,把持練習を実施した.1歳6か月で寝返り,1歳8か月歳で座位,2歳9か月で歩行可能となった.把持練習は認知機能の発達に合わせて,さまざまな把持形態のおもちゃで練習後,日用物品使用へと汎化させた.3cm以上の大きな物品は両手で挟んで把持,消しゴムなど指腹つまみのものは示指と環指で挟む把持,コインなど薄く指尖つまみが必要なものは両側示指の内側面で把持した.いずれも物品に手の形を沿わせられないため固定は不安定さがある.鉛筆など長い棒状の物品把持は,示指,環指のはさみに加え母指にひっかけ3点支持で行った.また胸元のボタンをうまくつまめる位置に手を持っていくことができないなど,自己の身体に対して行う操作は,上肢の可動域制限により対象物に手を合わせることができず操作が困難であった.箸やはさみなどの複雑な操作が必要な物品操作の獲得には段階付けを行い練習することで使用が可能となった.
【考察】本症例の上肢機能の問題点として,①大きな物品の片手での把持が困難,②縦のアーチがないため物品に沿った把持が困難で固定力が不十分であること,③肩,肘,前腕,手関節の可動域制限により対象物品に手を合わせることが困難なことが挙げられる.米満(1974)は,物体の形に沿う把持の形態,「なじみ」がなければ手の機能は非常に低下すると述べ,長尾(1971)は日常生活での高頻度把持形態は,にぎる,つまむ,おすであると述べている.指の間で挟む把持形態は,「なじみ」は欠損しているが,つまむ,おすは可能であるため,道具の選択を行うことで日常生活物品操作を獲得したと考える.しかし,本症例は肩・肘・前腕・手関節の可動域制限により身体に対して行う動作は手を物品に合わせることが困難で手指の機能を最大限発揮できていない.今後,認知機能の発達に応じて自助具などの導入を検討する必要がある.
【症例紹介】支援学級に在籍する8歳4カ月男児.現病歴:37週に帝王切開.生後36日,Escobar症候群と診断され,OTが開始された.生活年齢8歳4か月時の新版K式発達検査は,全領域37カ月,姿勢-運動446日,認知-適応46カ月,言語-社会34カ月であった.両耳難聴を認め補聴器装用.四肢関節に拘縮,合趾を認めた.関節可動域(単位°,右/左):肩関節屈曲125/125,外転145/125,外旋50/50,内旋90/90,肘屈曲110/105,伸展-60/-70,前腕回内25/20,回外20/20,手関節掌屈50/60,背屈30/30,示指~小指MP関節屈曲70/60,伸展0/0,PIP・DIP関節屈曲0/0,伸展0/0であった.両下肢は股関節,膝関節に屈曲位拘縮を認めた.MMT:上下肢5,感覚:問題なし.把持:手指の奇形・関節拘縮により母指対立不可で物品把持は主に示指,環指の間に挟む方法で実施.移動:支持物なしで10m程度可能であるが,実用的な移動能力として,室内は四つ這い,屋外は車いす自己駆動.食事:ピンセット箸で自立.歯磨き:片手~両手把持で実施.補聴器装用:介助.更衣:胸元ボタンのみ介助. 排泄動作:臀部を拭くことは仕上げ必要.洗体:一部介助である.
【経過】OTでは継続的に四肢関節可動域運動,成長に合わせ運動発達へのアプローチ,把持練習を実施した.1歳6か月で寝返り,1歳8か月歳で座位,2歳9か月で歩行可能となった.把持練習は認知機能の発達に合わせて,さまざまな把持形態のおもちゃで練習後,日用物品使用へと汎化させた.3cm以上の大きな物品は両手で挟んで把持,消しゴムなど指腹つまみのものは示指と環指で挟む把持,コインなど薄く指尖つまみが必要なものは両側示指の内側面で把持した.いずれも物品に手の形を沿わせられないため固定は不安定さがある.鉛筆など長い棒状の物品把持は,示指,環指のはさみに加え母指にひっかけ3点支持で行った.また胸元のボタンをうまくつまめる位置に手を持っていくことができないなど,自己の身体に対して行う操作は,上肢の可動域制限により対象物に手を合わせることができず操作が困難であった.箸やはさみなどの複雑な操作が必要な物品操作の獲得には段階付けを行い練習することで使用が可能となった.
【考察】本症例の上肢機能の問題点として,①大きな物品の片手での把持が困難,②縦のアーチがないため物品に沿った把持が困難で固定力が不十分であること,③肩,肘,前腕,手関節の可動域制限により対象物品に手を合わせることが困難なことが挙げられる.米満(1974)は,物体の形に沿う把持の形態,「なじみ」がなければ手の機能は非常に低下すると述べ,長尾(1971)は日常生活での高頻度把持形態は,にぎる,つまむ,おすであると述べている.指の間で挟む把持形態は,「なじみ」は欠損しているが,つまむ,おすは可能であるため,道具の選択を行うことで日常生活物品操作を獲得したと考える.しかし,本症例は肩・肘・前腕・手関節の可動域制限により身体に対して行う動作は手を物品に合わせることが困難で手指の機能を最大限発揮できていない.今後,認知機能の発達に応じて自助具などの導入を検討する必要がある.